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リース国へ……どんどん状況ががが……

「サーボ様ぁ、本当によろしいんですかぁ?」


「良いんだシヨちゃん、早く二つ隣のリース国に行こうじゃないか……」


「僕としてはあのプリスとかいうやつを仕留めてから……」


「もう止めて……これ以上騒ぎを大きくしないでぇ……」


「しかしサーボ様……王女様の婚約者として大々的に布告が出される以上に大きな騒ぎになど……」


「あれはプリスちゃんが勝手にやったことなのぉっ!?」


 人力車で一気にバンニ国から距離を取る俺たち。


 追いかけてきていた兵士たちの姿は既に影も形も見えなくなっている。


(どうしてこうなるんだぁ……うぅ……)


 あの後もプリスちゃんは俺にしがみ付いて離れようとしなかった。


 父親である国王が王女にあるまじきことだと叱咤しても、むしろ俺と結婚すれば問題ないとまで言い出して反抗するほどだった。


 俺の弟子たちに追われたのはそれほどの恐怖体験だったのだろう。


 そんなところに三弟子が駆けつけてきたからまた大変な騒ぎになった。


 結局俺はいつも通り切り札を使って、強引にその場を切り抜け三弟子と共に王都バンニを後にした。


 しかしプリスちゃんは王国中に俺との婚約を発表すると同時に、俺たちを確保するよう布告を出したのだ。


(だけど追いかけてきた兵士たち、どいつもこいつも殺気立ってたし……俺を完全に王女を誑かし国を惑わす極悪人だと思ってるよなぁ……うぅ……)


 お陰で領内で魔王軍を探していた俺たちはあっさりと見つかり、抵抗しようとした弟子たちを抑えてこうして別の国へと逃げ出しているのだった。


 すぐ隣のツメヨ国では何のはずみで見つかるかわからない、だからこそ二つ先のリース国を目指しているのだ。


「しかし、本当にイショサ……サーボ帝国には戻らなくていいのですか?」


「いいのぉ……いいに決まってるのぉ……うぅ……」


(イショサ国も隣だし……何よりサーボ帝国とか言ってるあんな場所にはもう戻りたくねぇよぉ……)


「まあカーマさんとセーヌさんになら任せておいても平気ですよぉ……それにぃあの二人のことだからきっとぉ……うふふ……」


「シヨちゃん、その怪しい笑顔は何なの?」


「秘密ですぅ~、それより魔王軍について何ですけどぉ……やっぱり上の奴を倒したら部下は全滅するみたいですねぇ」


「僕が飛ばされた村って何か凄い数の魔物に襲われかけてたけど、ある瞬間に全員消えちゃったって……サーボ様がヴァンヴァル様? とか言うの倒したから消えちゃったんじゃないかなぁ?」


「……なるほどねぇ」


(確かにあの魔物はじわじわと攻める予定を変更したとか言ってた……本当はそうやって部下と共同して周りの村から襲っていく気だったのかな?)


 しかしこれは好都合だ。


 俺たちの戦力なら大抵の魔物は叩きのめせる。


 だからチャチャっと上の奴を見据えてそいつを叩きのめしてやれば話は早い。


(この大陸の東西南北の端の小島にいるとかいう幹部を倒してしまえばそれ以下は消える……いっその事もう叩きに行ってやろうか?)


 今の俺たちならできなくはないだろう、移動手段だってスキルをフルに活用すればどうにでもなる。


 俺はシヨちゃんにあの魔物から聞き出した情報を伝え、判断を仰ぐことにした。


「うぅん……その話が本当なら魔王軍のシステムと合わせて考えれば確かに乗り込んだほうが早いのですけどぉ……不安要素がいくつかありますぅ」


「不安要素とは?」


「まず魔物が余りにもあっさりと情報を洩らしていることですぅ……前に聞いた方は拷問の末にようやく白状しましたからぁ……罠の疑いがあるのですよぉ」


(確かにわざとらしいぐらい情報をばらしてたもんなぁ……演技には見えなかったけど……)


「もう一つがぁ魔王そのものがどこにいるのかわからない点ですぅ……もしも幹部以下を全滅させて情報を入手できなくなった状態で魔王が暴れ出したらその場所を突き止めるまでに結構な被害が出ちゃうと思うんですよぉ」


 言われてみればその通りだ。


(最初に聞いておけばよかったなぁ……あの場にシヨちゃんが居てくれれば話は早かったんだけどなぁ……)


「ですからぁ、当面はこうしてこの大陸の……その後は他の大陸を見て回って魔王軍の進行を食い止めつつ情報収集をして魔王の居場所がわかり次第乗り込んだほうがいいと思うんですぅ」


「なるほどなぁ……」


(もう俺よりこいつのほうがこの手の能力は高いからなぁ……素直に従っておこう……)


 俺より賢く見事な状況判断を下せるシヨちゃんは本当に頼りになる……暴走しなければ。


 同じく俺より早く動けて、観察力に優れるカノちゃんも頼りになる……暴走しなければだ。


「……カノもシヨも見事なものだ、それに対して私ときたら何の役にも立てず情けない限りだ」


 人力車を引くテキナさんがため息をついた。


(テキナさんはなぁ……たった二年修業しただけで純粋な戦闘能力なら俺と互角って言う規格外の化け物なんだけどなぁ)


 何せ今のところ魔王軍はどいつもこいつも雑魚ばかり……はっきり言って俺やテキナさんクラスの強さを発揮する程の相手は居ないのだ。


 だからこそ能力で優れていながら役に立てないという心地になってしまうのだろう。


「いやいやテキナさんはとても役に立ってるよっ!! だってテキナさんが来てからようやく僕はサーボ様に一撃与えられるようになったんだもんっ!!」


「そうですよぉ、テキナさんはシヨのことも鍛えてくれたしとっても役に立ってますよぉ」


「ありがとう二人とも、そう言ってくれると助かる」


 何だかんだで一緒に修行してきたこの三人の絆は強いようだ。


「大体テキナさんは僕のサーボ様の初めてを譲ってくれるって言うし協力してくれるし今だってこうして人力車を引っ張ってくれるしこれなら僕もギリギリ許せちゃうよサーボ様を共有できそうだよだけど僕が最初だからね僕が最初最初最初……」


「私にはこれぐらいしかできることがないのだ……そ、それに私などがサーボ様と……い、いやむしろこの至らなさを折檻していただけたら……いっその事首輪をつけて連れ回してくだされば……」


「テキナさんはぁ年齢差にも拘らずシヨの意見を尊重してくれるから好きですよぉ、それにぃサーボ様と一緒に調教したら喜んでくれそうですしぃ……カノさんに一番は譲るとしても二番目はシヨと一緒に三人でSMと行きましょうねぇ~」


「し、シヨよそのような魅力的……い、いやいや破廉恥なことを言ってはいけない……その気になって……サーボ様と……ああ、サーボ様……このような愚かな妄想をする私に罰を……」


(見えない聞こえない見えない聞こえない……)


 嫌な絆を見せつけられそうで、俺は目と耳を塞ぐためにムートン君の羊毛に顔を押し付けた。


「めぇええ……」


「あぁムートン君……君のつぶらな瞳を見ているととても心が安らぐよぉ……」


「サーボ様ぁ、僕の目もつぶらでキュートだよぉ?」


(お前の目玉には狂気しか浮かんでねぇよ……この危険人物がぁっ!!)


 戯言をほざくカノちゃんを無視して俺はムートン君に頭を押し付け続けた。


「ねぇ、サーボ様って……っ!?」


「ど、どうしましたカノさんっ!? また何か感じましたかっ!?」


「こっちの方角の先……地面の下で何かが暴れてるっ!?」


「地面の下……サンドワームかもしれませんっ!!」


 シヨちゃん曰く毒を放つ強力な魔物らしい。


「シヨ、サーボ様どうしますかっ!?」


(て、テキナさん……どうしてシヨちゃんに先に聞くのよぉ……まあ正しいけどさぁ……)


「当然そっちに向かってくださいっ!!」


「了解だっ!!」


 即座に方向を変えてそちらに全力で移動を開始するテキナさん。


 そして辿り着いた場所は、リース国の領土の境界線ギリギリの場所だった。


「なぁっ!? お、お前らは……勇者サーボ一行っ!?」


「ギギィイーーーーッ!?」


 そこには黒づくめのローブをまとった魔物の親玉が五体と、巨大なワームのような魔物がまとまって行動していた。


「お前たちは魔王軍だなっ!! こんなところで何を……」


「テキナさんっ!! 構いません、全力で攻撃してくださいっ!!」


「はぁあああっ!! 聖輝剣(シャイニングブレード)っ!!」


「ちょっ!?」


 俺が話しかけようとしたところで、シヨちゃんの指示が飛び……即座にテキナさんが魔法剣で切りかかった。


 一瞬で眩しい光に飲み込まれ、断末魔すら残さずに消滅する魔王軍。


「ふぅ……やりましたよサーボ様っ!!」


「し、シヨちゃんっ!? な、何で攻撃をっ!?」


「そうだよぉ、尋問もせずに倒しちゃってよかったのシヨちゃん?」


「あのサンドワームは毒がありますしぃ、地面に潜って移動されたら追いかけるのは面倒ですよぉ……それにあの魔物は勇者の里を襲った中に混じってたやつに似てますけどかなり大型でしたぁ……恐らくサンドワームのボスですよぉ」


(ま、混じってたっけ? 一瞬で倒したから全く覚えてねぇよ……)


「サンドワームに地面の下から暴れられたら私たちはともかく一般人には大打撃ですからねぇ、その親玉は逃がさずに倒しておきたかったんですよぉ……なぁに魔王軍は最悪その四大幹部とやらから情報を聞き出せばいいんですよぉ」


「そ、それはそう……なのかなぁ?」


 何となくシヨちゃんが行ってることは正しい気がしてしまう。


「それよりサーボ様……何か宝箱が落ちてるんだけど?」


「た、宝箱ぉっ!?」


 カノちゃんに言われて魔物たちが居たところを見ると、確かに宝箱が転がっている。


「へぇ……魔王軍が持ってたんですからひょっとしたらお宝が……命令書とか入ってたりしませんかねぇ」


「けど鍵がかかってるみたいだよ?」


「……カノちゃんなら開けれるんじゃないの?」


「いや僕は勇者だからね……そんな盗賊みたいな真似したくないんだけどなぁ」


(よく言うよ……勇者なんかどうでもいいってさんざん言ってたじゃねぇかよ……)


 まあ無理強いしても仕方がない、何よりその気になれば開ける方法はいくらでもあるのだ。


「とりあえず開けてみるよ、開錠魔法(アンロック)


 魔法で強引に鍵を解除して蓋を開く。


 そして中から……女の子が出てきた。


「…………」


 無言で閉じて深呼吸する俺。


(つ、疲れてるのか俺……こんなところに女の子が入ってるわけ……俺の胸を高鳴らせる女の子がいるわけないじゃないか……)


 もう一度開く……やっぱり可愛らしい女の子が収まっている。


「……どうなってんだよおいっ!?」


 思わず叫んでしまった。


「ひゃぁっ!? な、なんだなんだっ!?」


 当然その大声を聞いた彼女は……鱗と尻尾をはやした少女は目を覚まし周りを見回し始めた。


(やっぱりなんか……他の子たちと同じだ……)


「こ、ここはぁ……お、お前たちは誰だっ!?」


「どうも初めまして、俺は勇者サーボと……」


「ゆ、勇者ぁっ!? そ、そんな勇者がこのタシュ様に何の用なんだっ!?」


「い、いや用と言うか……」


「貴方がぁ、魔王軍に捕まってるのを助けたんですよぉ……あなたはドラゴニュートですよねぇ?」


(ドラゴニュート……確か龍族を統べるとかいうすさまじく強い種族……だよなぁ?)


「あ、ああそうだっ!! 私こそ龍族の族長の娘であるっ!!」


「その龍族の族長さんが何で魔王軍に囚われていたんですかぁ?」


「と、囚われていたわけではないっ!! わ、私はあいつらをり、利用してやって……その……」


 何やらもごもごと言いずらそうにしているタシュ様。


「なるほどぉ、その辺りのこと詳しく聞きたいですねぇ……」


「い、いやそれは……そ、それよりも私は魔王軍の親玉を倒しに行かなければ……どこにいるか知らないかっ!?」


「それならもう全滅させたよ」


「っ!?」


 俺たちの言葉に驚くタシュ様。


(他にもいる可能性が……居たらカノちゃんが気づかないわけないかぁ……)


「これでお話しするじかんはありますよねぇ……じゃぁ、シヨたちの質問にちゃんと答えてぇ……」


「そ、そうかっ!! 代わりに倒してくれたこと感謝するっ!! で、では失礼するぞっ!!」


 シヨちゃんの問いかけを無視して飛び立とうとするタシュ様。


「だぁめぇでぇすぅ……カノさんっ!!」


「はいはぁい……これでいい?」


 当然そんなことが許されるはずもなく、即座にカノちゃんに組み敷かれた。


「な、なにをするっ!? は、離せっ!!」


「質問にちゃんと答えたら離してあげてもいいですよぉ、じゃあまずは何でぇ捕まっていたのかぁ……」


「ど、どうでもいいだろぅっ!! と、とにかく離せっ!!」


 どうしても答えたくないらしく、必死に暴れるタシュ様……なんだか彼女が苦しんでいる姿を見ると胸が痛む。


「し、シヨちゃん……お手柔らかにね」


「サーボ様は甘々ですよぉ、こういう輩はぁ……ちゃぁんと調教しないとぉ……うふふ、シヨ頑張っちゃいますよぉ~」


「っ!?」


 そう言って狂気の笑みを浮かべて鞭を取り出すシヨちゃん。


「ちょ、ちょっとシヨちゃんっ!? 仮にも異種族の長の娘に何をするつもりなのっ!?」


「誰が相手でも関係ないですよぉ……それにこの子が魔王軍じゃないって保証があるわけじゃないし……安心してくださぁい、シロなら命まで奪いませんよぉ~」


「ひ、ひぃっ!? は、離せ離せぇええっ!!」


「もぉうるさいなぁ……ほらほら暴れないのぉ……」


 必死で暴れるタシュ様を完全に抑え込むカノちゃん……もう涙目だ。


 とても見ていられないが、俺が何を言ったところでもう彼女たちは止まらないだろう。


(……しかたない、いつもの奴やるかぁ)


「……時間停止(タイムストップ)


「なぁっ!?」


 時間を止めてその隙にカノちゃんの手からタシュ様を助け出し、とにかく安全そうな場所を探して移動する。


(外交問題……というか異種族間で争いごとになったらシャレにならんからなぁ……)


 しかし中々見つからない……というかどこに逃げてもカノちゃんなら追いついてきてしまいそうな気がする。


 せめてこの子の護衛になりそうなやつがいる場所があればと思って探して回ると、遠くにワイバーンの群れが見えた。


(ま、魔王軍っ!? い、いやでも中心に居るこいつは……ドラゴニュートっ!?)


 そう言えばワイバーンは龍族の一員だ、なのに魔王軍に従っているのはどういうことなのだろうか。


 色々と疑問はあったが、とにかくこの子を避難させるのが先だと思い俺はその群れに近づいていくのだった。

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[一言] もうムートン君だけでは癒し要素が足りないw
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