リューベルバルク・フルシュレイダー・デューク・デオニーソス
書き置きがここまでなので、また練って出来上がり次第更新します。
1日。それがハゲを負かしてから経過した時間だった。要するに1日寝てた。
どうやらハゲはまだ寝ているらしい。俺より症状が酷いんだとか。
そりゃそうか。俺より年寄りなんだし、俺より回復速度が遅くて当然か。
俺とハゲとの殴り合いは今やこの街の最高の娯楽、らしい…。俺が寝ている間に同業者から口々に広まって行き今ではこの街のほとんどの住人が知ってる話なんだと。なんだそれ。
俺やハゲの看病をしてくれたギルド職員や俺が目覚めたと聞いて休みの合間に見舞いに来てくれたロット曰く、『【移動要塞】が【拳嵐業火】をその二つ名に恥じない戦い方で倒した』だとか『【移動要塞】は【拳嵐業火】相手に手加減していた』だとか『【拳嵐業火】でも【移動要塞】は破れなかった』だとか、その他にも色々と事実や根も葉もない噂まで幅広く広がっているらしい。
【移動要塞】は俺の二つ名だ。
あぁ、俺も冒険者だ。そういう話を聞いたり話したりするのは大好きだ。当事者じゃなければ俺が率先して吹聴したいほどの最高の娯楽だろう。
だが勘弁してくれ。俺は仕方なくハゲに付き合っただけなんだ。それに俺もハゲもガチではやってない。ガチじゃないのにハゲを降したなんて、元Sランク冒険者【拳嵐業火】のシュトロハイムに申し訳ない。
そして俺が目を覚ましてから更に2日後、ようやくギルドの医療班から『完治』のお墨付きを貰えたことで、俺はようやくこの街に来た目的を達成するために動けるようになった。つまり慰安だ。
実は医療班に「完治するまで部屋から出さない」なんて言われて、試しに脱け出そうとしたら扉を開けた先に笑顔で医療班の人間が立ってたり、ならば窓から出てやろうと思って窓を開ければ窓の外に医療班の人間が居たり、何がなんでも俺を完治するまで部屋から出さない狂気とも言うべき気概を感じて部屋から出れなかった。つまりしたいことが出来なかった。より正確に言うならば、酒が飲めなかった。
脱け出す事に失敗した俺はロットに「なんで医療班の奴等、部屋から出ようとしたら出ようとした場所の前に居るんだ?軽く恐怖だろ」と聞いたら「あー、アレです。シュトロハイム様のご病気が原因で、うちの医療班は色々と逞しくなったんですよ」なんて返ってきた。
これを聞いたときは再度ハゲを力の限り殴ろうと思ったな。
部屋から出れないのなら仕方がない。ならばロットに頼んで酒を持って来てもらおう。そう思ってロットに頼んだら、「すみませんジュード様。私も命が惜しいです」なんて言われた。
聞いたときは戦慄したな。ロットがガタガタ震えてカチカチ歯と歯を打ち鳴らしながら明らかに何かに怯えながら言ってんだから。流石に俺もそこまで恐がるロットを見て強行手段に出るほど酒を飲みたかった訳でもないから、完治するまで部屋でおとなしくしていた訳だ。つまり酒が飲めなかった。
それが俺が気絶してから昨日までの話。昨夜ようやくギルドの医療班の人間から「完治しました。シュトロハイム様との戯れ合いお疲れ様でした」と言われて、ギルド側で保管してくれていたらしい鎧やら盾やら剣やらの俺の装備を手渡された。
これで俺は、晴れて自由の身になった訳だ。良かった良かった。
「ありがとう。じゃあ、早速宿探すためにロットの所に行くわ」そう言って俺に装備を渡してくれた医療班の人にお礼を言って部屋から立ち去ろうとしたんだが、続く医療班の言葉に足を止められる。
「領主様がお呼びです。今回のシュトロハイム様との件で何やらお話が有るとか」
聞かなかった事にして今すぐこの場から立ち去りたい。強くそう思いつつ、貴族の名前を出されれば従うしかない。
俺はゆっくりと後ろに振り返り、恐らく引き攣った笑みを浮かべながら聞いた。
「拒否権は?」
「逆に聞きます。死にたいんですか?」
「だよなぁ……」
この世界では国と貴族の命令は絶対。あぁ勿論、暴君ならその限りじゃないが、残念な事にここの領主は良主だ。聞かない訳にはいかない。
それに『剣盾の誓い』の時に世話になった。
俺に選択の余地は残されていなかった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
『剣盾の誓い』を抜けたのは俺の意思だが、『剣盾の誓い』に居た頃からそうだが俺の周りの環境が目真苦しく移り変わるのはなんでなんだろうか?そんな事をハゲの奥さんでデオニーソスの副ギルド長であり元Aランク冒険者【鮮血の乙女】ミーミア・デオニーソス・ギルドの案内で連れられて来たデオニーソスの領主館の前で考えてしまう。
「間抜けな顔を晒すな愚か者。今から領主様に謁見するのだぞ」
姐さんはその私生活はまさに乙女と言えるほど可憐だ。そして物凄く真面目だ。年齢はもう30後半の筈だが、その美貌は衰えておらず、姐さんがハゲの奥さんだと知らない馬鹿に未だにナンパされるらしい。
そんな人が、戦闘になった途端自分と相手と周りを相手の血で真っ赤に染め上げるほど苛烈な戦い方をするなんて、実際にその戦い振りを見たことある俺でも未だに信じられない。
「いやぁ、拒否権無いのはわかっているんだが、やっぱり嫌なモンは嫌なんでね……。姐さんの同行じゃなきゃ今頃バックレてるよ」
「だから愚か者だと言ってるんだ。そこで逃げようという考えが浮かぶその神経がいつまで経っても理解出来ない。あと何度も言ってるが姐さんは止めろ」
「でも名前で呼んだらあのハゲがキレるんだが?デオニーソスはここの領主様の姓だし、ギルドは何処のギルド長でも姓はギルドだ。だったら姐さん個人を呼ぶ場合、俺はなんて姐さんの事を呼べば良いんだよ?」
「だから前からハイムの事は気にするなと言っている。あとハイムの事をハゲと呼ぶのも止めろ。アレは本人の希望で私が剃ってる。ハゲではない」
「世間一般的にあそこまで髪が短い大人は総じて『ハゲ』だよ」
ハイムってのはハゲと姐さんとの間でしか呼ばれる事のないハゲの愛称だ。まぁつまり、姐さんがハゲの事を『ハイム』と呼ぶときは、シレッと惚気られてる訳なんだが、実はこの事に姐さん本人は気付いてない。
「ハァー……。わかってるよ姐さん。ただ俺が気持ちの整理をするために駄々捏ねてるように見せてただけだ。ここまで来れば気持ちの準備も出来たし、いつでも良いぜ」
姐さんが口を開こうとしたタイミングでそう言って、続くお小言を封殺する。
姐さんは先に優先するべきことが有ったらそっちを優先する。今回で言えば俺をデオニーソスの領主館に連れてくる事だが、着いてしまえば次に優先するのは駄々を捏ねる俺の説得だ。でももうそれもしなくて良い。そういう意味で、あとこれ以上お小言を言われたくなくて続く言葉を封殺した。案の定、俺の言葉を聞いて何か言いたそうにしてるけど、言葉を呑み込んで再び俺を先導し始めた。
「デオニーソスギルド長シュトロハイム・デオニーソス・ミューザー・ギルドの名代で来ました。デオニーソスギルド副ギルド長のミーミア・デオニーソス・ギルドです。領主様の命によりAランク冒険者ジュードを連れて来ました」
「家令に確認して参りますのでしばしお待ちください」
デオニーソス領主館の正門前で門番をしている兵に姐さんが姐さんが副ギルド長だという身分証を提示しながら声を掛けた。
で、例の如く確認が取れるまで待たされる。
お役所ってのは何かとめんどくさい所だよホントに。
程なくして戻ってきた門番の男が「お待たせいたしました。主がお会いになられるそうなので中へとお進みください。屋敷に着きましたら家令のアッシャンベルド様がお待ちしているので、アッシャンベルド様の指示に従ってください」と言って門を開けた。
姐さんは「お勤めご苦労様です」とだけ言って再び俺を先導し始める。
俺は俺で対応してくれた門兵に「お疲れさん。仕事頑張れよ」と言って着いていく。
正直姐さんがここまで着いてくる必要は無い。だけどさっき『名代』と言った通り、姐さんは今回ハゲの代わりにここに来ている。つまり、本来呼ばれたのは俺とハゲって訳だ。
さて、オーガが出るかヴァイパーが出るか……。
この屋敷に訪れたのはこれで3回目だ。1度は『剣盾の誓い』として依頼の詳細を聞きに来て、2度目は請けた依頼の達成の報告でだ。前回前々回は明確に理由が有ったが今回は特に理由の無い呼び出しだ。いったいどんな理由で呼ばれたんだ?
姐さんの先導の下歩き続けるとようやく屋敷に着く。
なんでお貴族様の屋敷ってのは門から屋敷までの距離が異様に長いのかね?見栄や警備の関係か?
屋敷の前に着くと、そこには1人のハゲより少し上ぐらいの年齢の男が立っていた。勿論顔見知りだ。
「ようこそおいでくださいました、ミーミア様ジュード様。こうして再会出来たことを嬉しく思います」
アッシャンベルド・バロン。このデオニーソスを治める領主に仕える執事長にして男爵の出の貴人だ。
「お久し振りですアッシャンベルド様。夫の名代で私はこちらに参らせていただきました。夫本人が来れなかったこと誠に申し訳ございません」
「いえいえ構いませんとも。主人や私もシュトロハイム様の現状は聞き及んでいます故お気になさらなくても構いません」
「恐縮です」
姐さんとアッシャンベルド様が挨拶を終えると、今度は俺の方に視線が来た。
「お久し振りですねジュード様。以後もお変わりがないようで安心しました」
「前にここに寄らせてもらって二月しか経っていませんしね、そうそう変わりません。『剣盾の誓い』を追放されましたが俺は俺なりに自由にやらせてもらってます」
俺が姐さんやアッシャンベルド様のような丁寧な言葉を使えないのはこの屋敷の主人を含めここに居る面々の間では周知の事実。というか、冒険者は庶民出身者が圧倒的に多いため丁寧な言葉遣いなんかの教育を受けてないことが大半だから、別に姐さん達みたいに丁寧に喋れなくても畏まろうとする姿勢を見せれば普通は問題無い。
まぁ、中にはキレるお貴族様も居るけどな。
「はてさて、本当に貴方は『剣盾の誓い』を追放されたのですかね?
主人がお待ちです。応接室までご案内します」
挨拶を済ませてアッシャンベルド様の先導で、恐らく前にも通された部屋に向かう。二月前にもここを通ったけど、改めて見なくても壁やら廊下に置かれてる絵や壺や皿がAランクでも手が届かなそうなほど豪華だ。
着いて早々だが壊してしまいそうで弁償させられるのが恐いからさっさと帰りたい。
俺が内心帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたいと毒吐いていると目的の部屋に着いた。目的の部屋は真ん中に膝下辺りまでの高さの机が有り、人1人なら大の大人でも寝転べそうなほど広いソファーが向かい合う形で机を挟むように設置されている部屋だ。四隅には壺やら花やらと飾られていて、この部屋だけでも俺の収入ぐらいの金が使われている事がわかる。
「こちらの部屋で掛けてお待ちください。すぐに主人を呼んで参ります」
アッシャンベルド様は俺達が部屋に入ったのを確認するとそこでお辞儀をして部屋を出て行った。そして入れ換わるようにメイドが入ってきた。
「紅茶に水、それと茶菓子でございます」
そう言って出された紅茶が姐さんの前へ、水が俺の前に置かれる。茶菓子はクッキーだった。匂い的にレンジオのクッキーかな?
前に来たとき、俺が「紅茶は合わないから水にしてくれ」って言ったのを覚えてくれていたらしい。紅茶は何故か、ホント口に合わないんだよな。
出された物を咀嚼して飲み込んだ辺りで部屋の扉がノックされる。
「ミーミア様、ジュード様、主人をお連れしました」
そう言って開かれた扉から入ってきたのは、ハゲと同い年とは思えないどちらかと言うと俺より1個か2個上ぐらいに見える豪華な格好の男が入ってきた。
彼を見て俺達は立ち上がり頭を下げた。
「お久し振りでございます公爵閣下。シュトロハイム・デオニーソス・ミューザー・ギルドが妻、ミーミア・デオニーソス・ギルド。公爵閣下の召還に応じ参上いたしました」
「お久し振りです」
「久しいなミーミア氏。そして前に会った時と変わらない事を嬉しく思うぞ冒険者ジュード」
入ってきた男。このデオニーソスの地を治める過去の王族の血を引くリューベルバルク・フルシュレイダー・デューク・デオニーソスは俺達の顔を見て満足そうな表情をしながら俺達が座っていた場所の反対側に腰を下ろした。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「さて、積もる話は有るがジュードは確か長々と前置きをする話が苦手だったな。私も話は早い方が好きだ。だから早速本題に入らせてもらおう」
デオニーソス様はメイドが用意した御茶を一口飲むと俺達にそう言って、今回俺達を呼んだ理由を話してくれた。
「今回君達を呼んだのは他でもない、君達が4日前にやった戯れ合いの件だ。
ジュードよ、君は冒険者ギルドの規約を覚えているかな?」
「えっ、と……」
「全て覚えておけというのは酷だったか。ミーミア氏はある程度今回私が君達を呼び出した理由に検討がついているだろうから、先にそちらから済ませてしまおう。
ミーミア氏、シュトロハイムの言葉を聞かせてもらえるか?」
「はい。承知しました。ではこれよりデオニーソスギルドギルド長シュトロハイム・デオニーソス・ミューザー・ギルドの言葉を代弁させていただきます」
姐さんはそう言うと持参した鞄の中から1枚の封筒を取り出し、中を開いてその中身を読み上げ始めた。
「『Aランク冒険者【移動要塞】のジュードがこの私【拳嵐業火】のシュトロハイム・デオニーソス・ミューザー・ギルドを、魔力を用いない純粋な殴り合いとはいえ打ち負かした。彼の者は本来の自分の戦い方を行わず私のやり方で私を打ち負かした。この結果は私が全盛期の頃では絶対に起こり得なかった結果であり、しかし推測ではあるが全盛期の私でも結果は変わらなかっただろうことをここに明記する。故に私シュトロハイム・デオニーソス・ミューザー・ギルドは冒険者側ギルド規約並びに職員側ギルド規約に則りAランク冒険者【移動要塞】のジュードのSランクへのランクアップを推薦する。』
以上でございます」
読み終えた姐さんは中身を封筒に仕舞って机に置いてデオニーソス様の方へ移動された。
デオニーソス様は姐さんに渡された封筒を開いて再度中身を確認したあと、何やら満足そうな表情をして何度か頷いて俺の方を見た。
なんだか変な予感が……、
「リューベルバルク・フルシュレイダー・デューク・デオニーソスの名に於いてシュトロハイム・デオニーソス・ミューザー・ギルドの推薦を受理する。Aランク冒険者【移動要塞】のジュードよ、今この時を以てお前にSランクの地位と名誉を与える」
何がなんだかわからず、自分でもわかるほど目を白黒させながらもなんとか「ありがとうございます」とだけ返事してその場に固まる。
……やっぱりな。というか、待ってくれ。話が急展開過ぎる。何故こうなった?俺はただ、この街に慰安に来ただけだった筈だ。それが何故こうなった?
俺が混乱していることがわかったのか、デオニーソス様はニヤけた表情をしながら事情を説明してくれた。
「さて、混乱しているなジュードよ。何故いきなり自分がSランクになったのか理解が追い付いてないようだが、これは君がシュトロハイムに勝った時点で確定していた事だ」
「……?」
「冒険者側のギルド規約のランクに関する所にはランクアップに関する項目が有る。この事については認知しているな?」
「まぁ、はい。ランクアップはそのまま直接収入に繋がりますし、そこについてはちゃんと記憶していますが…、Sランクへのランクアップには確か、Sランクに相応しい実力が必要だった筈では?」
そう、ギルド規約にはしっかりと『Aランク依頼の連続達成数が三十以上で、尚且つSランクというランクに恥じないSランクに相応しい実力が有るとギルド長並びに第二階位以上の貴族からの1つ以上の承認を得た者のみランクアップする』と有った。なんだかんだSランク冒険者ってものに憧れた事もあった。だからランクアップの条件はしっかり把握してる。してるからこそ何故俺がSランクなのかがわからない。
別に俺はまだハゲより強いとは思ってない。今回はたまたま勝てたが、それも結局はガチじゃなくてただの喧嘩とも呼べない戯れ合いレベルの殴り合いだ。
ギルド長の承認と第二階位以上の貴族からの1つ以上の承認というのは、まぁ、今のやり取りから察するに俺がSランクへの崖を2つほど昇りきったというのはわかる。わかる、が……。
「俺はまだハ……、シュトロハイムギルド長より弱いと思ってます。今回はたまたま勝てたが、それこそマグレだ。本気で殺り合えば俺が恐らく敗ける。元Sランクの引退した冒険者相手とはいえだ。安定してあの人に勝てるほどに強くなった時にSランクへ上がれるのなら納得して、喜んでランクアップする。だけど現時点ではまだ俺は実力不足だと思ってる。だからデオニーソス様、Sランクへのランクアップは辞退させてもらいます」
俺がそこまで言い切ると、デオニーソス様は笑い出した。ついでに姐さんも。
何故笑われているのかわからないが、これまでの経験からこの後どうなるかがわかり、気落ちする。
ハァー、マジかよ……。
「ジュード、面白い事を言うな。君の話曰く、例えマグレとはいえシュトロハイムを降してSランクになれたというのに、満足しないと?」
「そりゃギルド長に勝てたのは嬉しかった。嬉しかったけど、それとこれとは別だ」
「そうかそうか。向上心の有る若者というのはそれだけで活気が有って良い。
だがな、ジュード。AランクからSランクへのランクアップには本人の意思は反映されないんだ。
ミーミア氏、冒険者側ギルド規約第五条第二項のAランクまでのランクアップの条件とSランクへのランクの違いについてジュードに説明してやってくれ」
「わかりました。
ジュード。ギルドランクのランクアップは全て該当冒険者の意思によってランクアップするかどうかを決められるのは知っているな?」
「……あぁ」
「しかしこのランクアップの条件は、先ほどデオニーソス様が仰られた通りSランクへのランクアップの条件はAランクまでのランクアップの条件とは違うのだ」
「………あぁー、そういえば、そう、だった…」
そこまで丁寧に説明されて何がどう違うのかわかった。そして何故俺がSランクに強制的になったのかも。
Aランクまでのランクアップの条件はギルドの提示する基準をクリアして、試験を受けて合格した時、本人の意思でランクアップするかどうかを決められる。『ランクアップすることが出来る』と書いてあった。対してSランクへのランクアップはギルド長と侯爵か辺境伯以上の爵位を持ったお貴族様の承認が1つ以上有れば、強制的にSランクへランクアップさせられる。そこに本人の意思が入る混む余地は最初から記載されていなかった。
俺は、本来駄目だとわかっていても、どうしても我慢出来ずにソファーへと体を大きく預けてダラけた。デオニーソス様じゃなきゃ絶対に打ち首ものの所業だ。デオニーソス様が打ち首にしないとわかっててやったが、なんにせよ、というかなんで、ハゲを倒さなきゃ良かっ、ハァー……。
こうして、『剣盾の誓い』を脱退して1週間以内に俺はSランク冒険者になってしまった。
今後の事を思うと慰安出来そうになくて泣きそうだ……。
【ミーミア・デオニーソス・ギルド】
デオニーソスのギルド長シュトロハイムの奥さん。年齢は38歳。男の子と女の子の子を持つ茶髪赤目な2児の母。世間一般的に『理想の女性の体型』と言われるような体型をしていて顔も美人。本編で主人公が語ったように、この年でまだ若者に20前後の美人と間違われる、と言えばどれ程の美貌の持ち主かは誰でもわかるだろう。
シュトロハイムが大好きなデオニーソスの副ギルド長。何でも奥さんの方が最初にシュトロハイムに惚れて、見事落としたんだとか。
【アッシャンベルド・バロン】
デオニーソスを治めるリューベルバルクに仕える男爵家出身の男。41歳。貴族の子供が通う学院でリューベルバルクに出会い、以後彼の従者となった。髪は綺麗な銀髪を後頭部部分で纏めている。瞳は紫。
色々有って、今は実家と絶縁状態になっているため家名は無い。しかしリューベルバルクに仕えているため、彼の権限で男爵の爵位を貰い、フルシュレイダー家の執事長を務めている。
このアッシャンベルドという名前もリューベルバルクが付けたもの。
【リューベルバルク・フルシュレイダー・デューク・デオニーソス】
デオニーソスの地を治めるフルシュレイダー家の当主。年齢は42歳。髪は茶髪で瞳の色は青。実はシュトロハイムとは親友の仲という噂が……。
所謂『有能』が擬人化したような人。3人居る娘が可愛くて仕方がない。ただ娘達はあまり表には出さないが、思春期特有の反抗期により父親であるリューベルバルクの事を嫌っているとかいないとか……。
実は昔、ミーミアに告白して色々有って最終的に肋を3本ほど折ったとか折ってないとか。