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03 葬儀式場

○公民館。夜。

 「儀 藤原大志葬儀式場」の立て看板。


 喪服姿の夫婦、村長と妻の房江(42)とセーラー服の村長の娘、美咲(17)が公民館に入ってくる。


美咲「なんで私があんなゴキブリの葬式に出んとあかんの!」

村長「これ、わがまま言うんやない、美咲!どんな乱暴モンでも死ねば仏さんや。村長一家が葬式出んでどないする!」

房江「それに藤原育人は美咲の学校の後輩やろ」

美咲「関係ないわ!育人なんか小学校の時に見たきりや。いっつも薄汚い恰好した陰気なヤツ!一緒に死んだらよかったのに!」

村長「これ!滅多なこと、言うんやない!」



○同、葬儀会場。

 質素な祭壇が飾られた会場にはまばらな弔問客。

 学生服を着た育人と喪服姿の森田所長が一番前に座っている。


 村長を見つけて、立ち上がる森田。

「二人とも事故死ということで落ち着きましたわ」

森田「お手数をお掛けしました」

 深々と頭を下げる森田。

村長「なあに、駐在一人の狭い島のことです。どうとでもなりますわ」

森田「まったく、どうして平塚があんなことをしたのか……。いまだに信じられません」

村長「ところで、この子はどうなるんやろか?」

 俯いて座っている育人の方を見る村長。

森田「しかるべき施設に入ることになるでしょうね」


 房江が育人に話しかける。

房江「育人!あんた、焼香したんか?」

育人「別にいい…」

房江「とっとと焼香しなさい!」

 房江、苛立たしげに育人の手を引っ張る。

 と、房江の全身に衝撃が走る。

 上気した顔の房江、潤んだ瞳でじっと育人の顔を見つめる。


村長「どないした、房江?」

房江「――ねぇ、あなた。この子、うちで引き取ってあげへん?」

村長「な、何を突然、言い出すんや!?親戚でもないのに!」

房江「ええやないですか。貴重な若者が女岩島から流出するのを防ぐんは、村長の仕事やないですか」

村長「本気なんか、お前?」

房江「この子のことは島中の者が知っとる。村長はかわいそうな孤児を引き取った人格者や言うてええ宣伝になるんとちゃう」

村長「宣伝か……」

房江「来年はまた、選挙があるんやろ」


美咲「なにアホなこと言うてんの!うちは絶対反対やからな!」

 両親の会話を聞いて狼狽する美咲。

森田「本当に育人君をお宅で引き取って下さるのですか、奥さん?」

房江「うちは旧家で無駄に部屋だけ多くて余っとるし。離れに住んでもらったらええやろ」

 房江、育人の手を握り締める。

房江「藤原育人くん!今日からは私があんたの母親代わりや!わかったな!」

 怪訝な表情の育人。

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