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田舎村でスローライフ……したかったなぁ

「サーボ先生、これで五度目の襲撃ですね」


「日増しに魔物の襲撃が増えていく……困ったなこれは」


 村に住み始めて三日が経過した。


 魔物の襲撃が頻発していて、俺たちは大忙しだった。


(田舎で始まるスローライフ~~ムートン君との友情物語……とはいかないなぁ)


 本格的にバンニ国内への魔王軍の侵攻が始まっているのだろうか。


「やはり本隊を倒さなければどうしようもないかもしれませんねぇ」


「だけど王都にはあの勇者たちが向かってるはずですし……まさか負けちゃったんですかね?」


(まさかなぁ、仮にも勇者コンテスト優良成績者が八人掛かりだぞ……それで負けるようならもうお手上げだ)


「本隊が別の場所にある可能性もある……こうなるともうカノちゃん頼みだなぁ」


 今回はあえて魔物を全滅させず残党をカノちゃんに後をつけさせてある。


 これで上手く敵の本拠地が見つかればいいのだが。


「サーボ様がこの村に滞在してくださらなければどうなっていたことか……村人一同感謝の言葉もございません」


「お気になさらずに、代わりに生活必需品を分けて頂いておりますからね」


(とはいえ通商も無くなって田畑の損害も少なくない……魔物の襲撃を何とかしても暮らし続けられるかどうか)


 いくらお金があっても物が流通していなければ意味がない。

 

「しかしサーボ先生のおっしゃる通りでしたね……もしあの時点でこの村を立ち去っていたらどうなっていたことか」


「本当です……私たちもしっかり先を見据えていかないとだめですねぇ」


「ははは、しかしここまで激しく襲われるとは予想外だったよ」


(本当に細々と暮らしていくぐらいはできると思ったんだけどなぁ)


「ただいまー、サーボ先生やったよ僕っ!!」


「お帰りカノちゃん、どうやらその調子だと敵の本拠地を見つけたみたいだね」


「うん、あっちのほうに洞窟があってその中に魔物たちが出入りしてて……一番奥で黒づくめの衣装を着た奴に指示を受けてたよ」


(本当に便利だなぁカノちゃん……さてどうするかな?)


 そこを潰してしまえは襲撃は減るはずだ。


 テキナさんとカノちゃんをペアで向かわせれば基本何とかなると思う。


 ただ絡め手でこられて二人が捕まってしまえばそれこそお終いだ。


 何よりこの村に残ったところを野生の魔物やら野盗などに襲われたら俺ではどうしようもない。


(嫌だけど……俺の安全を考えたらついていくべきだなぁ)


「村人の人々、俺たちは全員でその敵の本拠地を叩きに向かいますっ!!」


「お願いいたします……ただ、言いづらいのですがその間のこちらの防衛はどうすればよいのでしょうか?」


(だよなぁ……まだここに住んでいたいから無下にもできないしどうするかなぁ)


「あ、あのサーボ先生……わ、私がここに残って皆さんに指示を出しましょうか?」


 シヨちゃんがおずおずと提案する。


(シヨちゃんが残っても村人の士気以外意味はないんだが……もし敵襲があったらどのみちお終いだしなぁ)


 俺たちがいない間に襲撃があればこの村は壊滅的な被害を受けて住めなくなる。


 ただシヨちゃんを残すか残さないかで村人の俺らに対する信頼感情に差は出るだろう。


 そしてシヨちゃんは居なくなっても問題ない。


 損得を考えた結果としてシヨちゃんには残ってもらうことにした。


「じゃあ皆さん、若いとはいえ俺の弟子であるシヨちゃんの言うことによく従ってくださいね」


「皆もシヨちゃんも頑張ってねっ!!」


「シヨよ、私たちが帰るまでの間村のことは頼んだぞっ!!」 


「はいっ!! 私頑張りますっ!! ムートン君一緒に頑張ろうね」


「めぇええっ!!」


「シヨ様、どうかお願いいたします」


 ムートン君にまたがった状態のシヨちゃんと村人に見送られて俺たちは敵の本拠地を目指した。


「サーボ先生、本当にシヨちゃん一人を残して大丈夫かなぁ」


 カノちゃんが心配そうにつぶやく。


 恐らく才能がないシヨちゃんが上手くやれるか、かつての無能仲間として自分のことのように不安に感じるのだろう。


「大丈夫だよ、シヨちゃんも俺たちにずっと付いてきていたんだ……しっかりと地力は育ってきているはずさ」


(仮にあいつが居なくなっても俺困らねぇし大丈夫なんだよ)


「カノよサーボ先生が決めたことだ、何も考えず信じぬけば良い結果になる」


 テキナさんが断言する。


「へへ、そうだよね……サーボ先生が間違えるはずないもんね」


 カノちゃんも不安が吹っ切れたようだ。


(まあこいつら俺に惚れてるし、万が一の時は俺の判断ミスだったとか言って泣き真似すればごまかせるだろ)


「それより実際に魔物の巣窟へと乗り込む俺たち自身のことを考えていかないと……あとどれぐらいだい?」


「うーん、このペースだと往復で二日か三日ってとこかなぁ」


「……ですがカノちゃんはもう少し早く帰ってきましたよね?」


「それがね、大盗賊のフードの効果中は僕ってテキナさんより遥かに早く動けちゃうんだ……」


 そういえば移動力アップの効果もあると聞いていた記憶がある。


「おまけに身軽にもなって物の側面にも張り付けたりするから……森の中とか疑似的に空飛んで移動できちゃうから早かったんだ」


「お見事だカノ……貴方の才能を見抜けず努力することを無駄だと言った私の愚かさを改めて謝罪させてくれ」


「嫌だなぁテキナさん、あの指摘は本当だったよ……今思えばテキナさんも僕を思って言ってくれてたってはっきりとわかるよ」


 もうカノちゃんは勇者の称号を完全に吹っ切っているようだ。


「皆のお陰で大盗賊にもなれたし……シヨちゃんにも何かいい才能があればいいんだけどなぁ」


「きっと見つかるとも……ねえサーボ先生?」


「……こればかりは天性のものだからねぇ、そう気軽に断言はできないなぁ」


(俺だって……いや、俺は今更要らないな)


 努力することを放棄してから時間がたちすぎている。


 今更何か才能が見つかっても磨き上げるには遅すぎた。


「そうですか……申し訳ありません、無責任な発言をしてしまいました」


「いやテキナさんの気持ちもカノちゃんの言うこともわかるよ……シヨちゃんにもあればいいねぇ」


(そのほうが冒険は楽になるしな……シヨちゃんなら立派に鍛え上げるだろうし)


「だたどちらにしてもシヨちゃんは俺たちの大切な仲間だ……共に歩むことに変わりはないよ」


(向こうが歩けなくなるまでな……いや俺が先に歩くのを辞めて落ち着きたいもんだけどなぁ)


「うんっ!! そうだよね、僕たち仲間だもんねっ!!」


「はいっ!! サーボ先生のおっしゃる通りですっ!!」


 簡単に精神面のケアをしてテンションを上げながら道を急ぐ。


 しかし走って体力を使い果たしても厳しい。


「先生、テキナさん……魔物だよっ!!」


「テキナさん、お願いしますっ!!」


「はいっ!!」


 おまけに魔物の警戒網が引かれているのか、こうして敵との邂逅もある。


 今回は炎を纏った蜥蜴、ファイアリザードの群れである。


 全長5mほど、体高も1mを超える巨体を持つ。


 爪を振るえば切り裂いた相手に火が付き、尻尾を振り回せば炎が巻き散る。


 さらに口からも炎を噴射する強敵だ。


 前に戦ったフレイムドッグの強化版と言っていい。


「はぁっ!!」


 テキナさんが鋼の剣を振るうと、途端にかまいたちのように衝撃波が放たれる。


 正面に並んだ一群はバターのように綺麗に切り倒されてしまう。


 そこに突っ込み敵軍の真ん中に陣取ったテキナさんは手のひらを大地へと叩きつけた。


「我が魔力に従い雄大なる大地の威勢を示せっ!! 地衝撃(ガイアインパクト)!!」

 

「しゃぁあああああっ!?」


 周辺の地面が隆起し無数の棘が勢いよく飛び出して全ての魔物の身体を貫いた。


 魔物たちの息の根が止まると同時に魔法で生み出された土の棘は自然と消失した。


(相変わらず正面からなら敵なしだなぁ)


「終わりましたね……先を急ぎましょう」


「うん……ただこれから先どんどん敵の警戒が厳しくくなるから注意しようね」


(やれやれ……厄介だなぁ)


 実際にその後も様々な魔物に襲撃された。


 同じくファイアリザードやフレイムドック、果てはフレアアントという倒したら爆発する蟻の魔物もいた。


(ただどいつもこいつも炎に関連する魔物ばっかりだ……偏り過ぎじゃないか?)


 村への襲撃を思い返すがその際はもっとバランスが良かった気がする。


 ジェルスライムや羽ばたきで小型の竜巻を作る鳥の魔物ウインドバード、泥を弾のように吐き出すマッドゴーレム。


「カノちゃん、君が後を追いかけた魔物は何だったかな?」


「え……確かあれはフレイムドッグだったはずだけど?」


(ああ……これはミスったかな?)


 前に村で解決した集団失踪事件を思い返す。


 炎、水、土、風を司る魔王軍がそれぞれ襲撃していた。


(ひょっとして魔王軍には属性ごとの派閥みたいのがあるんじゃないか?)


 そしてバンニ国という一国を落とすために全派閥が同時に進軍していると仮定しよう。


 それぞれの派閥ごとに本拠地を作ってもおかしい話ではない。


(仮にここをつぶしても他の派閥の侵攻は止まらない……そして村への襲撃ペースは一日に一度は起きていた)


 どんなに急いでも俺たちが行って帰るには二日はかかる。


 幾ら村人の協力があっても二回以上の襲撃をシヨちゃんが堪えきれるとは思えない。


(あらら、本当にお別れかもな……じゃあなシヨちゃん、君のことは忘れるまで忘れないよ)


「サーボ先生、何を考えていられるのですか?」


「サーボ先生……追いかけた魔物の種類が何か関係あるの?」


 テキナさんもカノちゃんもまだ敵の偏りに気づいていないようだ。


(何でだ……ああ、前の時は最前線に立っててそこまで考えたり観察する余裕がなかったのか?)


 フレイムドッグの時は文字通り初戦だった。

 

 ジェルスライムには結局村で遭遇することはなかった。


 子蜘蛛の時はそれ以上に魔物の誘惑に意識が向かっていた。


 風の奴は部下を使っていなかった。


(俺はある意味全部冷静に最後まで観察できる立場だったしなぁ……)


「……いや少し気になっただけだ、まだはっきりしたわけじゃないし気にしないでくれ」


 自分の考えを伝えるべきか迷ったが結局ごまかすことにした。


 今伝えてもパニックになるだけだ。


(村に戻って防衛するとか言いかねないしなぁ)


 そんなことをしてもジリ貧になるだけだ。


 かといって無理に進ませればやる気もがた落ちで戦闘力に影響が出る可能性はある。


 ならばせめてこの敵本部を壊滅した後で伝えてもいいだろう。


(いかにも見落としてたようなふりをして……やっぱり泣き真似でもすれば行けるだろ)


 俺は心中でシヨちゃんとムートン君の冥福を祈った。


(ごめんよムートン君、君を見殺しにしてしまう無能な俺を許してくれ……シヨちゃんもついでにゴメンね)


「それより先を急ごう、少しでも早く戻りたい」


「はいっ!!」


「うんっ!!」


 少し疲れない程度に足を急がせる俺たち。


 それでも獣道程度しかない道程は動きにくい。


 敵の姿が炎で目立つため夜中も無理やり強行軍で進んだがそれでも洞窟まで一日かかってしまう。


 地面の一角に不自然に広がった洞窟の入り口があった。


「あそこがそうだよ……あんまり奥まで深くはないけど道はたくさんあるから迷わないようにね」


「なるほど……ではサーボ先生、早速乗り込みましょう」


「いや……カノちゃん、あの洞窟は地下に向かって伸びているんだよね?」


「うん、そうだけど……?」


(じゃあ、上のほうを崩せば生き埋めに出来るわけだな)


「テキナさん、時間が惜しい……洞窟を崩して生き埋めにしてしまおう」


「は……はい、わかりました」


「うわぁ……先生たら乱暴なんだからぁ」


「いやちょっと思うことがあってね、少しでも時間を短縮したいんだ」


 俺の指示に従いテキナさんは洞窟の入り口を飛び越える。


 そして洞窟の天井部分にあたる箇所を片っ端からぶん殴り崩していった。


 当然重力に従い穴の中に土砂が流れ込んでいく。


「終わりました……しかしどうにも実感がありませんね」


「それにこの程度で魔王軍がやられるかなぁ?」


「多分やられないでしょうね……ですがテキナさん、もしあなたが同じ状態になったらまずどうしますか?」


「それは、とにかく脱出するために上に向かい掘り進み……なるほどっ!!」


 テキナさんは理解したようで剣を抜いて洞窟があった方向を睨みつけた。


 しばらくして地面が盛り上がり、何かが飛び出そうとする。


「……ぷはぁっ!? な、なんだっていきなり土砂崩れが……っ!?」


 モグラのように地面から上体を突き出した魔王軍の部隊長らしき男。


「あ、あいつだよテキナさんっ!! 親玉だっ!!」


「任せろっ!! はぁあああぅっ!!」


「な、なん……ぎゃぁああああああっ!!」


 カノちゃんの指摘を受けて駆け出したテキナさんは、敵が自由を取り戻す前に一撃で叩き潰してしまった。


(……本当は尋問とかしたかったんだけどなぁ)


 最もそんな余裕を晒して逆転されでもしたら目も当てられない。


 倒せるうちに倒しておくことは間違いではない。


「終わりましたねサーボ先生、さあ帰りましょう」


「ああ、そうするのだけど……カノちゃん悪いけど一足先に帰って村の様子を見てきてくれないか?」


「いいですけど、何でですか?」


 そこで俺は初めて自分の考えを二人に聞かせた。


 魔物の勢力への考察、そして村が襲われている可能性。


「確証はないから二人を混乱させまいと黙っていたけど……やはり不安で仕方がないんだ」


「そ、それは大変だよっ!! ぼ、僕急いで様子を見てくるねっ!!」


「俺たちは来た道をそのまま戻るから、もしも変化があれば戻ってきて情報を持ってきてくれ」


(間違っても特攻するなよ、お前の才能は唯一無二なんだから)


「わ、わかりましたっ!! 行ってきますっ!!」


 フードを被って透明になったカノちゃんが立ち去っていく。


「サーボ先生、我々も急ぎましょうっ!!」


「ああ、勿論だ」


(できればまだまだあそこで楽して暮らしたいしなぁ……急ごう)


 来たときと違いもう周囲に魔物の気配はなかった。

 

(魔王軍が使役する魔物は上役が生み出しているのか……そして上役が消えれば全て消失する……可能性があるな)


 今のところは敵に警戒しなくてもよさそうだが、やはり距離があるために時間はほとんど変わらない。


「くぅ……もどかしいかぎりですっ!! あの二人は無事でしょうかっ!?」


「もしも最悪の事態の場合はカノちゃんは戻ってくるだろう……だからそれだけは避けられているはずだ」


 既に村が完全に崩壊していればカノちゃんに出来ることはない。


 どんな感情を抱えていようと戻ってこざるを得ないはずだ。


「戻ってこないということは俺たちに報告することがない状態か……魔物の襲撃中で防衛に参加しているかだろうね」


 村が何事も無ければ次の襲撃に備えて待機するだろう。


 防衛中なら助けずにはいられないはずだ。 


「出来れば前者であってもらいたい……カノ、シヨ、無事でいてくれっ!!」


(ムートン君、君だけでも無事でいてくれっ!!)


 俺たちは祈りながらさらに足を速める。


 当然夜間も強行軍だ。


 徹夜二日目で足元がふらつく。


 しかし修羅場をくぐって来ただけあって体力は少しだけ余裕があった。


「サーボ先生、村が見えて……村ですよね?」


「……村だったよね、ここ」


 辿り着いた俺たちを出迎えたのは木材でできた巨大な門と塀に囲まれた要塞だった。


「あっ!! サーボ先生ーいまあけまーすっ!!」


「や、やあシヨちゃん……ただいまー」


「ただいま戻りました……これは一体どうなっているのですか?」


「えへへ、皆が頑張って作ってくれたんですよー」


 やはり俺たちが出発する前にはなかった見張り台からシヨちゃんが降りてきた。


 話を聞いてみると俺たちが出発した後に魔物の襲撃に備えてシヨちゃんが皆に指示して作らせたようだった。


「何回か魔物が攻めてきたんですけど、この塀の内側から攻撃して何とか撃退したんですよー」


「さ、サーボ様、いやぁ大変でしたよ……シヨ様の指示は正しいのですがその、苛烈で……」


 俺の姿を見た村人の一人がひそひそと耳打ちしてきた。


「逆らえばむち打ち……全員に命令の服従を徹底、管理……村長は地位をはく奪され……もう誰も逆らえません」

 

「……ごめんなさい、俺の弟子が申し訳ありません」


(あったよ才能……独裁者の才能が)


 見れば拘束してあった山賊たちも手かせ足かせを付けられて涙目になりながらこき使われていた。


「サーボ先生、防壁の外側に毒の茨が巻き付けてあります……しかも隙間から攻撃できるように簡易の槍が幾つも常備されております」


「あはは、見張り台の上からも攻撃できるようになってるし……これを一日で作らされたの?」


「は、はい総動員で……毒の茨の回収班は未だに寝込んでおります……ですが魔物による被害は零ですので文句も付けられません」


「どうかしましたぁ? えへへ、先生私頑張っちゃいましたぁ」


 無邪気に笑うシヨちゃん。


 この子が一番恐ろしいかもしれない。


「さ、流石俺の弟子だよシヨちゃん……よく村を守り通したね」


「う、うむ見事な手腕だぞシヨ……み、見事としか言いようがない」


「わーい、私お役に立てましたねーっ!!」


「ああ、大したものだよ……は、話は変わるがカノちゃんがこなかったかい?」


 周りを見回したが姿が見えない。


 ここにいるのなら俺のところにやってこないはずがない。


「えっと、ちょうど魔物が帰るところだったから後をつけてもらっちゃいました……駄目でしたか?」


「おおそうか、それは見事な判断だよ」 


(こいつ指揮官としても向いているんじゃないか……というか人の上に立つ才能があるのか?)


 幼過ぎて誰も言うことを聞かないし、本人も指示を出そうとしてこなかったために埋もれていたようだ。


 皮肉にも本人が良い子に育ち他の人に素直に従ってばかりだったのも才能が発覚しなかった理由だろう。


 しかしこうして開花してしまうとますます俺の立場がなくなっていく。


(このパーティで無能なのは俺だけってことだな……はは、本当にお笑いだ)


「カノさんから簡単に話は聞きましたぁ……この村の守りは任せて片っ端からやっつけちゃってくださいっ!!」


「ああ、そうさせてもらいましょう……しかしイショサ国であったように敵の絡め手だけは気を付けるようにね」


(この調子なら本当にここで暮らしていけるかもなぁ……)


「サーボ先生っ!! 次の敵拠点を見つけたよーっ!!」


 カノちゃんが戻ってくる。


「よし早速……と言いたいけれど体調管理のために一日休んでから出発しようじゃないか」


「うん、わかったよ」


「はーい、先生たちのお家もしっかり完備してありますよー」


「畏まりました、しっかりと休ませていただきます……村人の毒の解除を終えてから」


「頼みますよテキナさん……」


 俺たちはシヨちゃんが築き上げた要塞の中で惰眠を貪ることにした。


「……ええと、皆さん各自部屋に戻って休みましょうね?」


 何故か全員が俺の部屋に集まってきた。


 どいつもこいつももじもじしながら、顔を赤らめながら……周りの二人と俺へチラチラを視線を投げかけている。


「……サーボ先生、そのベッドって詰めればもう一人ぐらい寝れるよね?」


「い、いやぁ厳しいんじゃないかなぁ?」


「……サーボ先生、一番幼い私なら入れますよね?」


「い、いやぁ厳しいんじゃないかなぁ?」


「……サーボ先生、私の身体を敷布団代わりにすれば共に寝ることも可能ですよね?」


「い、いやぁ厳しいんじゃないかなぁ?」


(勘弁してくれ……休みたいんだよ、一人でぇ)


 しかしこの勢いだと断っても引き下がりはしないだろう。


「今回一番頑張ったのって一人で敵をつけて本拠地を突き止めた僕だよねぇ……ご褒美欲しいなぁ」


「先生、私って村と村人を守り抜いて一番頑張りましたよね……ご褒美くれないんですかぁ」


「サーボ先生……私が敵の本拠地を崩壊し一番の成果を上げたと自負しております……ご、ご褒美など頂ければ幸いです」


(誰か一人選べってのかぁ……選べるかぁああっ!! しかも二人きりで寝るとか確実に襲われるだろ俺がっ!!)


「よーし……居間にほかの部屋から寝具を一カ所に集めて皆一緒に寝ようね」


「……いくじなし」


「……弱虫」


「……軟弱者」


「……なんのことかなぁ」


 女性三人からの呆れたような視線を無視して俺は自分の寝具を運び出そうとするのだった。


(うぅ……この調子だと毎日三人に囲まれて……もういっそ外でムートン君と寝たいよぉ……どうしてこうなるのよぉっ!?)

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