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異世界争乱編 第二十二話

「ケモノビトのお嬢さん。名前を教えてもらってもいいかな」

「私はモモです。彼は」

「トゥルゥルといいます」

「モモにトゥルゥルだね。改めてこの度の不幸な事態を謝罪させてほしい」

 ハルナイトは目礼する。その姿勢に嘘臭さは感じない。

「ハルナイト、さんもトゥルゥルを探しにきたのですか」

「そう。昨夜の流れ星と今朝の火の玉。どちらも王国で見えて一時騒然となった。その正体を確かめる為に部下を派遣したんだ。推測するに正体は君だね。トゥルゥル」

「はい。そうです」

「彼をどうする気ですか」

「最初は魔人の再来、もしくはオーガが関係している可能性も考えていた。何かしらの力で我が王国に流れ星を落とそうとした。そういう考えもあったんだ。エンペラーは何をしでかすか私達人間には想像もつかないからね。だが予測は全て外れたな」

 ハルナイトが再び手を伸ばす。

「二人を見て決めたよ。私が責任を持って二人を保護しよう」

「それって王国で保護してくれると」

「ああ。女王陛下には私から話す。決して悪いようにはしない」

 私が答えるより前にトゥルゥルが口を挟む。

「モモは私が護っています。だから貴方達の手は借りません」

 その言葉に胸の内が暖かくなるが、

「だが。君はモモの衣食住を用意できるのかい?」

「それは……」

「君は怪我や病気、飢えとは無縁そうだが、獣人のモモはどうだろう」

 隠していた悩みを打ち明けられた途端、お腹が空腹を訴える。同時に喉の渇きも。

「彼女は明らかに消耗している。そんな状態を知って私は同じ大陸に住む者として放っておけない」

「けどハルナイトさん。トゥルゥルには大事な目的があるんです」

「その目的とは?」

「……その記憶が一部失われていて、南としか」

 ハルナイトさんは大きく首を振って息を吐いた。

「そんな不確かな情報で旅をさせる訳にはいかない。やはり一度王国に行こう」

「モモ。私はこの人間達を信用はできません。彼らの仲間がコク達を殺したのは事実ですから」

 分かっている。コクや村のみんなの最期の表情は網膜に焼き付けられてしまった。

 それでも……。

「それでも、私は人間全員が同じ考えだとは思いたくない」

 ああ、これは逃げだ。現在進行形の飢えから逃げるための方便。それでもトゥルゥルは同意してくれた。

「モモの意見を尊重します……聞きなさい。ハルナイト」

 強い口調でトゥルゥルは自分の考えを告げる。

「私とモモは、貴方の提案通り王国の保護を受けます。しかし私達を不当に離れ離れにしたり、騙した場合は貴方と貴方の王国を決して許しません」

「承知した。その言葉、私の胸の内に刻み込んでおく」

 ハルナイトは帽子を被り部下達に告げる。

「お前達は先に帰り、モモとトゥルゥルの受け入れの準備をさせろ。二人は私が丁重にお連れする」

 部下達は何か言いたげにお互いを見遣っていたが、無理やり納得したのか、黙礼してその場を去っていく。

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