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異世界争乱編 第五十五話

「––装置破損、メモリ修復完了、内部に損傷は認められず稼働可能、全リミッター解除」

 確かに声がする。

 しかし、彼はもう動けない。

 お腹と背中がくっつくほどボディは潰れているのに。

 キメラ達も脅威に感じていないのか、潰れた殻を無視してエンペラーの背後を取ろうとする。

「外部––甲に重大な損壊––確––。強制パージ」

 バンッという爆発音と共に無数の卵の殻が、下から突き上げるようにキメラ数体を吹き飛ばす。

 エンペラーだけでなく、キメラの大群が一斉に動きを止めた。

 殻が吹き飛んだ空間から、溢れるようにジェル流れ出す。

 白い煙に包まれながら仰向けに起き上がったのは、ローブを纏った女性のシルエット。

 キメラ達は弱者と判断したのか、それとも脅威と感じたのか、トゥルゥルから起き上がった女性に殺到する。

 怪物の満ち潮が引いた時、きっと残っているのはボロ雑巾のようになった死体だろう。

 そう考えていた矢先、キメラの高山の内側から青い光が突き出る。

 高山を針山と変えた光は回転し、黒い山を一瞬にして蒸発させた。

 エンペラーは青い光刃を眺めながら呟く。

「こんな隠し玉を用意してるなんて、狡いなぁ」

 自律した柄は両端から光刃を真っ直ぐ伸ばし、使い手を守るように周囲を浮遊していた。

 光輝な刃に照らされて、金属の肌を持つ女性の姿が明らかになる。

 純白のフードとローブに身を包み、乳飲み子に授乳するように赤いカプセルを胸に抱く。

 聖母のような姿からは想像もできない苛烈さで、五本の剣が動き回り次々とキメラ達を両断していく。

 十の光の剣による美しくも容赦ない舞踏会が開幕した。

 相手役の醜い化け物達は、自分が令嬢の相手を務めようと躍起になって迫るが、相手にもされず一蹴されていく。

 ハルナイトさえ軽くあしらったエンペラーでさえ手こずった集団をたった一体、しかもそこから一歩も動かずに切り伏せていく。

 切り捨てられたキメラ達は肉片どころか血の一滴も残らず消滅していった。

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