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2人の初恋   作者: 朧霧
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取り調べ

 俺は事件の翌朝、仕事に行き捕縛した奴らの取り調べをする許可をもらいに殿下の執務室へ行く。

自分の任務外のことなので警吏任せるのが当然だが、今回に限っては自らの希望で殿下に願い出る。


「殿下、おはようございます。申し訳ございませんが警吏の詰所に外出してもよろしいでしょうか?」


「ん? 何かあったのか?」


「昨日、町で悪人達を捕縛して詰所の牢に入れてあります。とても気になることがあり取り調べをしたいので許可をいただけませんでしょうか?」


「警吏に任せればいいのにそんなに重要なの?」


「まだ分かりませんが気になる発言があり私は事件の真実が知りたいのです」


「許可するから後で教えてくれ。フィルが私に頼みごとをするなんて珍しいし面白そうだからね。今日は特に執務以外は予定がないから今から行ってきて良いぞ」


「ありがとうございます。面白いことではないのですが…。失礼いたします」


詰所の牢に着くと挑戦的な表情をしてあざ笑いながら男達が俺を見る。

苛立つ気持ちを抑えて最初は娘に1番手荒いことをしていた男から1人ずつ順番に呼び出し取り調べをする。


「お前達はなぜあの花屋の娘を狙ったんだ?」


「たまたま目についただけだからあの女にした意味はないぜ」


「昼間で人目も多いときに騒ぎを起こしてその言い分が通ると思ってるのか?」


「何がだよ、意味はないってはっきり言ってんだろ?」


「それなら14日しか覚えてないとは何のことだ? 説明しろ」


「そ、そんなこと言ってねぇよ。お前の耳が悪くてそう聞こえただけじゃねぇの」


このままでは膠着状態で話が進まないので怒りを露わにし口調も態度も一変して俺を見下していた男を脅しつけることにした。


「まだ誤魔化すつもりか。いいことを教えてやるとか可愛がってやるとか言っていたよな?俺は一部始終聞いているから正直に話さないと拷問してでも喋らすぞ。さっさと言え」


「……た、頼まれたんだよ」


「誰に頼まれた? そういえばお前、俺に暴言吐いて殴りかかったよな? 貴族に暴行しようした罪と不敬罪も加えてやろうか?」


「わかったよ、話すよ話す。依頼主は知らねぇ。俺達は町をふらついてたら高い報酬がもらえる仕事があると呼び止められて話を聞いたんだ」


「名前は? どんな奴だった?」


「名前は聞いてないが顔は見ればわかる。身なりが良かったから貴族みたいだったぜ」


「それでお前はこの件に関して証言をしろと言ったらできるか? まぁ、拒否したら罪をたくさん付け加えるだけだからどちらにしても逃げ道はないよなぁ?」


「分かった、証言するから助けてくれ。俺達は巻き込まれただけなんだよ」


「お前、嘘を言ってたら決して許せないから重罪にしてやるぞ。これから他の2人にも聞くからな」


「言ってねぇよ…」


「それと14日しか覚えてないとかはどういう意味か説明しろ」


「俺達もその意味はわからないけど、依頼してきた奴が女は14日しか顔は覚えていられないから俺達の好きに遊んでいいと言った。そのあとは必ず指示された場所に連れてこいと言われて金をもらっただけだ」


「顔を忘れるまでが14日…」


「そんなことあるわけねぇと最初は言ったけど、そいつが絶対大丈夫と言うんだよ」


「あんな昼間で人目も多いときに狙った理由は?」


「女が店と家の往復ばかりでいつも父親がそばにいたから一人になるときを狙っていたんだよ」


「本当に最初からあの娘のことは知らなかったんだな?」


「そうだよ、依頼主から花屋の娘でエミルという女と指示されたからだ」


「それで連れてこいと指示された場所とは?」


「依頼を受けたときに街の外れにある廃屋の一軒家に案内された。その家に5日後までに連れていけば追加で報酬をもらえることになっていたから」

 

「昨日は依頼を受けてから何日目で5日後の意味は?」


「依頼されてから4日目。5日後の意味は聞いてないし知らねぇが俺達が逃げないようにするために言ったのかもな」


「お前達はあの娘を辱めると言ってたよな。期日が近くなってきたから焦ったのか?」

  

「ま、まぁな。どうせあの女は娼館に売ったり金持ちの玩具にする予定だったんだろ? 子供みたいで好みじゃなかったが好きにしていいと言われたら楽しまないと損だからな。でもその前にお前が来たから何もしてないぜ」


「何もしてない? お前達が腕を引っ張って転んだ時にあの娘が足に怪我したのを俺が確認している。あの娘に拉致未遂と暴行罪、それに貴族への不敬罪と暴行しようとした罪。お前達、証言しないと罪が重くて大変だなぁ」


「分かってるよ。ちゃんと証言する」


首謀者の男の話は信用できる話ではなかったので残りの2人を取り調べしたが同じような内容であった。


男達の話を聞いても依頼主はなぜ娘を襲わせたのか目的が全く分からない。ただ一つだけ、娘が記憶を失うことの情報は得た。


しかし、記憶を失う人のことは聞いたことがあるが、あの娘にそんなことがあるのだろうか…。


俺は花屋へ行き父親に話しかけてみるがどうもこの父親は俺に対して敵意のようなものを感じる。


「話とは何だ?」


「えぇ、あの男達の取り調べが終わりましたが理解できないことがありましたのでこちらに伺いました」


「何が理解出来ないんだ。娘を助けたなら襲ったのは奴らだとはっきりわかるだろ? エミルは言い寄られただけであの男達とは何も関係ない」


「エミルさんがあの男達と関係がないのは分かっていますが狙われたのはエミルさんです」


「どういうことだ!」


「あの男達は誰かにエミルさんを連れ去るように金で雇われたので襲われたのです。依頼主とは面識はなかったそうで最初は依頼を拒否したらしいのですが、エミルさんの記憶を失うことを知り依頼を受けたそうです。それはどういうことでしょうか?」


「なぜだ…エミルの症状をそんな奴らに」


「お父さん、これはエミルさんがこれから危ない目に遭わないようにするためです。私に教えてもらえませんか?」


「俺はお前ら貴族や警吏の奴は信用できねぇ。今までもそうだったからお前に何ができる」


「俺はエミルさんが狙われるのをこのまま黙って見ていられない。お願いです、教えてください」


「チッ……エミルのためでもあるから仕方ないができるだけ話を広げるな。知っているのは親しい者だけだしこんなことになるのを恐れて秘密にしているんだ」


こうしてお父さんは嫌そうな顔をしながらもエミルさんの秘密を俺に話してくれた。まさか、本当の話だと思わなかったがあの男達の言っている内容と同じだった。


俺は王宮の殿下の元に急いで戻る。


「フィルお帰り。それで何か分かったのか?」


「はい、ありがとうございました。取り調べは終わりましたが理解できないことありましたので花屋へ行って参りました」


「襲われた娘さんの花屋に? 何か問題なのか?」


「取り調べした結果、どうやらあの男達は金で雇われて娘さんが一人になったのを狙い日中堂々と襲ったらしいのです」


「それは無謀だね。でも理由は何だ?」


「それは…」


「私にも言えないこと?」


「申し訳ございません。父親に口外しない約束をしたので躊躇しましたが事件ですし全て解決するには殿下にお力添えをいただきたいです」


こうして殿下へエミルさんの記憶に関する話をした。



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