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異世界争乱編 第十五話

「トゥルゥル進んで」

「コク!」

「ピトンの足を見て。紐で枝にくくりつけられてる。空から落ちて偶然こうなったんじゃない」

「でも、目の前のピトンをそのままにしておくなんて……」

「トゥルゥル。追手は?」

「依然として私達の後を追ってきています。ここにいたらすぐに追いつかれるでしょう」

「じゃあ進んで。今すぐ」

「よろしいのですか」

 トゥルゥルはピトンの死体、そして私に視線を注ぐ。

「私はモモに死んで欲しくない。その為にはトゥルゥルの力が必要なの」

「分かりました。では行きます」

 トゥルゥルは走り出す。止めたかったけれどコクを説得するような言葉は思いつかなかず、すれ違いざまにピトンに最後のお別れを伝えた。

 トゥルゥルがまた停止する。

 また誰かの変わり果てた姿があるのかと思ったが、相変わらず直立する木々しか見えない。

 コクも同じようで、突然停止した理由を求める。

「どうして止まるの」

「センサーが前方の動体反応を五つ感知」

「後ろのやつに先回りされた」

「いえ。依然として後ろから五つ反応が迫っています」

「敵は五人じゃなかった」

 コクは私の方を見て微笑む。

「心配しないで。なんとかする。トゥルゥル。そのセンサーというもので敵がどう動いているのか分かる?」

「はい。前後共に半円形に広がっています。つまり私達を包囲しようとしているようです」

「私達の位置は完全に掴まれてるわね」

「恐らく、私のボディが目立つからでしょう」

「走ったり隠れて逃げるのは無理。戦うしか……」

「コク。私に提案があります。強行突破するよりも確率の高い方法です」

「教えて」

「私が彼らの前に単機で姿を晒します。目立つボディです。彼らの目は釘付けになるでしょう」

「囮になってくれるのね」

 トゥルゥルの提案に私は異を唱える。

「そんなトゥルゥル一人でなんて」

「いいえ。モモ。私一人の方が両手も自由になって動きやすくなります。そしてあなた達二人なら隠れる事も容易です」

 トゥルゥルは私達を地面に下ろす。

「二人に助けてもらえて感謝しています。そしてモモ」

「はい」

「あなたの優しさはとても心地よかったです」

 私が何か言う前にトゥルゥルは大きな足音を立てて走り出してしまう。

 姿が見えなくなった後、赤い火球が飛び交っていく。

 後ろから複数の草をかき分ける音。

 棒立ちの私はコクに押し倒される。

 二人で生い茂る草の中へ倒れ込むと、耳のそばで足音が通り過ぎていく。

 目の前で一度、土を踏み締めるブーツが降りてきて悲鳴をあげそうになるが、コクが口を塞いでくれたので事なきを得た。

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