21 保護者
〇女岩島小中学校、保健室。
育人「無理するなよ、杏奈。俺が自分で血を採ればいいんだろ。やり方を教えてくれ」
杏奈「いえ。育人にそんな危険なことさせられないわ」
育人「たかが採血ぐらいで大げさな!」
あゆみ「先生。自宅で血糖値を測るための市販のキット、あれに採血用の穿刺器具が付いていますよ」
杏奈「ああ!あれなら痛みもほとんどないし安全よね。あゆみさん、ナイスよ!」
あゆみ「えへへへ!」
あゆみ、ボールペンのような形をした採血用穿刺器具を育人に手渡す。
あゆみ、育人の手のひらの親指の付け根をアルコール消毒する。
あゆみ「指先より、親指の付け根の方が痛くないからね」
親指の付け根に採血用穿刺器具の先端を当てる育人。
あゆみ「それじゃあ、穿刺ボタンを押して」
あゆみ達、見ていられなくて目を逸らす。
カチッと音がして、育人の親指の付け根に小さな血の粒が現れる。
杏奈、検査紙で血を一滴すくい取る。
あゆみ、大急ぎで育人の手に絆創膏を張る。
杏奈「随分と待たせたわね。果乃ちゃん」
果乃、すっかり怯えている。
果乃「な、何をするの?痛いのいやよ!」
杏奈「大丈夫よ。果乃ちゃん。痛くも痒くもないから」
杏奈、果乃の腕を取る。
杏奈「さあ、指を出して」
果乃「怖い!」
杏奈「早くしなさい!せっかくの血液が乾燥してしまうわ!」
杏奈、育人の血を果乃の指先につける。
ピクッと痙攣する果乃。
杏奈「どんな気分かしら?」
果乃「なんか変!胸が、胸が苦しい!育人お兄ちゃんの顔が頭に浮かんでくる!」
あゆみ「やりました、先生!」
杏奈「成功ね!育人の血には女を母獣にする力があるわ」
果乃「育人お兄ちゃん!」
泣き顔で育人の名を呼ぶ果乃。
育人「よしよし。大丈夫だ。泣くんじゃない」
育人、果乃の頭を優しく撫でる。
杏奈「随分と優しいのね」
育人「子供だからな」
杏奈「自分だって子供のくせに」
育人「どうしてこの子達は泣くんだろう?」
杏奈「きっと自分の感情の変化を理解できなくて不安になるのよ」
育人「ふーん……」
○海沿いの道路。夕方。
診療所の車を運転する杏奈。
助手席にはまゆみ。
後部座席に座る育人。
育人(実験は成功した。学校にいた女教師とすべての生徒は俺の保護者だ。
保護者は決して俺を裏切らない。けっして俺を傷つけない)
物憂げに外の景色を眺めながら物思いに耽る育人。
育人(もっともっと保護者を増やすんだ!島中、いや、日本中の女を俺の保護者にしてやるんだ!)




