シヨちゃんの愉快な復興事業
王都バンニの復興事業が始まり、俺たちは毎日が大忙しだった。
「人が足りません、テキナさんひとっ走りして村から適当な人員を引っ張ってきてくださいっ!!」
「了解したっ!! 今日中に連れてくるぞっ!!」
テキナさんは輸送係として人力車で前に築いた要塞や別の国へと何往復もさせられている。
「カーマさん達は瓦礫処理は終わりましたかっ!? なら次は材木と石材の加工を行って人が着き次第、修繕に着工できるよう準備っ!!」
「は、ははぁっ!!」
カーマのチームは瓦礫処理及び住宅等の修繕に使用する資材集めに奔走している。
「セーヌさん、リストに挙げた魔物は集め終わりましたかっ!? じゃあ先に修繕した牧場へ放牧して調教を開始してくださいっ!!」
「わ、わかったよシヨちゃん」
セーヌのチームは治安改善の為に野生の魔物を駆逐しつつ、地域産業強化のため畜産農場の管理を任された。
「カノさん、城下及び城内の財産の徴収は終わりましたかっ!? そしたら資金に換金するために価値の計算を始めてくださいっ!!」
「え、えっとが、頑張るよっ!!」
カノちゃんは盗賊としての能力を生かし財政難を解消すべく崩壊した建造物から資金源を回収しつつ、帳簿にまとめたりしている。
「プリス様、遺族の確認作業ははかどってますかっ!? 生存者には優先的に土地を分配し生活保障しなければいけませんからねっ!!」
「は、はい……そ、それなりに……生存者も戻ってきて……」
プリス様は王宮内の住民票等と照らし合わせて遺族及び生存者の確認に必死だ。
「サーボ先生は私を抱っこして頭を撫でて移動の補助に専念してくださいねっ!! えへへ……ほらサボらないのっ!!」
「……職権乱用だと思いまーす」
俺はこの通り動く椅子としてシヨちゃんを抱きかかえて移動補佐を行っている。
(無能がばれないからいいんだけどさぁ……たまに他の皆と目が合うと睨みつけられるのが苦しい……辛い)
シヨちゃんの管理は見事なもので、あれだけ荒廃していた王国はだんだんと形を取り戻しつつある。
特に勇者達の特出した能力を適材適所で使い分けているのが効率をさらに増しているようだ。
「戻りました、シヨよ連れてきた職人たちは早速住宅地の改修に着工したぞっ!!」
「ご苦労様テキナさん、次はカノさんと一緒に周辺国へ向かって回収した財産の一部を換金してきてくださいっ!!」
「が、頑張るよっ!! できるだけ高額で買い取ってもらうからっ!!」
「カーマさん、職人さんたちの指示に従って修繕に必要な資材の調達を続けてくださいっ!!」
「わ、わかっているっ!!」
「セーヌさん魔物の家畜化が成功したら第一弾を移住者に振る舞って自ら育てたくなるよう価値を確認させてくださいっ!!」
「りょ、了解っ!!」
「プリス様、住宅の改修と同時に今期の税収は免除を周知して移民を募集っ!! 何ならよその国から引っ張ってくださいっ!!」
「こ、広報……活動……頑張ります……」
「サーボ先生、ほら食事の時間も勿体ない……私に食べさせてっ!!」
「職権乱用だと思いまーす」
人々を強引に引っ張りながらも常に仕事を与え決して休ませない恐ろしい仕切りだった。
「ああもうっ!! 資金も人も物もたりなぁいっ!! カノさん、ちょっと領内を見て回って鉱山見つけてきてっ!!」
「そ、そんな無茶なぁ……うぅ……行くけどぉ……」
「テキナさん、際どい衣装で他の国とか村から人をスカウトっ!! 誰でもいいからどんどん引っ張ってきてっ!!」
「し、シヨ……勘弁してください……い、今まで救った村から勧誘してくるから……」
「プリス様は人を取られた周りの国から文句をつけられないよう悲劇のヒロイン性をアピールしつつ勇者が関わっている事を宣伝っ!!」
「え、えっと……が、頑張ります……」
「カーマさん、工業地帯の開設を進めてくださいっ!! 魔王の脅威を大々的にアピールして武器防具産業で売り出しましょうっ!!」
「わ、わかりました」
「セーヌさん何を家畜に愛着をもってるんですかっ!! 子供を産ませるだけ産ませたら資源を回収して食料に変換するっ!!」
「うぅ……ご、ごめんよトッピィ……」
どんどんシヨちゃんが狂気じみてくる。
だけど本当に間違いが一つもない。
一か月で既に数字の上ではほぼ再興が完成したと言っていいだろう。
「こ、鉱山見つけたよぉ……き、金も銀も鉄も取れるやつぅ……す、すごい疲れたよぉ……」
「じゃあ二つ目を見つけてきてくださいね、この領土なら三つはあるはずですっ!!」
「し、シヨちゃんが鬼に見えるぅううっ!!」
「カーマさん、鉱石を採掘加工して武具の生産を開始っ!! あと金銀を貨幣に加工出来るぐらい精巧な設備を秘密裏に確保っ!!」
「は、犯罪じゃないよねシヨさん? シヨ様っ!?」
「テキナさんは商人さんと一緒に他国で武器の販売っ!! 勇者ご愛用だとアピールして工房名と共に売りまくってブランド化っ!!」
「わ、私はもう勇者ではないのだが……詐欺一歩手前ではないか……」
「セーヌさん、薬用劇物が取れる危険な魔物を調達して街から離れた場所で育成っ!! 急いでっ!!」
「こ、これって麻薬になるやつ……く、薬に使うんだよねシヨちゃん……シヨ様っ!?」
「プリス様は他国に復興完了と女王就任を宣言っ!! 通商と各種ギルドの再開っ!! 軍備拡張っ!!」
「あ、あの……シヨ様……ぐ、軍備拡張は……必要ないのでは……や、やりますけど……」
「サーボ先生っ!! 大陸の商業ギルドのトップ達と会談しますっ!! 移動中に寝ますから起こしてくださいねっ!!」
「はい、シヨ様バンザーイ」
もうシヨちゃんは危険状態に突入しつつある気がする。
二カ月目にして国庫がおかしいぐらい潤い始めた。
同時に諸外国から勧告がバンバン届いている。
人を引き抜くだけでなく、武具を安く流すと同時に金銀を加工した品で相手国の物資を買い叩いて物価まで操作しようとしているのだ。
はっきり言って大陸全体の経済を破壊しかけている気がする。
不平も不満も集まってくるのは当然だ。
今までは魔物の被害で同情を買い、勇者の意志とかでごまかしてそれらを強引に抑え込んできたがそろそろ限界だ。
だから万一に備えて軍備まで整え始めたのだろう。
このままいけば利益の為に戦争まで吹っ掛けかねない気がしてきた。
(世界相手に戦争する気かな……お前が魔王だよシヨちゃん……)
「カノさん、幾らでもある金銀を使ってイショサ国で土地の買収っ!! じわじわと領土を浸食してやりましょう!!」
「し、シヨちゃんもうやめようよぉ」
「テキナさん、ツメヨ国の動きが不振ですっ!! 相手の国内で魔物や野盗相手に暴れる振りをして恩を着せつつ被害を与えて黙らせましょうっ!!」
「し、シヨよ……やり過ぎだ、ここまでにしよう」
「カーマさん、どんどん土地を開発してくださいっ!! 貧しい村とか潰しちゃって住民は集合住宅街に強制移住させましょうっ!!」
「し、シヨ殿……拙者はもう付いていけぬ」
「セーヌさん、密造酒とお薬の精製は終わりましたかっ!? じゃあ複数名称を使い分けて規制が入る前に他国で売り払い内部から骨抜きにしましょうっ!!」
「し、シヨちゃん……か、勘弁してぇ」
「プリス様、住民のやる気を促すため罰則を強めましょうっ!! さらに諸外国に我が国の軍事力を見せつけるべく勇者を先頭にした軍事演習を行いましょうっ!!」
「し、シヨ様……もう……そろそろ……止めましょうよぉ……」
「あぁあああああっ!! サーボ先生誰も私の言うことを聞きませんっ!! クーデターですぅっ!! おかしいですよこんなのぉおおっ!!」
「おかしいのは君だよシヨちゃん……もういいから休もうよ」
「サーボ先生っ!! 信じてくださいっ!! 絶対に上手くいくんですぅっ!! 私たちがこの大陸だけでなく世界中の愚民を支配する未来が見えてるんですよぉおおおっ!!」
暴れ狂うシヨちゃんを皆で専用の寝室へ運び込みベッドへ寝かせて縛り上げた。
「ぐぅうううっ!! ええい、いくら私の身体を縛ろうと人の野心に終わりはありませんよぉおっ!! いずれ第二第三の私が現れて世界経済を手中に収めるのですぅうっ!!」
叫び声をあげるシヨちゃんを置いて俺たちは寝室のドアを封印するのだった。
「い、いいのかなぁこれで?」
「シヨちゃんはこのまま政治から切り離しておけばいずれ元に戻ると思う……思いたい」
(才能がありすぎるのも問題なんだなぁ……シヨちゃん真面目だから途中で止まれなかったんだろうなぁ)
「……これからどうなさいますかサーボ先生?」
「とりあえず、国外への政策は打ち切りで内政に専念……ブランド品はともかく内需産業をメインに切り替えたいねぇ」
(シヨちゃんと違って上手くやれるかはわからんが……まあ資金は馬鹿みたいに溜まったし税収管理さえ間違えなきゃ問題ないだろ)
「せ、拙者たちは今度こそ一度戻ろうと思う……ついでに国王へ頭を下げてまいるよ」
「はぁ……本当に会うのに気が重いんだが……」
「俺の弟子が本当にすみませんでした」
カーマとセーヌ及びその仲間に土下座する。
「サーボよ……第二の魔王を覚醒させるでないぞ」
「サーボ、俺お前のこと嫌いだけど……苦労してんだなぁ始めて同情したわ」
二人は珍しく俺に優しい口調で話しかけて立ち去って行った。
「はぁ……なんか怒涛の日々だったねぇ、僕下手したら魔王軍と戦うより疲れたよぉ」
カノちゃんは心底疲れ切ったように大広間の椅子に腰を下ろしている。
(そりゃあ、国内の全ての山を大盗賊の勘だけで調査させられてたもんなぁ……結果四つも鉱山見つけやがったけど)
「同じくだ……もう二度とあのような衣装で接待などしたくないものだ……」
テキナさんは恥ずかしそうに全身を真っ赤に染めながら大広間の円卓に寄りかかっている。
(最終的に水着みたいな鎧着てうねうね揺れる剣もって魔物退治して見せてたもんなぁ……物凄く人も金も動いたけどさぁ)
「とても……疲れました……政治って……こんなに大変なんですね……」
疲れ切った様子でプリス様も大広間の椅子に座り儚げに微笑んでいた。
(プリス様も心労を癒す間もなく一生懸命だったなぁ……お陰でやり手の女王として他国にも認められたけどな)
「さて、もう少し内政と外交を落ち着かせてシヨちゃんが元に戻ったら俺たちは村に帰るとしましょうか」
(俺は結局何の役にも立たなかった……しょせん無能には政治なんざできるはずがないからなぁ)
通商も再開し再興も終わった今、これ以上ここに留まる意味はあまりない。
それにこの場に居て仕事をやっていてはいずれ俺の無能さがばれてしまう。
何より真面目に働くのも努力することも……とうの昔に放棄したのだ。
「そうだねー、ムートン君にも会いたいしー」
「あそこには家もありますからね」
「……行って……しまうのですか……?」
プリス様が寂しそうな声を出す。
あの日から一度もかつてのような覇気のある姿は見られていない。
言葉遣いも大人しい、というよりもう一人のか弱い少女でしかない。
今回の事件でよっぽど傷付いたのか、あるいはこっちが本来の姿なのかもしれない。
一応外交の場ではそれなりに気を使っているようだが、少なくとも俺たちの前ではずっとこの調子だ。
「ええ……ですがまた力が必要になれば駆けつけますよ」
(もう二度とこんな面倒ごとはごめんだけどな……俺みたいな無能が国政に携わるとか笑えたわぁ)
「そうだよ……僕たちもう仲間でしょ」
「そうですよプリス様……我々は共に困難を乗り越えた、もう絆で結ばれた仲間です」
(その困難は魔物かシヨ様か……後者かなぁ)
「……仲間……ですか……じゃあ……私も一緒に……サーボ様と……皆と一緒に……行きたいです……」
(何言ってんだこいつっ!? 冗談じゃないっ!! 一国の女王を連れ回せるかよっ!!)
「プリス様、一体何をおっしゃるのですか……この国は父上が残した大切な場所なのでしょう?」
(そもそもそういうことは復興する前に言えよぉ……まあそれでも断ったけどさぁ)
「だって……ここには……もう誰も……ううん……最初から……私を大事に思う人は……いなかった……」
椅子から立ち上がりプリス様は俺の元へとやってくる。
「サーボ様だけ……我儘な私を……愚かな私を……王女としてではなく……中身を……女の子として……見てくれたの……」
(何のことだ? 俺は思いっきり我儘な王女としか見てなかったんだが……?)
「お願いです……私を……連れ去って……正妻じゃなくても……四番目の妾でいいです……サーボ様の……お傍に……」
俺の目の前で土下座するプリス様。
(何でこうなるんだよ……どうせ惚れるならカーマかセーヌに惚れてくれ……俺は四人目なんか抱え込めねぇよ)
既視感が半端じゃない。
「サーボ先生……僕は構わないけど」
(構えよっ!! こういう時こそ嫉妬心を全開にしろっ!!)
「サーボ先生、私もプリス様が同行することに反対は致しませんよ」
(反対しなさいっ!! あなた大人でしょっ!! 女王様連れ出したらどうなるかわかるでしょっ!!)
「うぅ……皆さん……嬉しいです……サーボ様……サーボ先生……私を……どうか……外の世界へ……」
頭を下げたままプリス様が涙声で懇願してくる。
このままでは他の二人まで土下座に参加しかねない。
(流石にまずい……いつも通り適当にごまかそう……毎回それで悪い方向に行ってるけど俺には他に出来ることねーしなぁ)
「……プリス様、俺たちは魔王退治を目的として旅をしております」
「はい……覚悟は……できています……」
「そうですか、なら……あえて俺は心を鬼にしてここに残ることを指示いたします」
「っ!? わ、私は……サーボ先生の……皆さんの……邪魔……なん……ですね……」
(凄まじく邪魔ーっ!! お前だけじゃなくて他の三人も邪魔ーっ!!)
正直に言いたいところだが、仮にも一国の女王の機嫌を損ねるのは得策ではないから我慢した。
「違います、あなたには俺たちに出来ないこと……いざというときのシェルター代わりになっていただきたいのです」
「どう……いう……こと……ですか……?」
「魔王軍は非常に手ごわい……俺たちは幾度となく苦戦を強いられてきました……」
俺の言葉にテキナさんもカノちゃんも頷いて見せる。
「だからこそ非常時に駆け込める場所が欲しいのです……俺たちが安心して帰ってこられる場所が……」
「帰って……ここに……帰ってきて……くださるの……ですか……」
「ええ、約束します……必ず皆でここに帰ってきますからそれまでここを……俺たちの家を守っていていただきたいのです」
(絶対に帰らねーけどなー、俺はどうにか全員振り切って隠居するんだーっ!!)
「また俺たちはもう勇者の名も捨てた旅人です……この立場では手に入らない情報も女王様ならば簡単に入るでしょう」
「要するに……サーボ先生はプリス様に後方支援を担当してもらいたいんだね」
「そして我々の家がある領地もプリス様の元にある……確かにこれほど心強い留守番はいないでしょう」
「……サーボ先生……皆さん……本当に……帰ってきて……くれますか……?」
「ええ、必ず……」
(帰りませーんっ!!)
「うん、だって僕もプリス様に会いたいもん……ここがあったら絶対帰ってくるぞーって気になれるよっ!!」
「ああ、約束する……我々は必ずプリス様の元へと帰ってくる、きっとシヨも同じことを考えているはずだ」
「だから辛いとは思うが……プリス様、この国を……俺たちの家を……帰る場所を守ってほしい」
(これだけ言えばいいだろっ!! ほら頷けっ!!)
「……わかりました……私……この国を……皆さんのお家を……守り切って見せます……っ」
最後にほんの少しだけ語気を強めたプリス様は、まっすぐ俺たちの目を見つめた。
(な、何とかなったぁああっ!!)
俺は内心歓喜に打ち震えながらも表面上は深刻そうな表情を保ち続けた。
「ありがとうプリス様……これほど心強い味方はいないよ」
「……ただ……最後に……帰る前に一つだけ……お願いが……いいですか……?」
「俺に出来ることなら何でもしますよ……何でしょうか?」
「それは……その……帰るときに……伝えます……」
プリス様は顔を真っ赤にしてうつむいてしまう。
(おいおい、嫌な予感しかしねーよっ!!)
しかしこれ以上言っても仕方がない。
俺たちは村に帰るために最後の仕事へと取り掛かった。
諸外国への挑発行為を辞めて、無駄にため込んだ物資も流出して物価操作もやめた。
更に作物農業と畜産農業に力を入れて食料自給率だけは高水準を保てるようにした。
非常時に逃げこむシェルターと言っただけに、最悪国外との取引無しで暮らせるようにしたかったのだ。
あとは高まったブランド名を用いた輸出品に関税処置を施すことを許可して諸外国の理解を得ることができたと思う。
(やっぱりシヨちゃんは凄まじい才能だ、よくぞこの外交の絶妙なバランスを崩さずに突き進めたなぁ)
最後に軍備関係の整理を行った。
最も魔王軍がいる関係上減らすというより人間相手から魔物相手への訓練形態及び装備の変更を行ったぐらいだ。
「うぅ……私たちの理想国家がぁ……一年もあれば間違いなくこの大陸は制覇できたのにぃ……」
「シヨちゃん……もう諦めようよぉ……それに誰にとっての理想なのぉ」
ようやく暴走が落ち着いたシヨちゃんを連れて俺たちは王宮の出口へと向かっていた。
「「「「「「シヨさ……サーボ様御一行の旅路を祈っておりますっ!! サーボ様万歳っ!!」」」」」」
周りを兵士たちが並び俺たちの出国を祝ってくれている。
(どいつもこいつも……独裁者が居なくなるからってそんなに激しく喜ぶなよなぁ)
一応正気に戻ったシヨちゃんと大盗賊のカノちゃんがプリス様の身辺警護兵に関しては念入りに調査済みだ。
だから俺たちが居なくなった途端にクーデターが起こるようなことはあり得ないのでその点は安心だ。
さらに内政面では各種関係者のトップに話の分かるやつを据えてある。
今のプリス様なら皆と話し合い無難な国政を行っていけるはずだ。
「プリスよ、大変お世話になった……また必ず寄らせていただく」
「プリスさん、絶対僕たちまた来るからね」
「プリスさん、元気でね……今度きたらまた国政を手伝いますからぁ」
皆もう様付けはしていない。
プリス本人が俺たちの仲間としてそれを望んだのだ。
「皆……私はずっと……お待ちしております……いつでも……帰ってきてください……歓迎……いたします……」
頭を下げるプリスに俺も声をかけることにした。
「これからも大変だろうけど頑張るんだよプリスちゃん……本当に辛いときは俺たちはいつでも駆けつけるからね」
(我ながらてきとーな発言だなぁ、まあこれだけ盛り上がってれば突っ込まれないだろうけど)
「はい……サーボ先生……それで……最後に……お願いが……」
(来たよ……何となく予想は出来てるけど……)
「何だいプリスちゃん……俺に出来ることだったら何でも言ってほしい」
「では……その……あの……私に……く……口づけ……を……っ」
(や、やっぱりかぁーーっ!!)
それは駄目だ、俺が俺でなくなってしまう。
「プリスちゃん……悪いけどそのお願いは聞けないんだ……」
面倒なことになるかもしれないがそういうしかない。
「……ふふ……やっぱり……そうなんですね……わかってました……皆さんの……いう通り……でしたね……」
しかし不思議なことにプリスはむしろ嬉しそうに微笑むのだった。
「でしょぅ……サーボ先生はこの手のことだけはいくじなしだからねぇ」
「ですよねぇ……サーボ先生はこういうことだけは弱虫ですからぁ」
「そうなのだ……サーボ先生はこの話に限っては軟弱者なのだ」
(お前らさぁ……いやまあ好都合だから何も言わないけどな)
恐らく前の話の時に彼女らも俺と同じことを感じたのだろう。
それでシヨちゃんも交えて皆で一度話し合ったようだ。
「……本当に……サーボ先生……ヘタレ……ですねぇ」
「自覚しているよ」
(本当になぁ)
「皆さま……お願いしますね……サーボ先生のこと……」
「うん、任せておいて……度胸つけさせるからね」
「はい、任せてください……手を出せるよう教育します」
「ああ、任せるがよい……必ずや覚悟を決めさせて見せよう」
「はは……全く、困りましたねぇ本当に」
(冗談じゃねぇっ!! 俺は絶対お前らに手なんか出さねーよっ!!)
「では行きましょうサーボ先生、カノ、シヨ……村へ帰還……いや移動だな」
「うん、僕たちのお家はプリスさんのとこだもんね」
「はい、じゃあ行ってきます」
「行って……らっしゃい……ませ……サーボ先生……カノちゃん……シヨちゃん……テキナさん……御無事を……お祈り……します」
深々と頭を下げるプリス様に見送られて俺たちは王都バンニを後にしたのだった。
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