案外私も凄いらしい
全身が痛い。骨は多分折れてはいないと思う。
葵の部屋は三階にあり、そこから雨樋を掴んで途中で飛びおり、受け身をとった。それにしても下がコンクリートじゃなくて良かった。本当に。
痛みが本格的に自己主張する前に、早いとこ移動しよ。
足重〜い、動かな〜いと呑気に考える。やばいテンション上がってきた。足がだんだん動かなくなってきたので隠れることにした。
「どこに消えた!」
え? 怖。しっかり追ってきたよ。木の後ろで一体化するのしんどいから早く行ってくれ。
「クソガキが」
どこかに走っていく音がしたので顔をひょっこり出したら、葵も走って来ていた。
怪我はなさそうなので良かった。まぁ標的私だけど。
「ぁぉぃ〜」
こえが……。もっと声張ってくれ。
目を覚ますと布団の上だった。
「葵?」
「侑!!」
歓喜あまったのか凄いスピードで抱きしめられた。喜んでくれるのはありがたいがだんだん力が強くなってきた。降りた時より痛い。
「ギ、ギブ」
「ご、ごめん」
「いてて」
「ここって私の家だよね」
「そう。侑家だよ」
聞きたくないけど聞かないとな。
「おばあちゃんなんか言ってた?」
「笑ってた」
は? あの人外何考えてんだ。孫が怪我したのに笑いやがって。
「若い時は皆一度は通るって」
「……あ〜、そう」
めんどくさいので頭から追い出す。私は考えたくないのに、頭が勝手に動いている。自立型だ! と無理やり頭の回転を阻害する。
「……侑」
「はーい! 可愛い可愛い侑ちゃんでぇす」
「侑真面目に聞いてほしい」
しっかりと怒られた。ごめんよ。
「さっきあの人が言ってたことって」
葵の口元に指をそっと置く。
「その言葉は葵が言うべきじゃない」
「でも」
賢いと評された私の脳は頑張ったみたいで要らない推測もつけてくれた。
「十中八九葵の父親は父さんだよ」
「なら……私たちは」
クソ親父が……。葵にこんな顔させてしまう自分も嫌だけど向き合わなくてはならない。
「このこと聖子さんは」
「知らないんじゃない? 母方だし」
「そうなんだ」
「確かめるとするかぁ」
「え?」
きょとんとしてる。可愛い顔じゃなくて。
「お母さんのことだし何かしら残してるでしょ」
「邪魔するよ」
「おはよ」
「思ったより元気そうだね」
「持ってるんでしょ?」
「ああ」
おばあちゃんはこれ見よがしに手紙をヒラヒラさせている。
「もうちょい大人になってから渡そうと思ってたんだけど」
「そんな呪物知らなかったら要らないよ」
「そうかい」
手渡された手紙を見て、母の字が達筆なことが分かり微笑んでしまう。不謹慎だが、母のことをまた知れて嬉しい。
手紙に目を通してわかったことは父さんに対する不満がいっぱい吐いてあった。四股してたのか。人として終わってるよ。自分の推測がだいたい合ってることが分かり尚更腹が立つ。
「侑どうだった?」
「悪口いっぱい。それとおばあちゃんにごめんって」
「そうか……。私は外すよ」
知らなかったが、クソボケとの結婚をおばあちゃんは反対だったみたいだ。今のおばあちゃんを見ると信じられないが。
「これからどうする?」
それが私が生きていく上での一番の問題だ。
「話し合う」
「本気!?」
「父がやったことだし」
「侑関係ないじゃん」
葵の言うことがもっととだが、それでは駄目なんだ。
「ケジメはつけないとね」
「なら私も行くよ」
「ありがとう」
「私も無関係の事じゃないし」
「ならしっかり休まないとね」
「そうだね」
さてどう転ぶかな。




