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異世界争乱編 第十一話 

「……ふむ、あの火の玉の正体が、こぉんな大きな金属の卵とは」

 村長はオツルさんに支えられ、家の入り口で見上げていた。

「この度はご迷惑をおかけしました」

「……いやいや気にせんでよい」

「村長もトゥルゥルは初めて見るのですか」

「……初めてじゃ。人間は勿論、キカイビトとも違う」

「南に行ってある言伝を伝えたいそうなんです」

「……南、南にはキカイビト達の帝国があり、その先は人の住めない極寒の黒黒(くろぐろ)砂漠。伝える相手は限られてくるのう」

「じゃあ、トゥルゥルはキカイビトの誰かに伝えることが?」

「……可能性としては、それじゃが……トゥルゥルさんや」

「はい」

「……思い出せないのはもどかしいじゃろうが、時間をかければ思い出す可能性は高いのじゃろう?」

「メモリは修復していますので、いずれは思い出せます」

「……ふむ」

「村長。せめて記憶が戻る間でいいので、トゥルゥルをここに置いてもらえませんか」

「……それは構わん。のじゃが」

「他に問題が」

「……うむ。オツルや。皆を集めてくれ」


 村長の呼び掛けにみんなが村長の家の前に集まった。

「……よく集まってくれた。心苦しいが村を捨てねばならん」

 全員の口からざわめきが起こる。

 予想していたとはいえ、やはり衝撃は大きい。

 オツルさんが鶴の一声を発した。

「皆さん。先に伝えておきますが、トゥルゥルのせいという事ではありません」

 みんなの目線がトゥルゥルに向けられそうになったのに気づいたようだ。

「……今朝の火の玉は王国やキカイビト達も気づいているじゃ。だからここを離れ、ほとぼりが冷めるまで森の奥へ潜む。意見はあるかの?」

 誰からも意見は出なかった。村長はオツルさんに向かって頷く。

「では、今から準備を。終わりしだい東へ向かいます」

 私達は蜘蛛の子を散らすように、すぐさま準備に取り掛かる。

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