第123話 ヒャッハーの街
俺とピピとスカーレットさんは、ブライガー伯爵領の街、ヒャッハーに滞在している。この街の男達はみなモヒカンかスキンヘッドしかいなくてどちらが山賊かわからない感じだ、女性はさすがに普通の姿なのだが。世紀末かな?・・・まあいいや。
「スカーレットさん、このブライガー伯爵の屋敷にお風呂があるそうですよ」
「やったわ、丁度お風呂に入りたかったのよ、ブライガー伯爵様、様よ」
「ピピもスカーレットさんと一緒にお風呂に入っておいで」
「・・・は~い」
「それじゃあピピちゃん、行きましょうか」
「・・・うん」
スカーレットさんとピピはお風呂に入りに行ってしまった。さて、俺はどうしようかな。そう言えばブライガー伯爵から何か渡したい物があると言っていたな、まさかとは思うがトゲの付いた肩パッドとかじゃないだろうな。まさかな、ブライガー伯は今は執務室で何やら書類に目を通しているらしいので、お邪魔にならないように静かに応接室で寛いでいる。出された紅茶が美味しい。
そう言えばファンナに連絡しとこうかな、もうそろそろお昼頃だし、俺は伝意の石を取り出して石に向かって話しかける。
「あ~、もしもし、ファンナ、聞こえますか、聞こえたら応答して下さい・・・」
『・・・・・・あ、はい、聞こえますよ、ジローさん、どうしましたか』
「うん、こっちは今ようやくパラス・アテネ王国の領地に入った所だよ」
『ネモ山を越えたんですね、大丈夫でしたか』
「うん、まあ何とか、それで今、旅の途中で知り合ったブライガー伯爵という人に世話になっていてね、今そのブライガー伯爵領にあるヒャッハーの街ってところに滞在しているよ」
『そうですか、山越えで疲れた体力を回復させる為にも休まれた方がいいですものね』
「まあね、そっちの様子はどうだい、船でミニッツ大陸をぐるりと回ってきてそのままパラス・アテネ入りするみたいだけど」
『ええ、そうです、今は私とサリー王女様と騎士グレンさんと兵士の皆さんは何隻かの船に乗って海路を使ってパラス・アテネ王国まで航海を続けています、潮風がとっても気持ちいいんですよ』
「そうかい、航海は順調ってところか、それはなにより」
『パラス・アテネ王国に到着するのはもう少し後だと思います、6日後ぐらいでしょうか』
「わかった、こっちもセレニア公国まであともう少しといったところだよ」
『それではジローさん、お互いに無事にパラス・アテネで・・・』
伝意の石から声が聞こえなくなった、一日一回の制限だ。やっぱり便利だな、この伝意の石は。
ファンナとのやり取りも済んだところで、応接室に誰か入って来た。
「ジロー殿、伯爵がお呼びですよ」
「これはフランクさん、わかりました、伯爵様の執務室へ向かいます」
俺は応接室を出て、フランクさんの案内でブライガー伯爵の執務室へと足を運んだ。執務室の扉をノックして、返事を待つ。
「どうぞ、」
「失礼致します、冒険者のジローです、伯爵様がお呼びだと伺いました」
「おお、来たか、そんな堅苦しい挨拶はせんでもよい、共に戦った仲ではないか、俺様の事はブライガーで構わん」
「は、有難う御座います、ブライガー様」
「うむ、実はな、ジロー君に渡したい物があってな、君、そのブレイブリング、義勇軍のメンバーだろ、だったら丁度いいのがあるのだがね」
「何で御座いましょう」
「これだよ、これ、」
そう言ってブライガー伯は何か布の様な物を俺に渡してきた。
「これは? 布? ですか」
「それを広げてみたまえ」
渡された布を言われたとおり広げてみる、すると・・・
「これは、旗、でしょうか」
「うむ、ただの旗ではないぞ、なんと、あの700年前に使われていた義勇軍の旗のレプリカなのだよ」
「へー、700年前の義勇軍の旗のレプリカですか、何だか凄そうですね」
「うむ、俺様が趣味で作らせた物だがね、良い出来であろう、是非ジロー君に受け取ってほしいのだがね」
「はい、有りがたく頂いておきます、ブライガー様、ありがとうございます」
「うむ、俺様も義勇軍メンバーとして同じ仲間ができるのは嬉しいものなのだよ」
「ブライガー様も義勇軍でしたか、どうりでお強い筈です、この旗は頂いても良いのですか」
「うむ、いいとも、ジロー君も義勇軍なのだからその旗を持つ資格があるというものだよ」
「ありがとうございます、大切にいたします」
「うむ、何かに使える日がきっとくる筈だ、大事にしたまえ」
「はい、それでは、俺はこれで失礼いたします」
俺はブライガー伯爵の執務室を退室する、そうか、ブライガー伯爵もまさか義勇軍だったとは。こんなところでお仲間に出会えるとは思ってなかったな。義勇軍の旗も貰っちゃったし、レプリカって言っていたけど細部まで拘って作りこまれている感じだ。いい物を貰ったな。さて、俺もお風呂に入ろうかな。
おじさん山歩きで疲れちゃったからね