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異世界争乱編 第二十四話

「モモ。あれが王国だ」

 夜明けと同時に森を出て、ハルナイトさんの案内で街道の砦を経由して北へ向かった。

 私がいた東の森から北西までは豊かな緑に覆われている。それ以外は生き物が住むには適さない黒黒砂漠。

 快適に生活できる場所は大陸の三分の一しかないというのが現状だった。

 この大陸の名はパーチャク大陸だとハルナイトさんが教えてくれる。

「パーチャク大陸という名は我らの先祖を王国に導いてくれた賢者が記した書物に書かれている」

 賢者。魔人との戦いで、人類に魔法を授けた存在。ということしか分かってない。老人の姿と伝えられているが何処に住んでいるかも誰にも分からない。

 噂では西に宮殿があるとも言われるが、それを確かめて帰ってきた者は、人間の歴史上一人もいないらしい。

 そんな賢者が導いたのが今ハルナイトさんが指差す。山よりも高い長方形の建物を、円形の防壁が囲むように守護している都市。

「あれが、王都」

「森に住んでいた君には珍しいかな」

 王国の建物に近づくと全ては無機質な黒に近い灰色。防壁以外は全て長方形で作られている。

 まるで効率だけを最重要視しているような外観だ。

 見ているだけで肌寒さを覚える。

 防壁の前に立つと、ハルナイトさんが壁に向かって声を掛けた。

 すると、壁の一部が一人でに左右に開いていく。その分厚さは芯まで金属でできたバウムクーヘンのよう。

 名前を出したら、柔らかさと甘みを思い出してまた食べたくなる。何でだろう、一度も食べたことないのに……。

「モモ、扉は開いた。突っ立っていないで入ろう」

 毛並みの良い白馬に乗ったハルナイトさんの後を二人一緒についていく。

 扉をくぐると城下町。人間達は入ってきたハルナイトさんに羨望の眼差しや声援を送る。それを見て彼の人望の高さが分かる。

 少し遅れて入ってきた私達を見た途端、目を見開き指を挿しながら一歩下がっていく。

「モモ。気にしてはいけません」

 私を手に乗せて歩くトゥルゥルが気を遣ってくれたようだ。

「みんな珍しいのです。私もあなたも違う存在。それを忘れないで」

「……うん」

 でも気になってしまう。左から視線右を向くと指を指される。

「今日は日差しが暑いですね。病み上がりですから無理してはいけません」

 トゥルゥルが空いている手で庇を作ってくれ、左右の視線も遮られる形となった。

「ありがとう」

「お安いご用です」

 庇の隙間から街を観察する。高さが違うだけで、どれも同じ豆腐の形をした建物。

 長方形の窓には外側から木の窓枠が取り付けられていた。

「この王都は何千年前からあったもので、とても頑丈なのですが、修復手段がなくて、あり合わせのもので何とかしている状態なんだ」

 家主と思われる人物が、玄関のドアを自作したと思われる木製の扉を取り付けていた。

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