地球脱出編 第十一話
マイホームにきてからの一週間は訓練漬けの毎日だった。
休みといえば途中に挟まれる二度の休憩と六時間の睡眠のみ。
デュラハンの操縦を学び、武器の使い方を知り、機動性を高めた結果、戦車砲でも貫かれる紙装甲であることを知った。
寝ている間も睡眠学習でデュラハンの事を学び続けた為、肉体は休めても脳は働き詰めの七日間だった。
八日目。訓練も終わった一日は丸々自由時間を貰えたので、真っ先に思いついた事を実行する。
それはベッドに飛び込む事。肌触りの良い毛布にくるまり、柔らかな枕に飛び込み、脳内の教師に邪魔される事なく惰眠を貪り続けた。
丸一日経った頃インターホンの音で起こされた。
モニターに映ったのはドゥーアだ。
『クヴィン。起きてる』
「すいません今の今まで寝てました」
「そうか。すぐに準備して食堂へ。全員集合だ」
「何かあったんですか」
「私たちの初任務だ」
至急されたシェルタースーツを着込む。全身タイツのように身体にフィットするが締め付ける不快感はなくまるで素肌のようだ。
耐寒耐熱は勿論、ヘルメットを装着すれば宇宙服と潜水服の機能まで持っている優れもの。
このスーツこそが、ロストチルドレンの制服であり私服であり戦闘服だった。
食堂では既にシカク以外の全員が集まっている。
壁を背にしたウンチクに視線を注ぐ形で腕を組むドゥーア。少しでも離れたら死んでしまう雰囲気を出すトリーアとウヴァル。
「さてさて全員揃ったな。遂に君達の初出撃の時間が来たぞ」
口に咥えたタバコ型チョコを噛み砕く。
新たなチョコを加えて後ろの壁を叩くと、スクリーンが現れた。
「国家軍の地球降下部隊が防衛線を突破して地球に向かおうとしている。知っての通り今の政府軍は緒戦に負けてボロボロ。軌道上の防衛隊も穴だらけだ。国家軍はその隙を逃すほどバカではなかったということだ」
「じゃあ、僕達は国家軍の地球降下部隊を攻撃するんですね」
「残念。不正解だ」
「政府軍を攻撃するんですか。でも防衛線はボロボロなんじゃ」
「地球周回軌道上の防衛線はね。その分大気圏内の部隊の配備を優先しており地表の防御は硬い。だから降下部隊を安全に地球に行かせるために、ワタシ達が政府軍の防衛線を食い破る」
「おおーぶっ殺してやるぜ!」
ずっとノーリアクションだったトリーアが天井を破るほどの勢いで拳を突き上げた。




