04 人質をとられた時
それは確か勇者達と一緒に旅をする事になった数日後のことだった。
魔王軍の一部が、辺境の村を襲っている場に出くわしたのだ。
勇者たちはこれを素早く掃討したんだけど、相手の方に頭が良い個体がいた。
魔物はただ人を襲うだけに思えるけど、強力な個体の中には、時々人間と同じように思考する奴もいるのだ。
勇者様は、念入りに魔王軍を打ち滅ぼしたけど、生き延びていた個体がいたらしい。
その個体によって、村の人が人質に取られてしまった。
当然、その事実を知った後、その人質を助けるかどうかという話し合いが行われたのだが、
勇者様の口から出た一言は、
「見捨てよう」
だった。
後は「罠だと分かりきっているのに、突っ込む馬鹿はいない」とか「小を切り捨てて大を助けるのが理にかなっているとか」そんな話が続いた。
言ってる事は正しいけど、それじゃ村人たちが納得しない。
聞いてる人達もほら、わなわなし始めてたし。
だから仕方なく。
「えーと、何とか助けてあげられませんかね」
俺が口出しする事になったのだ。
仕方なくても。正しさの象徴である勇者様が、そんな損得勘定を前面に出しちゃだめでしょう。