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異世界争乱編 第二十八話

 日が西に沈み始めた頃、広場では大泣きしている女王の姿があった。

「そんな泣かないでください」

「だって、だってみんないい人達じゃないか。しかもずっと長く家族のように暮らしてきたのに……それなのにそれなのに」

 クインクが涙を流したまま立ち上がる。

「決めたぞ。お主の仲間を殺した兵達の一族に罰を与えよう。そう王国を追放してもら––」

「そ、そんなひどい事はしないであげてください」

「何を言う。元はといえば命令を誤って解釈した兵達が悪いのじゃ」

「いいんです。本当にいいんです」

「モモ、なんでそんな穏やかな顔をしておる」

「私の大切な人達も殺されましたが、殺した兵達もトゥルゥルやコクに殺されました。だからもう終わったんです」

「いいのか、それで納得しておるのか」

「はい」

 クインクは私の肩に手を伸ばした。

「モモが納得しているのなら、妾はもう何も言わん。じゃが最後に言わせてくれ。本当にすまない事をしたのう」

 クインクは背伸びをすると、私の頭をずっと撫でてくれた。


「しかしコクとお主の仲の良さは羨ましいのう」

「クインクにそういう人は?」

 私の問いに目を細める。

「おらん。何千年も女王を務める子供じゃよ。敬うものはおっても、愛してくれる者はおらんかった……」

 何か言いたそうに唇が開いたり閉じたりする。

「もしかして、誰か好きな人がいるのですか」

「うむ、ううん、いや、うん。おる。き、聞いてくれるかのう」

 上目遣いの質問に私は微笑みながら先を促した。

「その者は、優しくて頼りになっていつも妾の味方してくれるのじゃ。風に揺れてたなびく金髪がとても美しくてのう」

 愛する人を思い浮かべているのか、クインクは遠くを見ながら想いを口に出していた。

「その人に告白しないのですか」

 幻を見ていたようにクインクの瞳が濁り、持っているカップに注がれる。

「無理じゃ。もう彼には妻も息子もおるからのう。いくら女王でも踏み込んではいけないことぐらい承知しておるよ」

「ご歓談中失礼します」

 お互いに集中していたせいで私も驚いたが、クインクはもっと驚いたようで持っているカップを落としてしまう。

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