私たちの始まり
「侑〜聞いてる」
「聞いてるよ葵」
私の名前は石三侑は、城翔高校に通う高校2年生だ。
話しかけてきているのは、私のお隣さんの高野葵と言い2年生に進級してから仲良くなった。しかし、葵は不登校気味で少し浮いている。葵と仲がいい私は同類の不良さんだと思われているのかクラスメイトに避けられている気がする。そのせいで友達が一人しか居ない。
「虚しいよ。私の高校生活」
「何言ってんの?私がいるじゃん」
「はい?それ言うなら毎日学校来てよ。葵以外に友達が居ないんだからな」
「それなら友達を作る努力をしない侑が悪いでしょ、なんか言い返せることがある?」
言葉のエッジが効きすぎて、私は睨むことしか出来なかった。
「話戻すけど次の授業教科書見せて」
「分かった」
さっきの休憩時間に正論パンチを決めてきたので、少し不貞腐れた態度をとってみることにした。
「いや〜本当助かったよ」
「ハイハイ」
「なんだその返事は〜」
「は〜い」
「ふん、そんな態度なら明日来てやんないよ〜だ」
「じゃ、授業も終わったし私、先に帰るね」
言ってるだけで明日来るでしょ。
蓋を開けてみたら、葵は昨日の宣言どうり本当に休んだ。
「石三ちょっといいか?」
「なんですか?天宮先生」
「このプリント高野に渡しといてくれるか」
「え〜、自分で行ってくださいよ」
「私だと会ってくれないから、家の住所教えるからさ」
個人情報をすぐに教えていいものなのか?と内心思いもしたが、それを飲み込んだ。
「分かりました」
先生が教えてくれた住所は思ったより家の近所のマンションだった。
「高野さん居ますか?」
すぐにドアが開き聞き覚えのある声がした。
「あんた常識あったんだ」
「あるよそれくらい、バカにしての!」
「別に〜、何か用?」
「はい、プリント」
少し考える素振りを見せてから閃いたと言わんばかりに言い放つ。
「あまみんの差し金か」
正解!と言おうとした、その直後ぐぅーという音が聞こえた。音の方向を見ると顔を赤らめている葵が居た。
「えっと今のは」
「なんか作るよ、中入っていい?」
「ありがと」
「先行ってて」
今気づいたが私は初めて友達の家に入るのか。どんな空間なんだろう。
「あ!ちょっと待って」
私はその光景に驚いた。散らかりすぎだこれは。
「汚い」
「この前したばっかなんだけどな〜」
手をつんつんとして延々と言い訳じみたことを言っていたが、無視して掃除することにした。
「少し待ってて、掃除とかしてから作るから」
「私も手伝うよ」
そうして着々と部屋は綺麗になっていった。服をまとめて洗濯しようとしたところで、葵に止められた。
「洗濯ぐらいは私がしとくから、作ってて」
わかったと返事をして、台所の方に向かった。
しばらくして葵が戻ってきた。
「スパゲッティ出来たよ」
「スパゲッティなんてあったけ?」
「さっき急いで買ってきた」
「そうなんだ」
「いただきます」
「どうぞ」
「美味しい、料理上手だね」
「家ではよく作ってるからね」
「それにしても葵カップ麺ばっかり食べて」
「そんなことないはずだけど」
こいつ目が完全に泳いでいる。
「葵ってさ、1人暮らしだったの?」
「いやそんなことないよ、お母さんと2人だよ」
「それにしては2人で暮らしてる感じではないような気がするけど」
「そうかな」
その時、葵の目がどこか寂しそうだった。
(しまった、余計な事を言ってしまった。何とかしないと)
「また作りに来るから」
「ほんと!助かるよ、じゃ明日からお願い」
「明日!?」
「明日から!」
「う〜ん、わかった」
「よし」
とガッツポーズを決めているの私は見逃さなかった。やられたままが嫌だったので条件をつけてみることにした。
「ただし、多少は手伝ってね」
「まかせろり」
「面白くないかんね。それ」
こうして、葵の台所を占領することになった。
連載にしようと思っていた作品を誤って短編にしていました。それに伴い、短編を削除しての再投稿になります。申し訳ございません。