カノちゃんと二番弟子
指導を続けて数年が過ぎた、13歳になったカノちゃんはとても成長していた……あらゆる面が。
「九百九十九、千……終わったよサーボ様っ!! さあ僕と模擬戦しようよっ!! 早くしようっ!!」
「分かってるから落ち着いて……」
「お、落ち着けないよぉっ!! だってサーボ様、僕が勝ったら何でも一つ言うこと聞いてくれるんでしょっ!?」
確かに模擬戦を始めてたばかりのころ、一度も勝てないカノちゃんのやる気が失われないようそんな約束をしたのは事実だ。
(だけどさぁ……手段を選ばずに襲い掛かってくるのは勘弁してほしい……)
どうもカノちゃんはどういう形でも俺に参ったと言わせれば良いと思い込んでいるようだ。
お陰で戦闘能力も上がってはいるが、それ以上に隠密行動等の能力が凄まじい勢いで向上している。
最近は接近を察知できないことも増えてきた……どうやらカノちゃんには天性の盗賊としての才能があったらしい。
そこに俺が的確に厳しく鍛え上げて身に着けさせた勇者としての基礎能力が乗っかった結果、文字通り化け物じみた動きを見せるようになっている。
(まだ直接的な戦闘能力は俺のほうが上だけど……もう攻撃が殆ど当たらねぇ……)
「精神を落ち着かせるのも大事な要素の一つだよ……まあ、とにかく始めよ……っ!?」
俺が言葉を言い切る前にカノちゃんの姿が消えた。
凄まじい速度で俺の死角に移動し続けているのか、透明になる魔法を使ったのか……あるいは別の何かか。
とにかく本気を出したカノちゃんは、もう俺の五感では捉えることができない。
(くそっ!! 隠れられないようわざわざ里の外にある視界の開けた草原まできたのに……どうなってんだよカノちゃんっ!?)
このまま奇襲されて急所を狙われたら後手に回らされる。
そして手数の差で押されたら俺でも敵うかわからない、だからこちらも本気で対抗する。
「我が魔力に従い壮大なる大空よ悪しき者への天罰を齎せ、『天雷撃』っ!!」
無詠唱で放てる魔法をわざと詠唱することで効果を相乗させる二重魔法、それを全力で放った。
俺を中心とした周囲一帯に凄まじい無数の雷光が降り注ぎ、大地を陥没させていく。
直撃すれば人間はおろか、大抵の魔物は消し炭すら残さず消滅するほどの威力だ。
しかし既に二重魔法を使えるようになっている今のカノちゃんなら、これが直撃しても死にはしないはずだ。
(むしろ当たってくれれば御の字だ……そもそもかすりすらしないだろうけど……)
カノちゃんのことだ、万一に備えて防御魔法をかけながらも俺の魔法を余裕で避けて攻撃の機会をうかがっているだろう。
だから俺も、避けられることを前提として魔法を放ったのだ。
(不定期に落ちているように見えて雷が降り注ぐ場所は決めてある……つまり向こうが避けながら攻撃できる角度も限定……そこだっ!?)
斜め後ろからほんのわずかな違和感を感じ取り、俺は剣を抜き放ちながら振り返った。
「はぁあああっ!!」
予想通りそこからカノちゃんが突っ込んできて、両手に持った二つのナイフで素早く切りかかってくる。
生まれつきの力の無さを克服するために、彼女は二刀流で手数を増やすことを選んだ……そしてそれはどうしようもなく正しかった。
剣で迎撃しようにも、向こうの手数のほうが多くてとても全ては防ぎきれない。
それでも何度か力の差を利用してナイフを叩き落としてやるが……即座にキャッチして攻撃につないでくるので全く動きが止まらないのだ。
(し、しかも的確に……首とか手首とか……心臓とか……重要な血管のある急所を狙ってきてやがるっ!?)
すぐに手当てすれば俺なら死なないだろうと踏んでいるようだ。
手加減なしの攻撃を繰り返すカノちゃん、やはり師弟というだけあって俺と思考が似通っているらしい。
ギリギリで致命傷にならないよう急所をかばうが、どんどん一方的に傷をつけられていく。
反撃しようにも向こうの攻撃が早すぎて隙が無さすぎる。
(や、ヤバい押し負ける……あれをやるしかないのかっ!?)
「今だぁあああっ!! 聖輝剣っ!! 十文字斬っ!!」
「なぁっ!?」
俺の劣勢を見て取ったカノちゃんが、駄目押しとばかりに魔法剣にスキルを上乗せした一撃を放ってくる。
(俺も同じ技で迎撃……くそ、速度が間に合わねぇっ!!)
やはり速さという点ではもはや俺では太刀打ちができない。
しかもここまで強化された一撃は普通の剣で受け止められる威力ではない。
だから俺も覚悟を決めて、裏技を使うことにする。
「聖なる意思の元に超常たる現象を我が身に齎せ、時間停止っ!!」
「っ!?」
俺の解き放ったオリジナルの魔法は、世界の動きを完全に止めて見せた。
時間を止めて自分だけが自由に動ける必殺の魔法、流石のカノちゃんもこれには対抗することができない。
「ふぅ……あ、アブねぇ……」
何とか窮地を脱した俺は呼吸を整えつつ、止まっているカノちゃんの武器を叩き落とす。
そしてしっかりと抑え込んでから、再び時間を動かし始めた。
「喰ら……あれっ!?」
「惜しかったねカノちゃん」
「さ、サーボ様どうやって僕の攻撃をっ!? ま、全く見えなかったよぉっ!!」
「まあ本気を出せばこんなものさ……」
ちょっと罪悪感がしないでもないが、気にせずにカノちゃんに見栄を張っておく。
「さ、流石サーボ様だぁ……僕より速く動けるなんて……もっともっと精進しないとなぁ……」
(止めてくれっ!! これ以上速くなったらもう敵わねぇよっ!!)
悲鳴を上げたいところだが、師としての立場がそれを許さない。
「今の時点でもカノちゃんは十分強いよ……余り無理してこれ以上強くなる必要はないと思うよ」
何とか笑顔を浮かべながら、やんわりと修行を止めるよう勧めることしかできない情けない俺。
(けど冗談抜きで……俺にアレを使わせる時点でこいつもう絶対勇者コンテストでぶっちぎりで優勝できるだろ……)
俺の最後の切り札、新しい魔法を作ることができるという最強の裏技。
それをもってしてようやく勝てるカノちゃんに適う相手がいるとは思えない。
「けどサーボ様だってこんなに強いのに魔王の復活に備えて修行してるよね? だったら僕だってもっと頑張っていざって時に備えておきたいんだ……だからさっきの動きもう一回見せてほしいなぁ……」
「あはは……まあ考えておくよ……」
(何度も見せられるか……ネタバレしたらこいつなら対策しかねないからなぁ……)
別に使うこと自体は問題がない、これほど反則的な技にも関わらず何のリスクもないのだから。
(初めて使った時は……寿命が削れるような……心臓が痛むような不安が付きまとったけど……そんなことなかったしなぁ……)
「えぇ~、見せてよぉ……僕もっともっと強くなってサーボ様がどれだけ凄い人だったのか里の奴らに思い知らせてやりたいんだからぁ~」
「もう十分思い知ってると思うよ……あれだけ派手に暴れたらさぁ……はぁ……」
どうもカノちゃんは俺の元に来るまでに色んな人から才能がないから鍛えるだけ無駄だと弟子入りを断られ続けていたらしい。
そんな中で俺が彼女を受け入れて、しかもそいつらの言を否定するようにどんどん強くなることができた。
お陰でカノちゃんの中で俺は凄まじい崇拝対象になっているらしく、少しでも俺への文句が聞こえるとすぐに叩きのめしに行くのだ。
(自分の修行を断った奴らはおろか、歴代の勇者コンテスト優勝者すら叩きのめしてるから恐ろしい……)
だからカノちゃんは見た目もかなり美しく育ったというのに、里の男たちからは恐れられていて距離を置かれている。
尤も本人は全く気にした様子がない。
恋愛沙汰に興味がないのか……心に決めた人でもいるのかそれはわからないが。
「もっともっと僕のサーボ様がどんだけ凄いか思い知らせてやりたいのぉ……僕だけのサーボ様だってわからせたいのぉ~」
こ、心に決めた人が居るのかどうかはわからない……わからないったらわからない。
「あ、あのねぇ……俺はカノちゃんのものじゃないんだけどぉ……」
「けど僕が勝ったら言うこときーてくれるんだよね? じゃあもう時間の問題だよきっとっ!!」
(そんな堂々と手籠めにする宣言しないでほしい……カノちゃんのことは嫌いじゃないけど……強引なのはいやぁ……)
何やら無理やり押し倒されることに抵抗がある……まるで十何人から同時に搾り取られた経験でもあるかのようにトラウマじみた思いがあるのだ。
(やっぱり次からは遠慮なく切り札使って行こう……絶対負けてたまるか……)
「あはは……まあとにかく今日はここまでにして帰ろうか?」
「えぇ~、もう少し修行しようよぉ~」
「休む時は休む、メリハリをつけて行動するのも大事なことだよ」
(もうこれ以上強くなるなお前っ!! シャレにならねぇんだよっ!!)
「はぁ~い、サーボ様がそう言うなら僕なんでも言うとおりにするよぉ~」
「じゃあお願いだから様付けは止めて……先生にしてよぉ……」
「それは駄目ぇ~、サーボ様のお願いでもそれは聞けないよぉ~」
(思いっきり嘘じゃねぇかよ……何が言う通りにするだお前……)
どうしてこう堂々と嘘をつけるのだろうか。
カノちゃんは勇者ではなく大盗賊を目指すべきだと本気で思う。
「はぁ……まあいいや、じゃあ帰ろう……」
「サーボ様ぁ、競争しようっ!! 僕が先に帰り着いたら何でも言うことを……」
「オーラ突きぃっ!!」
「あ、ず、ずるいっ!? 聖なる祈りに応え正しき者達に偉大なる祝福を齎し賜え、『聖祈昇威』っ!!」
全速力でスキルを放ち置いて行こうとするが、カノちゃんは二重魔法で身体能力を強化すると純粋な脚力で追いついてくる。
(と、というか抜かれるっ!? お、オーラ突きより速ぇっ!? マジでバケモンだこいつっ!?)
「サーボ様ぁ、オーラ突きじゃぁ一定の速度にしかならないよぉ……えへへ、これは僕の勝ちだねぇ」
「うぐぐ……聖なる意思の元に超常たる現象を我が身に齎せ、時間停止っ!!」
早速切り札を使い、何とか追い抜くことに成功する。
(もうこれ使わなきゃカノちゃんに勝てねぇ……どうなってんだよこれ……)
正直俺はこの里で……いや世界でも最強だと思っていた。
何故か生まれた時から普通の人間はおろか、勇者の里の奴らが束になっても敵わない能力があった。
まるで複数人分の才能がある人間が、生涯をかけて鍛え上げたかのような狂った身体能力だ。
その上で鍛えれば鍛えるほど普通に成長もしていき、おまけに二重魔法とスキルという独自の技を簡単に思いついた。
極め付きはこの切り札だ、どう考えてもこの俺に勝てる奴が居るなんて想像もできなかった。
それがこうも簡単に追い抜かれそうになるとは……いくら俺が指導しているとはいえ余りにも予想外だった。
(ひょっとして世界にはこれぐらいの才能の持ち主が……俺なんか歯牙にもかけない強さの奴がいるんじゃないか?)
あり得ないと思うが、カノちゃんを見ていると否定しきれないのが怖い。
そしてそんな奴が敵に回ったらと想定すると、俺はどうしてももっともっと強くならなければという気持ちになるのだった。
(まあ……俺とカノちゃんが協力すれば大丈夫だとは思うけど……とにかく今はこいつにだけは負けないよう努力しよう……)
そんなことを考えながら里に帰り着くと同時に時間停止の魔法を解除する。
「…………様ぁっ!! サーボ様ぁっ!?」
間髪入れずにカノちゃんもまた里に戻ってきた。
「お、おかえりカノちゃん……お、遅かったねぇ……あ、あはは……」
(あ、あの場所からどうやって数秒でっ!? 俺のオーラ突きなら一分はかかるぞっ!?)
「あ、あんな一瞬で追い抜いてくなんて……やっぱり本気を出したサーボ様は凄いやっ!! 僕感激しちゃうよっ!!」
俺が裏技のようなものを使っていることも知らず、純粋に褒めたたえてくれるカノちゃん。
やっぱりちょっぴり胸が痛む……それ以上にこいつの狂った身体能力に恐怖を感じてしまいそうだが。
「あ、あはは……とにかく今日はもう休……」
「さ、サーボさん……あ、あのちょっといいでしょうか……?」
背後から弱々しい、どこか怯え気味な少女の声が聞こえてくる。
「……何あんた、僕のサーボ様に何か用なの?」
「ひぅっ!? あ、あ、あ、あの……わ、わた……私その……」
俺が反応するより前にカノちゃんが全力で殺気を叩きつけていた。
俺に女性が話しかけようとするといつもこれだ、相手の年齢も何も関係なく全力でプレッシャーをかけて近づかせないようにしているのだ。
(まるで抜き身の刃だ……俺、育て方間違えたのかなぁ……)
一体どうしてこんな子になってしまったのか……俺への崇拝が行き過ぎて独占したくてたまらないらしい。
「カノちゃん、そんな怖がらせないの……それで何……っ!?」
カノちゃんを落ち着かせてから振り返って少女を見て、俺は再び強い衝撃に襲われた。
「あ、あの……わ、私シヨって……その、ま、魔力無くて……さ、サーボさんは……あの……」
拙い言葉をつなげて一生懸命意志を伝えようとするシヨちゃん。
その姿を見ていると、何やら心臓が騒めく。
(カノちゃんに会った時以来だ……どうなってんだ俺は?)
やはり訳が分からない、ただ二度目と言うことでまだ僅かに冷静さを保てている。
それでも少女から目を離せない。
「落ち着いて、大丈夫だから……ゆっくり話してごらん?」
「あ……は、はい……」
恐らくまだ年齢が二桁にも達していないであろう少女の前にかがみこみ視線を合わせて落ち着かせてあげる。
「何でサーボ様そんな女相手にするのずるいよおかしいよサーボ様は僕だけ見てればいいのに何でそんな子供を相手にするのサーボ様は僕を見てよサーボ様ねえ僕だって可愛い女の子だよサーボ様ほらこっちみてよサーボ様」
「ひぅっ!?」
「だ、大丈夫だから落ち着……」
「サーボ様どうして僕を見ないのサーボ様の目は僕を見るためにあるしサーボ様の耳は僕の言葉を聞くためにあってサーボ様の身体は僕を抱くためにあるのに何でそんな女を相手にするのおかしいよサーボ様ねぇサーボ様サーボ様サーボ様サーボ様……」
「……聖なる意思の元に超常たる現象を我が身に齎せ、時間停止」
(落ち着けるかぁああっ!? 怖すぎるだろうがぁああっ!?)
時間を止めてシヨちゃんを抱きかかえ、とりあえず里の外にある森林地帯にまで避難する。
流石のカノちゃんでも木々で覆い隠されているこの場所なら見つけるのに時間がかかるだろう。
「ひぅぅ……あ、あれ……こ、ここは?」
「ちょっと移動しただけだよ、今度こそ安心してお話してほしいな」
「は、はい……わ、私その……生まれつき魔力無くて……才能も無いから勇者コンテストは諦めろってみんな……だけどパパとママは頑張れっていうし……そ、そしたらサーボ様に教わった子は魔力がなかったのに魔法が使えるようになったって聞いて……私その……」
「シヨちゃんは魔法を使えるようになりたいのかい?」
「は、はいっ!! わ、私も魔法を使えるようになりたいですっ!! みんなのお役に立てるように……勇者コンテストに参加できるようになりたいですっ!!」
さっきまで詰まっていたのに俺の質問には、はっきりと答えたシヨちゃん。
「だけど魔法を使えるようになるにはとても苦しいことを耐えなきゃいけないんだ……死ぬほど痛くて苦しいことをだよ……そうまでして魔法を使いたいの?」
「か、覚悟してますっ!! 私、魔法を使えるようになるためなら何でもしますっ!!」
シヨちゃんは悲痛そうな表情で力強く頷いて見せた。
やはり魔法が使えなくて、周りに見下されていたのがよほど堪えていたのだろう。
(やっぱりこの里の教育方針はおかしい……こんな小さい子をここまで追い詰めるなんて間違ってるだろ……)
今までも感じていたことだ、やはりこのままではいけないと思う。
どうにかしたいという気持ちが強くなるが、その前にまずシヨちゃんをどうするか考えよう。
(個人的にはこの子も弟子にとって鍛えてあげたい……何でかそうしなきゃいけない気がする……)
しかし魔力を身に着けさせる方法を、こんな幼子にするのは流石に酷だ。
せめて本格的な修行を始められる程度に育ってからにしてあげたい。
「お、お願いします……ど、どうか見捨てないでください……」
だけど涙すら称えながら懇願するように俺を見つめてくるシヨちゃんに、逆らえるわけがなかった。
「……わかった、だけどとても痛くて辛い思いをすることになるけど……我慢するんだよ」
「わ、わかってます……わ、私魔法を使えるようになるためなら何でも……」
「じゃあ、まずは素振りを……」
「サーボ様サーボ様サーボ様サーボ様どこどこどこどこどここから匂いがする居るんでしょサーボ様何をしてるのサーボ様ねぇ僕を置いて何をするつもりなのサーボ様返事してよサーボ様サーボ様サーボ様……」
(嘘だろぉ……もうこの場所がバレたのかよ……)
俺の五感がやばい声を捕らえた……少し遅れてすさまじい速度で接近する何かの爆音が聞こえてきた。
「はぅっ!?」
咄嗟にシヨちゃんを抱きかかえて木の上へと飛び退く。
果たしてすぐにやってきたカノちゃんが、俺たちの下を素通りして……行かずにピタリと止まった。
そしてちょうど俺が飛び上がった所の地面を見ると、ゆっくりと上を見上げて……嗤った。
「みぃつけたぁ~」
「ひぃいいいっ!?」
血走らせた目を思いっきり見開いて、口は獲物を見つけた肉食獣のように綺麗な歯をむき出しにしている……ものすごく怖い。
余りの恐ろしさにシヨちゃんが悲鳴を上げて俺にしがみ付く。
「離れろぉおおおおっ!! サーボ様に抱き着いていいのはこの僕だけだぁああああっ!!」
「か、カノちゃんストップっ!!」
「サーボ様そこどいてぇええっ!! そいつ殺せないぃいいいいいっ!!」
「あ、あ、あ、あ、ああああああっ!?」
木の幹の側面を重力を無視して駆け上がってくるカノちゃん。
その様子からは理性は残って居るようには全く見えない……説得どころか言葉も聞いてくれそうにない。
(もう駄目だこいつ……シヨちゃんも限界だし……力づくで排除するしかねぇ……)
尤もここまで暴走しているカノちゃんに俺ごときの攻撃が通じるとは思えない……アレ以外は。
「……聖なる意思の元に敵意ある者を排除せよ、強制転移っ!!」
「サーボさっ!? な、なにこの輝き……じゃ、邪魔す……っ!?」
(い、今……俺の魔法を躱そうと……め、目の錯覚だな、うん……)
少しだけ抵抗されたように見えたが……気のせいということにしておこう。
とにかく俺の魔法でカノちゃんは遠くへと飛んでいった。
これで戻ってくるのに半日は……一時間は……数分は稼げるはずだ……多分。
「ふぅ……ごめんねシヨちゃん、騒がし……」
「ぅぅ……」
見れば腕の中にいるシヨちゃんは気絶していた……そりゃああんな化け物に直接殺意を叩きつけられれば未熟な少女が耐えられるはずもない。
おまけにストレスで気力も体力も消耗しきっているようだ。
(……今のうちに毒にしておくか)
この隙に俺は毒にする魔法をかけることで、あっさりとシヨちゃんに魔力を身に着けさせることに成功したのだった。
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