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異世界争乱編 第二十話

 石槍を投擲してきた者たちが、手に武器を持って姿を現した。

 先程の人間達と違い、見るからに重そうな石剣や石斧などを軽々と構えている。

 何体かの刃には赤黒い液体がこびりつき、絶え間なく垂れ落ちていた。

 キカイビト。

 人間がオーガと敵視する、人骨のような細い体躯を持つ金属生命体。

 自らを地球人と自称するキカイビトの一体がこちらに詰問してきた。

「空から降ってきた火の球の正体はお前か」

 男性の声はトゥルゥルに向けられていた。

「そうです。武器を収めてくれませんか? 私達は人間に追われていて仕方なく武力を行使しただけです。貴方達に敵意はありません」

 無抵抗を表すように、両掌を見せるトゥルゥル。

 先程とは違うキカイビトが進み出てくる。

 姿形は全く一緒だが、声は女性のものだった。

「喋れるなら、名前を名乗って」

「私はトゥルゥル。後ろにいるのはモモです」

 私は小さく頭を下げる。

「獣人はどうでもいい。トゥルゥル。あなたは私達のエンペラーを知っていて」

「エンペラー。私の修復中のメモリには皇帝イコール『王として国を収め民を導く者』ということしか分かりません」

 その返答を聞いたキカイビトの女性が手を伸ばすと、それに合わせて周りのキカイビト達が武器を構える。

「何故武器を構えるのです。私達に敵意はありません」

「手足を破壊しろ。エンペラーの元へ連れて行く。獣人に用はないから殺せ」

 そう言って自らも両手剣を私達に向けて突き出してきた。

「私の後ろに」

 トゥルゥルの手が優しく私を誘導するのとキカイビト達が一斉に走り出すのはほぼ同じだった。

「生き延びる為に力を使います」

 走るキカイビト達が背負った石槍を投げつけてくる。

 穂先から柄頭まで全て石で作られた槍は余すことなく命中するが、卵の外殻は全て弾いていく。

 石と金属がぶつかる音は間近で聞くと、頭を殴られているようで、耐えきれず耳を塞ぐ。

 トゥルゥルは地面に突き刺さった石槍を左手で掬い上げるように集めると、右手の三本指で器用に摘んで投げ返す。

 何本かは迫るキカイビトを串刺しにするが、持っている武器を使って弾き落とされた。

 トゥルゥルは持っていた槍を一気に投げつけると、拳を構えて待ち構える。

 振り下ろされる石の武器を掴み、キカイビトごと放り投げる。

 武器を盾にしたキカイビトごと殴りつけ、懐に飛び込もうとしたもう一体に拳を振り下ろす。

 地面と拳に挟まれた敵は、内側から金属の部品と油臭い体液が飛び散る。

 人間とは違い、キカイビト達は仲間を倒されても逃げ出そうとはしない。最後の一人になっても戦うという強固な意志を感じる。

 トゥルゥルのボディに石の武器が打ちつけられ、金属音が響き続けていた。

「お前達、どけ」

 先程の女性のキカイビトが一体で突撃してきた。

 トゥルゥルは長い腕を生かして先制する。

 それを掻い潜られ、キカイビトは力任せにボディに両手剣を叩きつけた。

 爆発したような大きな音と火事になりそうなほどの大量の火花が散る。

「硬いな」

 キカイビトが自分の両手剣に目を遣る。

 石の厚い刃がギザ歯のように欠けている。

「一体何でできているんだ。その殻は」

「私の外殻はルナスティルで作られています」

「ルナスティル?」

 まるで月にありそうな名前だった。

 キカイビトは疑問を解消とする気はないらしく、再び攻勢に出る。

 トゥルゥルも敵の動きに対応できるようになったのか、お互いの攻撃は当たらず空を切る音ばかりが続き、決着がつく気配がない。

 一進一退の攻防を打ち破ったのは、地面と並行に疾駆する落雷だった。

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