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103歳の走馬灯

私は世界最強、だった。というか今も、らしいが。

 19歳の時、何が何だがよくわからないまま戦場に送り出され、訓練などをよくわからないなりに頑張っていたら世界最強、と呼ばれていた。これが一番謎だが…。

 それから何十年間も兵士として、度々やってくる侵入者を討伐していた。そして60歳で引退。それからは自然が豊かなこの「日本」で暮らしている。どんな鳥かはわからない鳴き声で朝起き、朝食を摂り、朝の走り込みを行えば近所の子供たちが朝から元気に遊んでいる。しかし、しばらくすれば若いのに仕事に向かってしまうのだが。西洋人というのはなかなかに珍しいらしく、引っ越してすぐにいろんな人たちが集まってきて、色々なことを質問された。最初は本当に、何を言っているのかさっぱりで、もう少し英語が通用するところに行けばよかったと、何度も後悔した。しかし毎日、ほとんどずっと人と話しているおかげで1ヶ月もすれば初歩的な日常会話をできるようになった。そして子供たちは仕事が終わったら毎日家に上がり込んで、私に日本語を頑張って教えてくれた。

 そして、今私は、死を悟っていた。103年も生きてきた。俺の家族は死んで、俺の妹の息子も死んだ。今いるのは妹の孫だ。結婚はしていない。…103年。医者によれば、ありえないことらしい。書物には、同様のようなことが書いているが実際にそれが本当に起こったものなのかというのは保証できないらしいが。そろそろ潮時なのであろうか。いろいろ終わってくる感じがする。

 1XXX年6月19日。老衰により死去。

「お前がっ、好きなんだよ!!!」

「知らないわよ、そんなこと。大体、御曹司のあんたと、庶民の私。立場の違いは明らかでしょ。諦めな」

「それって今、関係あんの!?」

「関係大あり。今もし告白をOKしても親御さんに別れさせられるに決まってる。そんなの嫌だ」

 カーット!!!!!!

 2004年。御曹司と庶民の恋愛ドラマ、「アンタとは結婚できない」は社会ブームになった。最高視聴率は35.5%。翌年2005年には映画が放映開始。興行収入は204億円。そしてその年、主演の安賀 香里奈と演陵 諒平が結婚。それも相まって更に人気は爆発した。そして3年後の2008年に第一子を出産。

 …それが私、演陵 飛逹である。最初の私の大失態はそりゃ周りに多大なる影響を及ぼした。当然である。いきなり言葉を発したのだから。しかし両親は「ウチの子天才か…?」と言い、その後何事もなかったかのように過ごしていた。良き両親なのであるが、少し、いや、かなり心配である。そして今も「あー、さすが私たちの子供。顔面が輝きまくってる」と言ってデジカメ(母が言っているのを聞いた)で何枚も写真を撮っている。「こりゃぁ、大物になるなぁ。まずは子役からかな」…父もこれである。私は、そのような人前に出る仕事はもう懲り懲りだ。しかし現実とはそう甘くないもの。どんどん私の道はそちら側、そう、芸能側に向かっていった。

 2012年4月24日。演陵 飛逹、芸能界デビュー。

「はじめまして。僕は、キリカと言います。今日はなんの御用で?」

「えーっと、道に迷っちゃって…用事とかは」

「何の御用で?」

「え、えーっと、だからぁ」

「何の御用で?」

「よ、用事はありません!」

「は?」

少年の目が、黒く、濁った。

「では何故ここにいらっしゃったのでしょう」

「道に迷って」

「そんなわけありません。ここが何処かわかりますか??言い訳をしないでください」

少年と会話していた女の体が次第に震え出した。現在の気温は-1.9度。季節は夏である。

「何故あなたはここにいらっしゃったのでしょう。やはりご主人様を暗殺するため???それとも、愛人ですか??奥様がいらっしゃるのに??」

女はこんなにも震えているのにもかかわらず、少年は全くもって震えておらず、また顔色は何も変化していなかった。現在の気温は-10.9度。少年は上が薄いブラウス一枚である。

「あぁあ、ダメなのに。ご主人様に被害を加えようとしたらダメなのに。ダメなのにダメなのにダメなのに!!何でこんなに馬鹿なのかなぁ、何でかなぁ何でかなぁ何でかなぁ!!!!!ここに引っ越してきたのもぜんぶぜんぶぜんぶぜぇぇぇぇぇんぶ、あの方達を邪険にしたあいつらのせいなのに!!!!!!!!!!!!!殺してやりたい殺してやりたい!!!」

女の体は次第に凍り出した。少年はずっと叫んでいる。現在の気温は-50.1度。少年は下は薄い半ズボンである。

「ごめんなさいね、八つ当たりして。本当はあなたがそんなこと考えていない、って分かっていたのにまぁでも仕方がないですよね。敷地に入ってきたのが悪いんです。勝手に入ってきたら敵ですよ」

少年はニヤリと笑った。

 カーット!!!!!!!

 初出演作品は、思いもよらぬ大ヒットを得た。それは本当は脇役の飛逹を次のシーズンでは主演にしたほどだ。そう、皆が飛逹に惹かれたのである。

「あー、本当にひっちゃん天才。流石、ほんとにー!!これであれだったらやっぱりこの子にはこの子の人生があるから好きにさせてやりたいと思ったけど、やっぱダメ」

「うーん…好きにさせてやりたいけど…こうも良すぎるとなぁ…。まあ、10歳になったら判断させよう。ここまで才能があったら、少なくとも金には困らない。この子が勉強が苦手でも大丈夫だ」

「そうね」

 …本気出したら電子機器(前々からとてもとても興味があったのだ)を一つ買ってあげると言われたので本気を出したらこれである。あの演技は全て今まで私が出会ったことのある狂人を再現したものなのだが…。はぁ…。たしかに不気味さは感じられる。

 このように、私は怒涛の人生を送っているのであった。

 私はこの時は思っていなかった。自分があの感情に襲われるとは。そしてあの感情で偽ることになるとは。当然、思っていなかったのである。

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