08 臣従儀礼
○女岩島診療所。診察室。夜。
白衣の杏奈とあゆみを前に考え込む育人。
育人「右手を上げろ!」
杏奈とあゆみ、揃って右手を上げる。
育人「左脚を上げろ!」
杏奈とあゆみ、揃って左脚を上げる。
ふらふらと倒れそうになる二人。
育人「右脚を上げろ!」
右脚を上げようとして、尻餅をつく二人。
育人「あははは!何やってんだ、二人とも!」
面白そうに笑う育人。
あゆみ「育人が笑った!」
杏奈「初めて育人の笑顔を見たわ」
うっすらと涙ぐむ二人。
育人「………お前ら、俺をからかってバカにしてるんだろう!」
顔を赤らめ、興奮する育人。
育人「よし!二人とも服を脱げ!」
杏奈「わかりました」
なんの躊躇もなく服を脱ぎだす二人。
育人「えっ!?ちょ、ちょっと………!?」
目を丸くしてその様子を見ている育人。
一糸まとわぬ姿の二人が育人の前に立つ。
育人「(顔を背けながら)そこまでやるのか!?お前ら、アタマおかしいんじゃねぇの!」
杏奈「自分でも愚かな行動をしているって分かっているわ。でも、育人のためならどんなことでもしてあげたいの!理性ではどうにもならないのよ!」
あゆみ「育人!私達を育人の奴隷にして!なんでも言うこと聞きます!」
育人「ふざけンな!だったら二人で殴り合ってみろよ!」
一瞬の逡巡もなく、あゆみの頬を拳で殴る杏奈。
あゆみの口元から血が流れる。
あゆみ「ち、ちくしょう!」
掴みあって殴り合う二人。
床に倒れて転げまわる二人。
育人、唖然とした顔で二人を見ている。
あゆみが椅子を掴んで、杏奈の頭を張り倒す。
吹き飛ばされ、ガラス棚に叩きつけられる杏奈。
ガラス棚が倒れ、床にメスやピンセットが散乱する。
杏奈とあゆみ、互いにメスを取って立ち上がる。
メスを構えて睨み合う二人。
育人「やめろ!!」
育人が叫ぶと二人の動きがピタッと止まる。
育人「ハア!ハア!」
息を荒げる育人。
育人「先生!その看護師を殺せ!」
杏奈「はい!」
メスを振りかざす杏奈。
目を閉じ、顔を上げ、大人しく自分の喉を差し出すあゆみ。
杏奈がメスであゆみの喉を切り裂こうとする。
育人「止まれ!!」
育人が寸前で杏奈の手を抑える。
育人「………わかった!二人ともマジなのはわかった!」
杏奈「ありがとう!嬉しいわ!」
二人は育人の前に跪き、自分の両手を合わせて差し出す。
一瞬、ためらう育人。
育人はおずおずと自分の両手で二人の両手を包みこむ。