02 魔少年
○二階建の古アパート。
ドアをノックする森田所長。
森田「藤原さん!藤原大志さん!」
塚原「お留守みたいですよ。出直しましょうよ」
不安げな表情の塚原。
すっかり腰が引けている。
と、ドアがいきなり開く。
塚原「ヒィッ!」
思わず悲鳴を上げる塚原。
暗い室内から、無精ひげだらけの狂暴な顔つきの藤原大志が現れる。
大志「なんだ、おめぇら?」
平塚(ヤダ!酒くさい!)
村長「大志。本土から児童相談所の所長さんが来られた。育人のことで話があるんやと」
大志「児相か?児相なんぞに用はねぇ!とっとと帰りやがれ!」
ドアを閉めようとする大志。
森田「そ、そうはいきません!」
森田がドアを抑える。
森田「育人君は全く中学校に行っていないそうですね。それに、ご近所の方から育人君が虐待を受けているという通報がありました」
大志「虐待だと!どこのどいつがそんなことタレこんだ!」
と、部屋の奥から育人のうめき声が聞こえる。
育人「ウ、ウウッ……」
森田「失礼します!」
大志の脇をすり抜けて、室内に入る森田所長。
ゴミだらけの暗い部屋。
床に横たわる育人。髪はボサボサ、ガリガリにやせ細り、全身傷だらけ。顔も腫れ上がって明らかに虐待されている。
森田、育人を抱き起す。
森田「何てむごいことを!」
大志「てめぇ!ぶっ殺すぞ!」
大志、森田を殴り倒す。
村長「大志!やめんか!」
大志の背後から村長が必死にしがみつく。
大志、なおも倒れた森田を蹴りつける。
ガタガタ震え、後ずさりして、逃げ出そうとする平塚。
と、平塚の足首をつかむ手。
倒れていた育人の手である。
育人「助けて……」
育人が平塚を見上げる。
育人の眼が妖しく光る。
と、平塚の全身に電流のような強い衝撃が走る。
平塚、床に転がっていた一升瓶を拾い上げる。
平塚、大志の頭を背後から一升瓶で殴りつける。
大志「ウガアアッ!!」
一升瓶が割れ、頭から流血する大志。
目を丸くして驚く森田と村長。
よろけながらも、鬼のような形相で平塚を睨みつける大志。
大志「この…糞アマッ!ぶっ殺してやる!」
平塚に掴み掛る大志。
平塚、下半分が割れた一升瓶を振りかざして、大志の顔面に突き刺す。
大志「ぎゃああああ!!」
顔を両手で覆って悲鳴を上げる大志。
平塚、大志に飛びかかる。
窓ガラスを突き破る平塚と大志。
森田「平塚君!」
割れた窓から階下を見下ろす森田。
地面に折り重なって横たわる血塗れの平塚と大志の姿。
森田「な、なんてことだ……!?」