桜落ちる前に。
ひらひらまう桜の花に私に届くのは管を伝う何かの水だけ。
喉は乾き、空腹だけが私の感覚。
そんな私の唯一の楽しみは同じ時間にくるあなたの声だけ。
答えることはできない。
そんな私に飽きずにいつも笑顔のあなた。
その時間だけが乾きも空腹も忘れられた。
ある日、いつも通りの時間にあなたは来なかった。
何か用事があるのかなと自分を説得した。
でも、私は私の変化に気づいた。
乾きもなく、空腹もない。
そうか。
私は散ってしまったのか。
あなたの声が私の居場所だった。
桜の落ちる前に。