異世界争乱編 第十二話
準備を整えた私達は夜の闇に紛れて一列になって移動を開始した。
夜目が効くのはルフさんと村長とコク。
ルフさんは少し離れて先を進み、その後を村長を担いだミングさん。すぐ後ろにオツルさん。
列の真ん中に位置するコクは、後ろにいる私の手を握ったまま、左右を警戒するように首を動かしている。
「イテッ」
声に振り返る。
何度目だろうか、キュウさんの後ろを歩いていたピトンが転んでしまったようだ。
夜目が効かない彼にとって、森の中は障害物の山だった。
「大丈夫ですか」
最後尾のトゥルゥルが手を差し伸べる。
「ああ、なんとか……痛っつ!」
足首の辺りを抑えてうずくまってしまった。
前にいたキュウさんが状態を調べる。
「ひねっているわ〜。歩くのは無理ね〜」
「大丈夫だって、これくらい––うぐっ」
体重をかけるだけで激痛が走るようで、誰の目にも歩けなさそうなのは明白だった。
「よければ私の手に乗ってください」
「えっ、いいのか」
「はい。私なら人一人持ち上げるのは造作もありませんから」
トゥルゥルは差し出した両手にピトンが腰掛けたのを確認して、壊れ物を扱うように持ち上げた。
足を挫いてしまったアクシデント以外は特に問題も起きず、森に光が差し込んでくる。
「やっと朝か、長かったぜ」
トゥルゥルの掌の上で、ピトンは眩しそうに目を細める。
「良かったですね」
「あんがとよトゥルゥル」
ピトンは背中の翼を広げ、掌から飛び立つ。
「まだ乗っていても構いません」
「なーに明るくなったらこっちのもん。足がなくたって翼があればなんでもできる。ちょっと周りを見てくるよ」
鎖から解放されたようにピトンは木々より高く飛び立った。
「無理しちゃだめよ」
「わかってる」
その声が聞こえた頃には、ピトンの姿は見えなくなってしまった。
ピトンが上空から辺りを見回している間、私達も歩いていた。空からならすぐに発見できるだろうと推測したからだ。
「モモ。疲れてない」
「ううん。手を引いてくれてるから大丈夫。コクは平気なの」
出発してからずっと私を引っ張ってくれて森を進む。疲れてないはずないのに。
「問題ない」
そう力強い返事をくれる。
不意に先頭の足が止まり、釣られて私達全員は立ち止まった。
横から顔を出すと、誰か近づいてくる。
その赤く染まったマフラーは見覚えがあった。
ルフさんは、村長とミングさんの前で止まると、空気が抜けたように倒れてしまう。




