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どんなに神に祈っても、私は彼から逃げられない

作者: 五珠

神さま…


お願い…助けて…




「おはよう、キャロル気分はどう?」

「…おはようございます、ジェフリー様」


「様だなんて、ジェフリーでいいと言っただろう?」



そう言って彼はゆっくりと私の髪を指に絡める。


「…ジェフリー」


「それでいいよ、さあ朝食を持ってきたから食べようね」


この部屋にある小さな丸いテーブルに、彼が次々と皿を並べる。


私が食べ終えるまでジェフリーはずっと待っている。

食べている私の口元を、視線を逸らすことなく見つめる…


「ごちそうさま…とても美味しかったわ」


それを聞くと彼は満足気な顔をしてテーブルを片付け、部屋を出て行った。



 この部屋に来て、どれだけの日数が過ぎたのだろう…


私は…兄に囚われている…


□□□□


 ジェフリーは私の兄だ。


 父の妹クロエが見知らぬ男との間に授かった子ども。


クロエ叔母様はそれは美しい人だったと父から聞いている。

不幸にも結婚式の前日に攫われ、その一週間後、町外れにある小さな教会の奥にある小部屋で発見された。

発見された時にはガタガタと震え「神よ…神よ」と許しを乞うように手を合わせており、その体には子を宿していたという。


 そのまま結婚の話しは流れ、叔母様は子を産み落とすと亡くなった。その赤子をクロエの兄であった私の父と母が、我が子として引き取り育てた。


当時、結婚もしていなかった父と母は兄ジェフリーの為に結婚をした。そうしなければならないと思ったと言っていた。


その二年後に私が生まれる。


兄はとても優しく、いつも私のそばにいて愛してくれた。


美神かのごとき耽美な容姿、透き通るような白い肌、それをさらに際立たせる肩まで延びる淡い金の髪と、澄んだ湖のような碧い瞳で誰もを魅了してやまない美しい兄。


 その美貌に惑わされた者に今までに何度も攫われ、男女問わずに襲われるが、必ず何事も無く終わり、何故か、攫った者や襲った者達は皆気が狂い、兄の名を叫びながら死んでしまうのだ。


 ジェフリーが成長するほどに彼に心酔する者達は増えていく。


大人も子供も、生き物すべてがそうであるように誰もが彼に夢中になった。



もちろん私も優しく美しい兄のことは大好きだ。



しかし私は14歳のある日、彼に出会ってしまった。


 ライル、私の初恋の人。


彼は公爵である両親と共に屋敷に来た、茶色い髪の優しい緑色の目をした柔らかな顔立ちのライルから私は目が離せなくなっていた。


あの人と話がしたい…そう思っているとライルと目が合った。

うれしくておもわず笑みがこぼれた。



そんな私を、ジェフリーが冷たい表情で見ていたとは知りもせずに…


 ジェフリーのことを両親も祖父母も親類も周りの全ての人が『ジェフリー様』と呼ぶ。


幼い頃『兄さん』と呼んだ私を、母は叩いた。

どうして? 頬を押さえ涙を堪える私に、ジェフリーが駆け寄りそっと頭を撫でる。


「私は本当の兄ではないから、兄さんと呼ばなくていいんだよ」


私に優しい笑顔を向けるジェフリー。


そこで初めて兄の出生の事実を知った。

叔母様が可哀想、好きだった人と結婚もできず産んだ赤ちゃんも抱くことなく天国へ行ってしまったなんて…まだ子供の私はそう思った。


「でもねお母様、私のキャロルを叩くのはいけない事だったね」


ジェフリーが初めて聞くような暗く冷たい声で母に言う。


「ごめんなさい、ジェフリー様、ごめんなさいキャロル」


母は謝りながら小さく震えていた、それを見た兄はフワリと微笑み、「許すよ」と頷いた。



兄は…一体何者なのだろうか…


どうして父も母も兄の言う通りにするのだろうか…




□□□□



 今思えば、私はいつも兄と一緒だった。

食事もお風呂も、眠る時意外は何をするにも必ず兄がいた。

兄が何処かへ出かける時は、私は侍女と二人になる。

その間、侍女は私から片時も離れない。そしてその日の一部始終を兄に報告していた。


生まれてからずっとそうなのだ、何一つおかしいとは思わず暮らしていた。


 ライルに出会うまでは…


彼の両親は、ジェフリーに会うために我が家を訪れていた。


 兄には不思議な力があるという、それは先読みの力と浄化なのだと聞いていた。

貴族は主に先読みの力を求めて我が家を訪れる。


 いつもは来客中は庭に出てはならないと言われていたが、今日は何も言われなかった。


 続いていた雨が上がり、久しぶりの日差しに誘われ私が侍女と二人で庭へ出ると、そこにライルがいた。彼は一人で花を見ていた。

私達に気がつくとうれしそうに笑いこっちに来ようとする。


それに気づいた侍女がスッと私の前に立った。

「お待ちください、お嬢様に御用でしょうか?」


少年に対し見下ろす様に冷たく言う侍女に、彼は少し怯えたが直ぐに丁寧なお辞儀をして名を告げた。


「僕はライル・マイセンと申します、お嬢様とお話させて頂けませんか?」


侍女は名前を聞くと慌てて深々と頭を下げる。

「もうし訳ございません、マイセン公爵令息様、ご無礼をお許しください」


「いいよ、そんなに頭を下げないで」

ライルは柔らかな笑みを侍女に向けた。


兄の神々しい美しさとは違う、暖かみのある笑顔に胸がときめいた。



 年齢の近い私達は直ぐに打ち解け、互いが好きだった植物の話をした。

それから私が、一度もこの屋敷から出たことが無いと話すと彼はとても驚いていた。


「本当に一度もこの屋敷から出たことがないの?」

「ええ、他の子供と話をしたのもあなたが初めてよ」


私の言葉に「君は僕より小さいのに、僕のこと子供なんていうの?」とライルは笑った。


「じゃあ、僕がいつか連れ出してあげるよ」

「本当に?」

「うん、約束だ」


そう言って私と彼は握手を交わした。


 それから私達はいろいろな話をしたが、楽しい時間はすぐに終わりをむかえてしまった。

マイセン公爵夫妻は兄との話が終わり、ライルを迎えにきた。

彼は笑って「またね」と帰ってしまった。


もう少しお話したかった、あの笑顔を見ていたかった、そう思いながら彼を見送った。



「何を二人で話ていたの?」


 ジェフリーが私に、背筋の凍る様な声で話す。

私は何も後ろめたいことはしていないのに怯えてしまった。


「植物の話をしていたの」

間違いはない、確かに話をした。


「それだけ?」


 ジェフリーは、私の頬をそっと撫でるとそのまま髪を一房持ち、そこに口付けを落とす。

 彼の碧い瞳が、私の心の奥を見透かそうとしているようで、普段は優しい兄がなぜか怖くてたまらなかった。


 その日から五日後に、マイセン公爵家から私にライルとの婚約の申入れがあり、父はそれを受け入れた。

公爵家からの申し込みを、伯爵である父が断るはずもなかったのだが、そのことでジェフリーが父を射殺しそうな視線で見ていた事を、私は気づきもしなかった。


 私はただ彼との婚約がうれしくて、また会えるあたたかな笑顔のライルを思い、胸を弾ませていた。




□□□□




「ジェフリー様…私はもう婚約したのです、それに、いつまでも一緒にお風呂に入る訳には…」

 

 私は物心ついた時にはいつも、ジェフリーとお風呂に入っていた。

まだ小さな頃はそれは特別おかしな事では無かったが、私はもう14歳で少し小柄とはいえ、体つきもだんだんと女性らしくなってきている。


兄と何もかも一緒というのは流石におかしいと、それを伝えるといつも温和なジェフリーが、怒った様に私の後ろ髪を強く引き顔を上げさせた。

「いっ…」痛い、そう告げようとした私の唇に、今にもつきそうな程の近さで兄が微笑んでいた。


「キャロルそんな事言ってはいけないよ、それに私のことはジェフリーと、様なんてつけないで」


そう言って優しく笑うと、兄は私を抱えいつものように浴槽へと入った。


 初めて知ったジェフリーの暴力的な行動に、これ以上逆らってはいけないと自ら警鐘を鳴らす。


私は湯の中で、兄に後ろから抱きしめられた。


「私のキャロル…あなたを他の者に穢れさせたりはしない」


 囁くように言うと、ジェフリーは私の首筋に強く口付けた。

初めて受けるその感覚に、痛みと恐ろしさを感じた。

少女のやわ肌に痕を残した彼は、それを満足そうに指で撫でる。


「ふっ…これを見てもライルはキャロルを欲しがるかな?」

嬉しそうに笑うと兄は先に浴室を出ていった。



「……これは…どういう事なの」


 穢れとは? なぜ私にこんな事をするの?

付けられてしまった痕を隠すように私は強く擦った。

お湯の中にいるのに体の芯は冷えてしまった。


こんなのおかしい…


…ジェフリーは、私に固執しているの?


昨日まではただ優しい兄だと思っていた。

私は外の世界がわからない、知ることもなかった。

気にもならなかったのに……

他の家族はどんな風に暮らしているの?

毎日兄妹でお風呂に入るのは当たり前なの?


 ライルのお父様とお母様は子供を呼ぶのに『様』とは付けていなかった…

なぜ両親はジェフリー様と呼ぶの?

本当の子供ではないから?


食事だっておかしい。

私は兄と二人きりで食べているのだ。


皆もそうなの?


服も髪も兄の言う通りにしなければならない。


それは普通のこと?



今度彼に聞いてみなければ…


ライルに会う日までに、この痕が消えていればいいけれど…




□□□□




どうして…


付けられた痕がまだ消えないうちに、ライルが私を訪ねてきた。


婚約者になったのだ、来てくれて嬉しかった。本当は私も会いたかった。



しかし、今彼の前には出れない。


今日の私のドレスは首元がしっかりと見えるもので髪もアップにされていた。


兄はライルが来る事が判っていたのかもしれない。

首元を隠す物は何一つなく、私は陰から姿を見ることになった。

自分で髪を下ろして…と思ったが侍女が私を監視している。


すぐそこにライルがいるのに…



ジェフリーが優しい兄の顔でライルに告げた。


「すまないね、せっかく来てくれたのにキャロルは具合が悪いと休んでいるんだ」


「いえ、突然来て申し訳ありません、婚約を受けてもらえ嬉しくて、思わず足を運んでしまいました」


ライルは何も疑うことなくジェフリーに話す。

それを受け、ジェフリーは優しげな微笑みを返した。


「しかし、ジェフリー様は本当に男性とは思えない程の美しさですね、キャロルは可愛らしい感じで…二人はあまり似ていない様な気がしますが…」


ジェフリーが、何か含むような笑い顔をする。


「はは…皆美しいと言ってくれるけれどそんな事はないよ…それから、私は養子なんだ、キャロルとは従兄弟になるんだ」

「そうでしたか」


「ああ、だから私もキャロルと本当なら結婚出来たけどね」


そう言ったジェフリーの目は鋭くライルを捉えていた。

ライルは一瞬目を見開いて、それからジェフリーの視線を受け止めた。




□□□□




 私は帰るライルを部屋の窓から見ていた。

馬車に乗り込む時、彼が不意にコチラを見上げた。下を覗いている私と目が合った。

 私に気付いた彼は、太陽のような笑顔を向け手を振ると、馬車に乗り行ってしまった。


 ジェフリーは私達を会わせないことで引き離そうと思ったのかもしれない。

けれど、それは逆効果だった。




□□□□




「どうして?キャロルは私が嫌いになったの?」

「そうじゃないの、もう私は子供ではないわ自分の意志で決めてみたいの」


髪型も、ドレスも自分で選びたい、そう言っただけなのに、私はジェフリーから壁に押し付けられている。


「ジェフリー様、どうしてダメなの?」

「キャロルこそ急に何故そんなことを言うようになった?」


変わらず優しい口調で話す兄の瞳は底の無い湖のようだ。


「ライルのせいか…彼に会ってからキャロルは変わった」

「ライルは関係ないわ、だって私達まだ一度しか会ってないのよ?」

「ライル…まだ一度しか会っていない相手をそう親しく呼ぶんだね」


その唇で、と言いながら兄は私の唇に指を当てた。

そんな兄に怯える目を向けた私に気づくと


「…キャロルに嫌われたくは無いからね、これからは好きにするといい」

と諦めの含まれた声で言ってジェフリーは私の部屋から出て行った。



□□□□



 それから、ジェフリーは変わった。

私は兄と一緒にいることもなくなり、侍女に監視されることもなくなった。

私が選んで着たドレスを「似合うよ」と言ってくれた。

お風呂も「もう、キャロルは子どもではないものね…」そう言って一人で入ることを許してくれた。


食事も家族で食べるようになった。

ああ、ただ子供扱いされていただけだったのだ、と私は安堵した。



 婚約者となったライルともよく会うようになり、会うたびに私は彼を好きになっていった。

彼といると時が経つのが早く感じる。


ジェフリーもライルと時折楽しそうに話をしている事があり二人の仲も良いようだった。


ひと月、半年、あっという間に一年が過ぎていく。


「キャロル、そろそろ公爵家に住まないか?」


それは私が来月で16歳になろうという日だった。

ライルは恥ずかしそうな顔をして私に言った。


「もう、結婚してもいいと思うんだ、君も来月には16歳だし…どうかな?」


「本当?うれしい!」



その日、私は両親と兄にこの話を伝えた。

「そう、それは良かったね、では急いで支度をしないといけないね」

ジェフリーが微笑みながらそう言えば両親も笑って頷いた。


「支度?」

「ああ、キャロルのだよ」


「結婚となると色々準備しなければならないのよ」

お母様が私に教えてくれた。


その夜、お風呂から出て髪を梳いているとジェフリーが部屋へ来た。


「もうすぐいなくなるんだね、以前の様に髪を梳かせてくれないか」

寂しそうに話すジェフリーに私は櫛を手渡した。

「ジェフリー様に髪を梳いてもらえるなんて私は幸せ者ね、たくさんの人々が、あなたに触れて貰いたくてこの家に来るのに……妹の特権だわ」


ふふ…と笑みが溢れた。


一年前は、兄を怖いと思った日もあったのに…


 そう考えている間、ジェフリーはゆっくりと髪を梳いていった。

彼には浄化の力があるという。その手に触れたいと何人もの人が我が家を訪れる。

そんな兄に触れてもらえているのだと思うと不思議な気持ちになった。


ジェフリーは右手で櫛を持ち、左手はキャロルの髪に指を通す。


指が首に触れた瞬間、首に残されたあの口づけの痕のことを思い出してしまい、体が粟立った。


「どうしたの?」


鏡越しにジェフリーが聞いてくる。

私は何でもないと首を振った。


私の真横にジェフリーの顔が並ぶ。まるで絵画の神の様に美しい兄。


「私ではダメかな」

「…ジェフリー様?」


何を言っているのかしら?

ジェフリーの瞳は鏡に映る私の瞳を捉えていた。


「私のキャロル、ごめんね、ライルには渡せないんだよ」


神のように見えた顔に影ができると、私はそこで気を失った。




目が覚めると知らない部屋にいた。


赤い絨毯の敷き詰められたテーブルと椅子が2脚。

窓からは森が見える。


天蓋付きのベッドがあり、私はそこに寝ていた。


いつの間にか着替えさせられ着ていたのは、真っ白のまるでウエディングドレスの様な…


確かさっきまで、私は自分の部屋にいたはず


「目が覚めたようだね、水を持ってきたよ」


音もなく扉が開き、ジェフリーが入ってくる。


「ジェフリー様」


「ジェフリーでいいよ、私のキャロル」

「あの、ここは…」


ジェフリーは私に水の入ったグラスを渡そうとした。


「い、いらないわ」

「飲まないとダメだよ…ああ、私が飲ませてあげようか?」


ジェフリーが、一年前と同じ妖艶な顔で微笑む。



兄は何も変わっていなかったのだ…

理解した途端、体が震えた。


「自分で飲みます、ありがとうございます」


私が水を飲み干すと、彼は満足げにグラスを持つ私の手を上から握りながら、輝くような微笑みを私に向けた。


「これからは永遠にここで暮らそう、私が幸せにするからね」


「私はライルと結婚するのよ? 何を言って…」


「キャロルは、ライルがこの世界から消えてもいいのかな」


「何を…ジェフリー…」

「私には簡単な事だよ」


微笑むを浮かべたまま、恐ろしい事を平然と話すジェフリー。

……兄になら本当に出来てしまいそうだ。



フッと微笑むと、ジェフリーは私の髪を一房持ち口付けた。


「綺麗だ、私の花嫁」


また後で来るよ、と言って部屋を出て行った。


何? 花嫁? ジェフリーは私を花嫁にするというの?


ライルと結婚することは許されないの?




ああ……神さま……

私を助けて……ここから出して……




それから幾日が過ぎたのか……



同じ毎日が繰り返される。

変わるのは天気ぐらい……

だんだん私は今がいつなのか分からなくなってきた。



何度神に祈っても、誰の助けも来なかった


この部屋に来るのは掃除のメイドと、ジェフリーだけ。

毎度の食事はジェフリーが運ぶ。

そのまま私が食べるのを嬉しそうに見ている。




「ライル……助けて……」


小さな声が私の口から溢れた時、側にいたジェフリーが呆れたように笑って言った。


「キャロル、あれからどれくらいの時が過ぎたのか分からないんだね…… ライルはこの間、他の女性と結婚したんだ」

「他の人と……結婚?」

「あれから2年が過ぎているからね」

「2年も…?」


驚く私に、ジェフリーは優しく髪を撫でながら話をする。


「たった2年であっさりと君を諦め、他の女性と結婚するような男に助けを求めてどうするのかな?」


そんな……


どうして?



「ねぇキャロル、神さまに祈っても願いは届かなかった?」

「神……?」

「どうしてか分からない?……君を捉えているのがその神だからだよ」



 怖い様な笑みを浮かべたジェフリーが、不思議な声で私に話す。



『私の父は皆の言う『神』だ。


彼は美しかった私の母の純潔を奪い、私を宿した。


分かるだろう?何故、皆が私を求めるか…

何故私を崇めるのか…


手に入れようとするのか…


先の世を見る力も、浄化の力も神と同じだと、キャロルは気が付かなかった?』


私は首を横に振った。


『あなたは本当にかわいいね…』



「だって、私は…いつも神に祈って…」


『そうだね、だから私が助けてあげるよ』



大丈夫、私はキャロルを愛しているから


(わたし)に愛された君は幸せだ…



美しい兄は自らを神だと言って微笑んだ


淡い金の髪がフワリと揺れて…

澄んだ湖のような碧瞳が私を捉える…





……私は何に祈ればいいの……?



誰もここから私を助けてはくれない


神に愛されてしまった私を

……皆は幸せだと信じて疑わない





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