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地球脱出編 第十六話 

 先日の怪物の正体が判明したという事で、全員が食堂兼ブリーフィングルームに集められた。

『政府軍の空中都市ラーピュタで作り上げられたキメラという生物兵器だ。毒虫や猛獣の遺伝子を掛け合わせたバイオウェポンだね。戦闘力は期待以上だったが、開発当初は全くこちらの指示を聞かなかったらしい』

「まさか、人の姿が混じってたのは……」

「クヴィンの想像通りだ。研究者達は指示を聞くように人間の細胞を利用した。それが上手いこと噛み合い兵器として完成したそうだ」

「地球の奴らって気持ち悪いこと考えるんだな」

 聞いているトリーアは今にも吐きそうな顔をしている。

「だがそれが功を奏して、国家軍の占領部隊を全滅させているんだ。過程はどうあれ有用な兵器だよ」

「キメラの活動時間はどれくらいなんですか?」

「二時間から三時間。それを過ぎると細胞が壊死する。緊急時は外部から強制的に自滅させることも可能。全く人間にとって都合の良い兵器だよ」

 スクリーンを見つめるウンチクの瞳は爛々と輝いていた。

「ワタシ達の最優先目標はこのキメラの情報収集と殲滅。可能ならサンプルも欲しいな。色々と調べる価値があると思うから。じゃあ次のミッションまで解散」

 みんなが食堂を出ていく中、ドゥーアがウンチクに近づいていく。

 扉が閉まる寸前、こんな声が聞こえてきた。

「ウンチク。キメラに組み込まれた人間の詳細を――」


太平洋を航行する政府軍艦隊は今や国家軍の物になっていた。

政府軍の空母の甲板には国家軍の戦闘機スカイ・メドゥーサが駐機しており、いつでも発進できるように準備を整えているのが上空のドローンのお陰で手に取るようにわかる。

「ジャミング作動確認。護衛艦に対して対艦魚雷ロックオン」

トリーアとウヴァルからもロックオン完了の報告が入る。

バックパックに装備された魚雷を発射。一機一発、合計三発の魚雷が三隻の護衛艦にほぼ同時に命中した。

護衛艦が沈むなか、ドゥーア機のレールガンが放たれた。

時速一万キロの弾頭が緊急離陸しようとしたスカイ・メドゥーサ数機をまとめて撃ち抜く。

撃ち抜かれたクラゲは火を吐きながら甲板に墜落し、周りの同類に誘爆を促した。

その間にクヴィン達は足につけた水中スクーターで阿鼻叫喚の艦隊に接近。

トリーア、ウヴァルと共に生きているサイボーグ兵士にトドメを指していく。

甲板上では次々と狙撃されたクラゲが墜落し、破片を撒き散らしながら火災を引き起こしていた。

ドゥーアから通信が入る。

『甲板上の敵機全機撃墜』

「了解。空母に乗り込みます」

空母に取り付き、ロッククライミングのように出っ張りに手足を引っ掛けて甲板に上がる。

辺りで火災が起きているが、まだ生き残りの敵兵がいる。

彼らにガトリングの連射を浴びせながらジャンプし、窓から艦橋に飛び込んだ。

環境内にいたサイボーグ兵達の銃撃がデュラハンのボディで無意味な金属音を奏でる。

ガトリングを撃ちたいところだが、艦橋の機能を殺すわけにはいかない。

空いている左腕で殴り飛ばし、最後の一体を艦橋の外に放り投げた。

「艦橋制圧。ウィルスを侵入させます」

デュラハンの指から細いケーブルを伸ばし空母から政府軍のネットワークに侵入。そこで必要な情報を抜き出し、宇宙のマイホームに転送する。

「転送完了。脱出します」

脱出間際、ガトリングで艦橋を破壊。空母から脱出するとドゥーアの放った対艦魚雷とすれ違う。

空母は土手っ腹に大穴が開き、海底に向かって望まない針路を取った。

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