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異世界争乱編 第五十六話

 キメラの荒波は収まった。

 それを手も動かさずに行った女性型ロボットは、真っ直ぐこちらを見つめながらも一歩も動こうとしない。

 その視線が真っ直ぐ私を見つめていることに気づいた。

「モモ、お久しぶりです。そして改めて初めまして」

「トゥルゥルなの?」

 エンペラーが割り込む。

「おいおい。ワタシは蚊帳の外かよ」

「私はモモと話しているのです。少し黙っていてください」

 光刃が繰り出されたチェーンソーを受け止める。

「なんかムカつく。嫌いだな」

「私も同じ気持ちです」

 エンペラーが動く。捕まっている私も一緒に。

 マントの拳が大地を穿ち、無数の槍が空を切る。

 電動鋸の歯が光刃と鍔迫り合いを起こした途端、溶けたバターのように消滅した。

「ルナスティルの装甲外套が」

「そんなマントで身を守ろうなんて愚かですね」

 エンペラーは勢い任せの攻撃を繰り出すが、全て光刃に切り落とされ光の粒になっていく。

「感情を表に出しては勝てるものも勝てませんよ」

「ワタシの母親か、貴様は!」

 エンペラーがマントの全てを槍にして繰り出そうとした時には、頭部と胴体は切り離されていた。

「私が愛を注ぐのは、あなたではありません」

 マントに守られていたボディが仰向けに倒れ、捕まっている私も引っ張られるように地面に吸い寄せられるが、拘束していたマントの蔦が力を失った事で自由になった両足で着地する事ができた。

「大丈夫ですか」

 女性型ロボットは相変わらず、トゥルゥルの殻に足を入れたまま動かない。

「は、はい」

「すいません。私は手が離せないので」

「貴女はトゥルゥルなの。でも男性だと」

「音声に異常があり、男性のような声しか出せなかったのです。私の正式名称はマリア・クレイドル。以後お見知り置きを」

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