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異世界争乱編 第四十二話

「何故私を助けてくれるの」

 エンペラーの椅子となっていたマントから無数の腕が伸びてきた。

「ひっ」

 殺される。

 無数の腕が私の首や手足に指を伸ばす。

「ふむふむ。骨はもちろん内臓も異常なし」

 エンペラーは背もたれに体を預けたまま呟く。

「致命傷ではない外傷が複数。軽度の栄養失調と水分不足」

 腕が引いて行く。どうやら私の体を診察してくれたようだ。

「おい。誰か」

 燃え盛る砦のそばからオーガの一体が現れる。

「お前。彼女が食べれる食料と水、それと治療に使えそうなもの。急げ」

 驚いたことにオーガは文句ひとつ言わず、炎の中に飛び込んだ。

 少し経つと帰ってきて箱を私に差し出す。中には少し焦げた果物や水筒に包帯が入っていた。

「馬鹿。もっと綺麗なもの持ってこないか」

 エンペラーは頬杖をついて、火の中に飛び込んだオーガを見下ろしていた。

 その目はいつでも四肢を引き裂けそうな、強い殺意が光っている。

「申し訳ありません。もう一度行ってきます」

 再び飛び込むオーガ。帰ってきた時には焼けていない物を持ってきた。

「ありがとう」

「お前はさっさと下がれ」

 手を振るエンペラーに一礼して下がるオーガ。そのボディの各部は炎に焼かれて痛々しかった。

「治療できる奴はいたかな。オーガ達と君の体の構造は根本的に違うからね」

「自分で出来ます」

 怪我を治療し、体力回復のためにエンペラーに見られながら渡された食べ物を口につける。

 煙の匂いが染み付いていたが味はそのままだった。

「じゃあ一休みしたところで、ワタシ達の帝国に行こう」

 椅子の脚が変形し、複数の蜘蛛のような脚に変化した。

 エンペラーは動く椅子に座ったまま踵を返したので私も後に続く。

「あの、私を助けてくれた理由を教えてください」

「困っている人を助けるのは当然の事。じゃあ信じてもらえないかい」

「信じられません」

 エンペラーに置いていかれないように早足でついて行く。

「単刀直入に言えば、君と親しいあの卵型ロボットに興味があるからさ。詳しくは帝国についてから話そうじゃないか。君も詳しく知りたいだろうから」

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