異世界争乱編 第四十九話
長老のテントの外には一回り小さいテントが複数あり、どれも黒い雪が積もっていた。
「ミルクが温まったよ」
長老が用意してくれたホットミルクで体を温める。
「こんなところでも動物がいるのですね」
疑問に答えたのはハンターだ。
「俺達が運良く連れてきた羊が生き残ってくれたんだ。専用のテントまで作って大切に育ててるよ」
「この地は一体何故こんな事に」
長老とハンターは顔を見合わせる。
「それは物知りの長老が教えてくれるよ」
長老は「記憶が曖昧なんじゃが」と前置きして切り出す。
「ふむ。実は我らは地球という星からきた。見たことあるかな。王国から南にある帝国を」
「大地に突き刺さった塔ですね」
「あれは儂らが乗ってきた宇宙船じゃ、何かのトラブルが起きて墜落した」
「その時に大陸が傷を負った?」
「瀕死の重傷をな。最初は大陸全土が黒い雪に覆われていた。それを一部でも住めるようにしたのが、賢者と呼ばれる存在じゃ」
「貴方と同じ地球の人なんでしょうか」
「分からん。だが大陸の西、つまり今いる村の周辺に賢者の住む神殿があると言われておるが、見た事はない」
「俺も同じくない」
二人は見たことないばかりか、存在しているかどうかも怪しんでいるようだった。
けれども私は……。
黒い雪は降っているが、遭難した時に比べれば少なくなっている。
私は外で一点を見つめていたトゥルゥルの元へ。
「モモ」
「トゥルゥル。何を見ているの。待って当ててみる。賢者の住んでいる場所でしょ」
「正解です。私のセンサーが微弱な信号を受信しています。この村から北北西の方向です」
「そこがトゥルゥルの家かもしれないのね」
「家、そうですね。私が作られた場所だとしたら、そこがマイホームでしょう」
「早速確かめに行くわよ」
「はい。行きましょうモモ」




