地球脱出編 第十九話
開戦から八年。政府軍と国家軍の均衡は破られていた。
均衡を保っていたクヴィン達の最近のミッションに変化があったからだ。
以前は不利になっている地点、勢いのある部隊、戦況を覆す可能性のある新兵器などがターゲットだった。
今の最優先ターゲットは国家軍のある一部隊の殲滅だ。
クヴィン達を集めたウンチクがスクリーンを叩く。
「特殊部隊ウォーターベア。やっとこいつらの居場所が掴めた」
国家軍の誇る漆黒のサイボーグ兵士達。
彼らは少数精鋭の隠密部隊で、民間施設の攻撃や拷問、神経兵器の利用など非人道的な事も厭わない。
静粛性を重視する為か、関節部分をゴムカバーで覆い、ソールも厚いゴムに覆われている。
使う銃器もサプレッサーが装着され、その場にいた証拠は今までほとんど残されていなかった。
「だがだが、奴らは唯一のそして最大のミスを犯した。それは民間人が携帯で音声記録を残していた事だ。それは動画サイトにアップされ、非人道的な特殊部隊として認知されるに至った。そしてワタシ達にとってもこいつらを殲滅する格好の手掛かりとなってくれたわけだ。間抜けな彼らに礼を言うためにも直接会いにいかないとな」
ドゥーアが挙手した。
「しかし情報が漏れたとはいえ、一筋縄ではいかないのでは? 彼らは不死身とも言われてますし」
「ウォーターベアの由来通り、彼らは何度全滅しても蘇っては作戦行動を再開している。だけども、その理由も判明したよ」
スクリーンに表示されたサイボーグ兵士のデータが何処かのHDDに転送されている。
「彼らは自爆攻撃も辞さない。サイボーグとはいえ意識はボディの中にあるのに何故そんなことが出来るのか。理由は分かってしまえば簡単な事。戦闘データを司令部に送るように自分達の意識も首都オリュンポス・シティのハードディスクに転送していたんだ」
「その相手に挑む対処法はジャミングですか」
「正解! ドゥーア機のジャミング装置が役に立つ。しかし問題がひとつ。敵もカウンタージャマーを持っていてしかも常時発動だ。これを無効化できる時間は限りなく短い」
「じゃあ、いつも通り失敗は許されませんね」
「うんうん。理解が早くて助かる。確実にウォーターベアを全滅できる状況が来るまで君達は待機。解散、はい解散!」




