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地球脱出編 第三話 

『クヴィン、クヴィン』

 耳のインカムからの無線で目が覚めた。

『聞こえているクヴィン。降下開始五分前よ』

「聞こえているドゥーア。準備は出来てる」

『そう。寝ぼけて水圧で潰されそうになっても知らないわよ』

「通信終了」

 インカムのスイッチを切り、ドゥーアの声を耳から締め出した。

 うつ伏せの姿勢のまま、今回のミッションを思い出していると、肩を叩かれるような振動が起き、目の前のハッチが開いていく。

 党首専用機より静粛性の高い輸送機(ストーク)であっても、ハッチ開放の空気抵抗を完全に殺すことはできない。

 うつ伏せのまま首を巡らせると、自分が着用しているのと同型の強化外骨格が同じ姿勢でぶら下がっている。

 インカムで状況を確認する為、受信スイッチだけをオンにする。

『降下ポイントに到達。ドゥーア機、降下』

 前方のシグナルが三度赤く点滅し青になった途端、右前のドゥーア機がハッチから外に()()()()()

『トリーア機、降下するよ』

 シグナルが赤から青に変わるたびに仲間達が降下していく。

『ウヴァル機、降下します』

 三人が降りて行き、狭く薄暗いハッチは自分一人だけになる。

 視界に赤い光が飛び込む。一つ、二つ、三つ。

 赤の光が一斉に青になり、降下許可が降りた。

「クヴィン、降下します」

 背中を固定していたアームのロックが解除され、強化外骨格ごとクヴィンの体は重力に引っ張られて落ちていく。

 ヘルメットに投影された高度計が狂ったように数字が変化し、みるみる海上へ近づいていく。

 両手両足を広げて降りていると予定された一度目の衝撃に襲われる。

 背中のパラシュートが展開したのだ。

 パラシュートが開いてからブースター点火まで十秒。この時が一番無防備な時間だ。

 背中から二度目の衝撃。パラシュートを捨て、ブースターが点火した。

 これで空中でもある程度自由に動けるようになったが、ブースターの光が敵に見られる恐れがある。

 レーダーに見つかる事はない。ドゥーア機のECMにより敵のレーダー及び無線は役立たずとなっているからだ。

 雲海が晴れ大海が視界に入る。

 月光に照らされた海面を切り裂くは三つの航跡。

 しかし船は見当たらないまるで幽霊船のような航跡。

 それは心霊現象でも何でもない。メインカメラをズームしてみれば海中を進む姿を僅かに確認できた。

『目標を確認。攻撃を開始する』

 ドゥーア機が腰だめに持った対潜ミサイルランチャーを構えた。

 ランチャーより弾頭が一回り大きいミサイルが発射され、海面に飛び込んだきっかり二秒後に大きな水柱が立った。

『命中。目標の一隻の撃沈を確認』

『二隻目行くよ。ウヴァル!』

『うん』

 トリーア機、ウヴァル機が空中で手を繋ぎ、頭から落ちていく。

 そのまま海中に入ると、二手に分かれ、トリーア機はマッコウクジラによく似た潜水艦チャージ・カシャロットの真正面へ。

 潜水艦はアクアジェットを全開にしてその場を押し通ろうとする。

 トリーア機は臆する事なく左腕のタイタンアームを、丸みを帯びた潜水艦正面の装甲に叩き込んだ。

 生身の人間がクジラを正面から受け止めるように、チャージ・カシャロットの艦体が止まる。

 側面に回ったウヴァル機の右腕のタイタンアームが比較的柔らかな横っ腹を貫く。

 大穴が空いたところから浸水が起こり、沈んでいく潜水艦は水圧であっという間に圧壊した。

 二隻目を撃沈された事で三隻目は脇目も振らずにその場を離れようとする。

 一隻でも突破を許せば、集結中の政府軍艦隊に被害が出て反抗作戦が失敗する可能性がある。

 クヴィンはブースター全開で海中に飛び込むと、潜水艦の上面に降り立ち、装備したニードルガンを撃ち込む。

 極太の針は艦内深くに突き刺さるとボール状の炸薬を辺り一面にばら撒いた。

 クヴィンの足元で潜水艦は内部から爆発して膨らみ、海の藻屑と化した。

「三隻目撃沈」

『クヴィン。今の活躍で居眠りしていた事は不問にします。こちらドゥーア作戦完了。回収を頼みます』

海面に上がって、回収に来るストークを仲間達と待っていると、不意打ち気味にライトで照らされた。

その正体は小さく粗末な漁船だった。あまりにも小さすぎて、こちらのレーダーに引っ掛からなかったようだ。

漁船には壮年の男と小さな男の子がいる。

親子だろうか。だがそんな疑問は些細な事。

おもむろにマシンガンの銃口を漁船に向けると、強化外骨格の指を通して引き金を引いた。

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