第126話 闇の崇拝者の暗躍
シスターマリーを捜してセレニア公国まで来たのはいいが、ここへ来て当の本人であるシスターマリーに出会った、のだが・・・、なにやら面倒な事に巻き込まれている感じだ。そのシスターマリーを追って来た黒いローブを身に纏った輩が3人、シスターマリーを殺害しようと迫ってきていた。どういう状況だ?
その3人はどうやら闇の崇拝者らしいのだが、なぜ、シスターマリーを狙うのかがわからない。3人の闇の崇拝者との会話をすり合わせると、ホークウッドなる人物が関係しているらしいのだが。
「あんた等、何でシスターマリーを狙っているんだ」
「答える義理はない・・・」
「さっき、ホークウッドとか言う奴の計画がどうのと言っていた様だが」
「貴様には関係無かろう・・・」
「これでもシスターマリーとは知り合いでね、黙って見過ごす訳にはいかないんですよ」
「ならば、貴様も排除するまで・・・」
3人の闇の崇拝者が先に動いた、何やら魔力を練っているみたいだ。
「氷よ! 礫となりて敵を討て! くらえ、《アイスバレット》」
氷の礫が俺達に向かって飛んできた。スキル「ハイスピード」のおかげで、氷の礫がゆっくり飛んでくる様に見える。
避けるのは簡単だが、後ろにはシスターマリーがいる、俺は咄嗟に盾のベルシーダを構える。
ガキンッ、と盾が氷の礫を弾いた。ノーダメージだ、さすがベルシーダ。
「なに!?」
驚いているところに、接近してパンチをお見舞いする。
「うぐ!」
よし、1人倒した、残り2人。
「私も居る事忘れないでね」
「うぐわ!?」
スカーレットさんが闇の崇拝者の1人を倒してくれた、流石、元盗賊ギルドのお頭。頼りになる。
「おのれ! こうなれば範囲魔法で・・・」
こいつ! こんな街の中で範囲魔法を使う気か。さすがにそれは無視できないぞ。
俺はダッシュで相手の懐に入って、魔法を使われる前にパンチをお見舞いする。スキル「ハイスピード」のおかげで難なく事を運べた。
「うぐっ・・・」
よし! これで3人の闇の崇拝者は倒した。こいつらは衛兵にでも突き出せばいいだろう。俺はバックパックからロープを取り出して3人の闇の崇拝者達を縛る。
やれやれ、なんとかなったか、それにしてもこんな街中で仕掛けてくるなんて、闇の崇拝者ってのは本当に危険な奴らなんだな。まあいいや、後は衛兵に任せれば。
「シスターマリー、ご無事ですか」
「ジ、ジローさん、ジローさぁぁぁん!」
シスターマリーは俺に抱きついて泣き出してしまった。よっぽど怖かったのだろう。しばらくこのままでいよう。
「もう大丈夫ですよ、シスターマリー・・・」
「うっぐ、ひっく、・・・」
やさしく頭を撫でながらシスターマリーを落ち着かせる。暫くしてシスターマリーも落ち着いてきたようだ。
「ごめんなさい、みっともないところをお見せしましたね」
「気にする必要はありませんよ、それにしても一体どういう事なんでしょうか、シスターは何かわかりますか」
「いいえ、私はただ、この国の女神教会にご挨拶しに行こうと思ってお城を出て行っただけなのですが・・・」
「その途中で襲われた訳ですか、それは災難でしたね、もう大丈夫ですから、さあ、サラミスの街に帰りましょう」
「・・・・・・ジローさん、私、・・・」
「シスターマチルダも心配していましたよ」
「シスターマチルダが、・・・そうですか・・・」
なんだろうか、シスターマリーは何やらサラミスへ帰る事に躊躇っているように見受けられるが。
「シスターマリー?」
「・・・ジローさん、私、まだこの国を離れる訳にはいかないのです」
「・・・どういう事でしょうか」
「はい、私の体の中には、セレニア公爵家の血が流れているらしいのです、それで、今この国では次期公爵を巡って後継者争いが起きているのです」
「・・・公爵家のお家騒動ってやつですか、・・・こう言ってはなんですが、シスターマリーは妾の子とお聞きしましたが、公爵位は継げるのですか」
「いえ、公爵位を継ぐつもりはありません、おそらく本妻のお子の誰かが公爵を継ぐと思いますから」
「それならどうして?」
「え~と、なんでも次期公爵が決まるまでお城を離れないでほしいと、そう言われまして」
ふむ、なるほど、お家騒動が一段落するまでシスターマリーは公爵家にいてほしいと言う訳なのか。一応シスターマリーも公爵家の一員だからなのかな。
「公女様ーーーー!」
ふいに、お城方面の道から男の声が聞こえた、そちらを見ると数人の衛兵と騎士風の年配の男がこちらへと走って来ていた。
「マリアンデール公女様! 勝手にお城を抜け出されては困ります、さあ、お城へ帰りましょう」
「ちょ、ちょっと待って下さい、私はこの国の女神教会にご挨拶しようと思って出てきただけですから」
「しかし、護衛も付けずに外出するのは危のうございます、・・・む! この者達は?」
「ああ、どうやら闇の崇拝者らしいのですが・・・」
「な!? なんですと! 闇の崇拝者ですと! 衛兵! この者共を牢へ放り込んでおけ!」
「「 はっ! 」」
やって来た衛兵達は俺達が捕まえた闇の崇拝者達を連れて行った、やれやれ、これで一段落ついたな。
「ところでマリアンデール公女様、この冒険者風の者達はどのような?」
「ええ、この方達は私の知り合いで、闇の崇拝者から私を守ってくださいました」
「初めまして、冒険者のジローと申します」
「そのツレのスカーレットと申します」
「・・・ピピ」
「ほ~、そうかそうか、よくぞ公女殿下をお守りした、礼を言うぞ、わしはこのセレニア公国の騎士でヨムンと言う、改めて礼を言うぞ」
「はい、どうも、シスターマリーをお守りできて良かったと思います」
「さあ、マリアンデール様、城へ戻りましょう」
「あの、ヨムンさん、私、折角ですから女神教会に・・・」
「なりません、さあ、早く戻りましょう、ジョナサン様やジョアンナ様も心配しておられる事でしょう」
「・・・あの二人は私の事など微塵も思っていないですよ、あの態度を見ればわかります」
「その様な、・・・さあ、マリアンデール様・・・」
「あの、ヨムンさん、ここに居るジローさん達もお城へ連れて行ってもいいですか」
「・・・ふむ、そうですね、他でもないマリアンデール様をお守りした功績がありますからな、褒美を取らせるのも悪くはないでしょうな、・・・おい、そこの者達、わしと一緒に城まで付いて来るがよい」
「は、はい、ありがとうございます」
ふ~、なんとかお城へ行く事ができそうだ。何にしてもシスターマリーを説得してサラミスの街へ帰らないとな。だけど当の本人はこのセレニア公国に留まると言っているんだよな。さて、どうしたものか。
俺達は、とりあえずはこのまま騎士ヨムンさん達と一緒にセレニア城へと行く事になった。シスターマリーに詳しい事や事情を聞かないとな。・・・それに闇の崇拝者だ、奴らが何故シスターマリーを狙ったのか、その辺も探りを入れないとな。まあ、その辺はスカーレットさんに頼む事になりそうだが。なにはともあれ、一応はシスターマリーと合流出来た訳だけど、これから先、何が起こるのか・・・・・・
おじさん、不安しかないよ