異世界争乱編 第五十三話
「さてさて何が出るかな。鬼か蛇か、それとも旧友か」
私をマントで拘束したエンペラーは鼻歌を歌いながら火花を散らしていた。
王国兵を全滅させ、ハルナイトを殺し、トゥルゥルを殺したエンペラーは私だけは殺さなかった。
『君は唯一生き残ったケモノビトだ。この中に何があったかを網膜に焼き付けて仲良しのトゥルゥルに報告してあげなよ」
マントが変化したチェーンソーが宇宙船の扉の隙間に差し込まれ徐々にロックを切り落としていく。
「さあ、半分まで来たぞ。ここに眠っているお宝は目覚めたかな。これだけうるさくてまだ寝ていることなんてないだろう」
金属同士が擦れる音、火花が積もった黒い雪を溶かす匂い。
どちらも気分を悪くさせるものだが、鼻や耳を抑えようにも体ごと手が拘束されているので動かせない。
マントが変形した蔦に絡め取られたまま、こじ開けられていく扉を見つめていた、
「ライフ・クォーツが残っているのは分かっているんだ。何故ならフレイはワタシが造ったんだからね」
エンペラーは誰に話しているんだろう。誰も応えないのに話し続ける。
「人の物を奪って好き勝手やって。あんなに従順だったのに生意気になったじゃないか。とんだ代物を隠しているな。もしかしてお姉さんがいるのかな?」
エンペラーは勝ち誇ったように笑う。
「さあさあ、ロックは全部解除できたよ」
言い終わると同時に扉の隙間から散っていた火花が止んだ。同時にチェーンソーの耳障りな駆動音も停止する。
エンペラーはマントを大きな手にして扉を掴む。
「さあさあ、対面の時だ! ドゥーア!」
土中の芋のように扉が引っこ抜かれた。
後ろで見ていたオーガ達にどよめきが起こる。
扉の先は通路のようだが、明かりはついておらず一寸先も見えない。
闇の中で音が聞こえる。床はもちろん、壁や天井から響いてくる。まるで象の集団が大移動するような。
目を凝らすと闇が蠢いているように見えた。
扉の前にいる全員が固唾を飲んで見守っていると、闇の奥から外に向けて球体が飛んできた。




