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空気が重い時に限って逃げれない

「郁恵さんお先に失礼します」

「お疲れ様」

 今日も今日とて私は葵の家に向かう。先程郁恵さんのところでバイトのついでに買った材料を持って歩く。そもそも今日買い出しに行かなくても良かったものを、葵が明日はオムライスがいいと駄々をこねために、足りない材料買う事になった。

「これじゃお母さんだよ」

 意識してもらうとか以前の問題な気がしてきた。



 ドアに鍵を入れたが、軽く周り鍵がかけられていないことがわかった。鍵を閉めるように言わないと思いながらドアを開ける。

「葵、鍵かけとかないと」

 靴を脱ごうとしたら知らない靴が一足あった。誰だろうと思っていたらリビングのドアが開く。

「なんで来たの」

 葵が凄い剣幕で近づいてくる。

「なんでって今日も家行くって言ったじゃん」

 オムライスはどうした。あんなにうるさかったのに。

「メール送ったよ」

 携帯を出しすと葵から今日は延期と書かれた文字が浮かんでいた。

「ごめん。見てなかった」

「まぁいいか。今日人居るから帰って」

「何をしているの?」

 そこに居たのは綺麗な人だった。街中でアンケートを取れば美人と評されるタイプの人だ。郁恵さんと同い年ぐらいに見える。何処かで見た顔に似てる。

「こんにちは」

「こんにちは」

「挨拶もいいけも帰った帰った」

「上がってもらったらいいじゃない?」

 葵が苦虫を噛み潰したような顔をしている。何故そんな顔をするのか私は知るためにこの提案に乗る。

「そうですね」

「侑!?」

 ごめーんと手を合わせて謝った。



 対面に美人さん。横に葵と。なんだか落ち着かない。オセロでいったら私も美人さんになる。

高野樹月(たかのいつき)で、私の母親」

 葵が答えてくれたが、前を向くと睨んでるなんで。

「娘とは友達なの?」

「まぁはい。そうなりますね」

「結構な頻度できているみたいね」

「……はい」

 なんでこんな面接形式で進むの!? 空気が空気が重い。

「母親面しないでよ」

 私の内心を気にしないのか葵は、留まることを知らない。

 そういえば、葵は自分の親の話をしたがらない。これはとてもレアなことでは。でもな〜葵の感じ見ると子供に興味ないタイプみたいだし。なんとも言えない感じがある。

 目の前で起こる言い合いを全力で無視して空気に徹する。

「ところで貴方名前は?」

「……」

「侑」

「貴方に聞いてない」

 知らない間に私のターンが来ていたようだ。

「石三侑です」

「石三?」

「石に数字の三で石三です」

「あの男の子か! 道理で見ていると苛立つ顔だ」

 あの男って誰だと思考を逸らしていると胸ぐらを掴まれる。

「ちょ」

「お前のせいで、私は!」

「侑に何する!」

 胸ぐらを掴まれたという事実に驚き何もできない状況だったが、葵が腕を使い抵抗する。

 腕を離すが揺らされた勢いで吹き飛ばされる。

「侑!」

 葵が私の傍に駆け寄る。葵に支えられながら何故こんなことをしているのかどれほど考えても皆目見当もつかない。

 台所の方に向かい、何かを取って帰ってくる。

「なんでこんなことを?」

 首元を擦りながら少し掠れた声で抵抗を示す。

石三哲也(いしみてつや)の娘だからよ」

 石三というのは私の苗字同じである。哲也、哲也? 誰だ、誰なんだ。

 その手には包丁が握られていた。まずいと警鐘が脳に鳴り響く。しかしそれをかき消す程の真実に気づく。

「……父さん」

「あの男に似ず、貴方賢いのね。それであの男はどこにいるの?」

 一歩ずつ着実に距離が縮む。

「お母さん待って!!」

 葵は私を守るように樹月さんとの間に入る。

「何? 貴方まで私を邪魔するの」

「そうだよ」

「そう……でも貴方も父に会いたいと思わない?」

「どういう意味?」

 ひりつくような緊張感が漂う。私もどうにかして逃げないと。樹月さんをどうにかしないと正面玄関からは逃げれなさそうだ。

「葵ごめん」

「え!?」

 空気の入れ換えのために開けていたベランダから飛び降りた。

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