人はそれを嫉妬と呼ぶ
私は球技大会後、葵と過ごすことが普段より多かった。そのため、気分が良かった。はしゃぎすぎて、お弁当作りにも気合いがいつも以上に入った。
教室に入ると葵が、クラスメイトに囲まれていた。私は驚いたが、面白そうだから観察してみることにした。
「高野さん、運動神経いいんだね」
「……うん」
「それでそれで」
葵は、多少のぎこちなさはあるものの平生の彼女と何ら変わりなかった。少し私はムスッとしたが、葵が褒められていて私までも嬉しくなった。そんなことも束の間。
「高野さん、葵ちゃんって呼んでいい?」
え?と声が漏れかけたことに気づき急いで口を閉じ顔を下げた。
「良いな〜、私も葵ちゃんって呼ぼうかな?」
「……」
私の心は、先程と打って変わってドス黒い何かに覆われていた。
葵は、名前呼びをどうするのだろう。こればっかりは、私の意思は反映されない。葵本人が決めることである。しかし、もしも私の意思が反映されるなら断って欲しい。
「ねぇ?聞いてる葵ちゃん」
「……」
私は、この気持ちを落ち着かせるために教室を出た。
チャイムが鳴り、授業が始まっても先程のことが頭に残っており、何も入ってこなかった。
時間だけが過ぎ昼休みになった。そさくさと教室を出て、目的地を目指しいく。私が一年生の時によく使っていた場所である。今日は、そこで昼食をとることにした。
お弁当を開け、ご飯を食べようとしたが、私の手にはもう一つのお弁当箱がある。
(結局渡さなかったなぁ……)
「侑!探したよ」
不意に名前を呼ばれ、恐る恐る見てみると葵がいた。
「……やっほ〜、葵」
「私今怒ってるからね」
「え?」
「朝から私を避けてたでしょ」
「そんな……」
はっきりと言えない。葵の周りの子達を見たくなかっただけだが、間接的に葵を避けていたのかもしれない。
「どうしてなの?」
「私だって怒ってる」
「そうなの?」
私は、今自分の気持ちを言葉にする為に、整理した。
「葵のことを葵ちゃんって呼んでたことに、私は怒ってる。葵の特別は、私だけなのに……」
言葉にしてやっとスッキリした。私は嫉妬していたんだ。
「そのことね。ならもう安心だよ。あの後すぐにやめて欲しいって伝えたから」
「そうだったんだ」
「ヤキモチ妬いてたんだ」
「うるさい!」
「も〜よしよし」
葵に頭を撫でられ、許してしまう自分が情けない。
「お弁当作ったから、食べて」
「うん。ありがとう」
朝と比べ物にならないくらい良い昼だった。




