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異世界争乱編 第二十一話

 落雷は私とトゥルゥルのそばを通り過ぎ、切りつけようとしたキカイビトの女性に直撃。

 ゴムが引きちぎれるような音と、眩い閃光に包まれたキカイビトの体が陸の上の魚のように跳ねて地に落ちた。

 全身に小さな電撃が走り、体の隙間という隙間から煙を上げている。どう見ても即死だった。

 初めてキカイビト達が動きを止める。

「この雷の魔法は……まさか」

「奴だ。大陸唯一の(いかずち)の騎士が来たんだ」

 明らかに混乱の様相を呈するキカイビト達に向けて、十の雷の蛇が殺到する。

 蛇は全身に絡みつき、悲鳴を上げるキカイビト達に雷を流し込んだ。

 蛇は獲物を放り捨て、その場から煙のように消え失せる。

 雷の一方的な蹂躙に目を奪われていると、後ろから声をかけられる。

「君達。怪我はないかな」

 声をかけてきたのは人間の男。

 その声は力強さと優しさに満ち溢れている。

 森を抜けてきたからか、三角のつばを持つ帽子についた木の葉を落としながらこちらに近づいてくる。

 雷のような金髪をかきあげる男の服装は、一眼見て着心地の良さそうな上質なもので、オーダーメイドなのか、布地が余っていたり足りない部分は見当たらない。

 先程の叢を被っていた人間と同じ種族とは思えなかった。

「大丈夫か。耳を負傷したのかな」

 私は首を振った。

「いえ。どこも怪我してません」

「それは良かった」

 男が手を伸ばしながら更に一歩近づこうとすると、トゥルゥルがそれを阻む。

「おや? 驚かせてしまったかな」

「あなたの仲間によってモモの大切な人達が失われました。警戒するのは当然です」

 男は手を引っ込める。

「私の指示を誤って理解していたようだ。部下がすまないことをした」

 膝が汚れるのも構わず膝をつく。

「まだ信用できません。後ろに仲間が隠れている限りは」

 男は立ち上がって振り向くと、指を鳴らす。

 叢を被った人間達が森から出てくる。

「彼らに敵意はない。こちらも決して攻撃は仕掛けるな」

 男達は頷くが、瞳は一挙手一投足を見逃さまいと、鋭く細められていた。

「トゥルゥル。まだ隠れてる?」

「いえ。人間の生体反応はここに姿を表している全員だけです」

「信じてくれるようだな」

 私が小さく頷くと男も頷き返した。

「お互いの信用を深める為に自己紹介しよう。私の名はヤルサ・スィ=ハルナイト。王国で唯一騎士の称号を持つものだ」

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