第112話 消えたシスター 3
二日前から行方がわからないシスターマリーを捜す為、何か手がかりがないか色々街の人達に聞き込みをしているが、一向に有力な手がかりは得られなかった。辺りはもう暗くなってきた。
今日はここまでだな、ファンナと合流しよう。俺とピピはファンナが聞き込みをしている場所に行き、声を掛ける。
「ファンナ、今日はここまでにしよう」
「ああ、ジローさん、そっちはどうでしたか」
俺は首を横に振る。
「そうですか・・・こっちも手がかり無しです」
「ファンナ、一旦冒険者ギルドへ戻ろう」
「・・・はい・・・」
俺達は冒険者ギルドへ向けて歩き出した、聞き込みの疲労からか足取りが重い。それにしてもこれだけ聞き込みをしても、手がかりが一つも無いと言うのはどういう事だ。みんな嘘をついている様子はなかった。それどころか親身になってくれるぐらいだ。もしかしたらシスターマリーはもうこの街にはいないのかもしれない。
俺達は冒険者ギルドへと戻って来た。聞き込みで結構疲れている、少し休もう。腹も減ったからね。
「クリスちゃん、Aセット2つとさくらんぼ2個頂戴」
「は~い、ただいま~」
「あ、クリス、お水もちょうだい、喉カラカラだから」
「へいへい」
ファンナの幼馴染のクリスちゃんは注文を聞くと、ギルドホールの奥へと行ってしまった。注文の品が届くまでしばらく休憩だ、あ~疲れた、あちこち歩き回ったからな。
「それにしても、シスターマリーは一体何処へ行ってしまったのでしょうか」
「う~ん、もうこの街にはいない様な気がするね」
「これだけ聞き込みをして手がかり無しですものね」
その時、クリスちゃんがお水を持って来てくれた、俺の分もだ、気が利くな。
「はい、お水、何? 二人とも何か仕事でもしてるの?」
「いや、依頼って訳じゃないけどね」
「ねえ、クリス、二日前だけどシスターマリーを見かけなかった」
「シスターマリー? 見たよ」
・・・・・・え?
「「 いつ!? 」」
「二日前だったかな」
「「 どこで!? 」」
「憩いの場の裏道で、夕方頃だったかな」
「「 どんな様子で!? 」」
「え~とねえ、なんか騎士風の人に連れられて馬車に乗り込んでいたような・・・」
「「 騎士って、どこの国の騎士かわかる!? 」」
「え~、そんな事言われてもわかんないよ、門衛の人じゃないもの、鎧を見ただけじゃチンプンカンプンだよ」
「クリスちゃん、もう一度聞くね、シスターマリーは騎士風の人に連れられて馬車に乗り込んだ、間違いないね」
「う、うん、私もチラッと見ただけだから」
「さすがクリス、路地裏の四天王は伊達じゃないわね」
「ちょっとファンナ、やめてよ、子供の頃のあだ名は」
「なんにしてもお手柄だよ、クリスちゃん、一杯奢るよ」
「ありがとう、ジローさん」
そうか、ついに有力な情報を入手できたぞ。
「ジローさん、」
「ええ、シスターマリーは街の外に行った可能性が高いですね」
今までの話を纏めてみよう、二日前、シスターマリーが行方知れずになった。門衛の話によるとシスターマリーはこの街を出た形跡がない。同じ日にこの街に入り一日もたたずに街を出て行ったセレニア公爵家の騎士風の人達、騎士風の人にシスターマリーが馬車に連れ込まれていた。そして騎士はどこの国の騎士かわからない。・・・ざっとこんな感じだな。
「ジローさん、急いでパラス・アテネに行きましょう」
「ちょっと待ってファンナ、まだパラス・アテネの騎士と決まった訳じゃないよ、この街にはバーミンカムの騎士だっているんだから」
「そ、そうでしたね、どうしましょうか」
ふーむ、どうしたもんか。王都バーミンカムか、パラス・アテネ領内のセレニア公国か、悩むな。こういう時にはやっぱりルビーさん達に相談した方がいいんじゃないかな。
「ねえファンナ、ルビーさん達に相談してみよう」
「そうですね、これはもう私達の手に余る事柄かもしれません」
俺達はルビーさん達が座るテーブルに移動した。早速ルビーさんに相談だ。
「お疲れ様です、ルビーさん、サーシャ」
「お疲れ、ジローさん、ファンナ、それにピピ」
「・・・おつかれ」
「ルビーさん、実は相談したい事がありまして・・・・・・」
俺は今までの経緯を話し、シスターマリーの捜索を今後どうすべきか相談した。
「・・・・・・と、言う訳なんですよ、どうしたらいいでしょうか」
「うーん、そもそもシスターマリーは何だって連れて行かれたのかねえ、シスターならその国の一番近い女神教会から連れて行けばいいじゃないかい」
「・・・言われてみれば確かに」
「それに、どこの国の騎士かわからないってんだろ、だったらバーミンカムとセレニアの両方に行けばいいんじゃないかい」
「両方ですか、ファンナと別行動って訳ですね」
「それと、人捜しなら盗賊を雇ったほうがいいわよ」
「どうしてですか、サーシャさん」
「盗賊ってのは人捜しと情報戦に長けた人もいるからね、そういった人を雇えばいいのよ」
「なるほど」
「それに、騎士が動いているって事は、その国のお偉いさんが命令しているって事だろ、もしバーミンカムならサリー王女に聞くのが一番手っ取り早いよ」
そうか、この国の騎士が絡んでいるとすると、サリー王女なら何か知っているかもしれないな。この街にまだ滞在しているから聞きに行ってみよう。
「そうですね、早速明日の朝メンデル子爵の屋敷へ行ってみます」
「おや? ジローさん、知らないのかい、サリー王女は今日の昼ごろ王都へ向けて出立していったよ」
「え? そうなのですか、知りませんでした」
「どうしましょう、ジローさん」
「ふーむ、そうですねえ、・・・・・・」
そうか、サリー王女はこの街を出たのか、一足違いだった。タイミングが悪かったな。
「シスターマリーはあたい等も知らない間柄じゃないから、手伝ってやりたいけど、あたい等も依頼で行かなきゃならないとこがあるからねえ」
「なんですか、依頼って」
「傭兵ギルドからの依頼でね、魔法使いが必要なんだってさ、あたいとサーシャは明日パラス・アテネへ出発する事になったからねえ」
「そうなのですか、それは仕方ないと思います」
「すまないね」
「いえ、相談に乗って頂いただけでも十分ですよ」
そうか、そうなってくると、これからどう動くべきか、悩みどころだな。飯を食いながら今後どうすべきか考えないとな。シスターマリー捜索の為に、王都バーミンカムへ行くか、パラス・アテネ王国方面にあるセレニア公国へ行くか。どうする。
おじさん悩むよ