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ネコと冬のお母さん

作者: 天野 進志

  ネコと冬のお母さん



 ストーブの恋しい季節がやってきました。


 朝、お母さんがストーブを点けたので、ネコはその前に行って、うずくまりました。


 ストーブの前は、いつもしあわせです。


 やがてお父さん、子どもたちも起きてきて、朝ごはんを食べて出ていきます。


 そしてお母さんが朝ごはんを食べて、洗たくを始めたら戦いの始まりです。


 お母さんは洗たくにストーブはいらないので、消してしまいます。


 ネコは恨めしげにお母さんを見つめますが、お母さんは気にもとめず洗たくです。


 ストーブを点けられないネコの負けです。


 お母さん、悪い人です。


 ネコはがっくりと肩を落として、そこを離れます。


 ストーブがなければ、あそこです。


 そこは南側の窓の下で、早速お日さまの一番よく当たる真ん中に座ります。


 今度はネコの勝ちです。


 ネコが幸せな気持ちになって、うとうとしていると、洗濯物を持ったお母さんが、またも登場です。


 「どいて」


 ネコは動かずに、丸くなっています。


 するとお母さんはネコをよけてベランダに出ると、手際よく洗濯物を干して、部屋に帰っていきました。


 ネコは暖かさが減ったことに気が付きました。


 洗濯物が影になって、せっかくの場所が台無しになっています。


 せっかく勝ったと思ったのに、また負けです。


 お母さん、悪い人です。


 ネコはせめて一番お日さまの当たる場所にと、もぞもぞ体を動かします。


 すると、


 カタン


 部屋の方で、なつかしい、大好きな音が聞こえました。


 ネコはパッと目を輝かせて、すすすっと部屋に戻りました。


 やっぱりです。


 お日さまよりも大好きな、こたつです。


 お母さんが、やっと出してくれたのです。


 お母さん、いい人です。


 ネコはこたつにもぐりこみました。


 一年ぶりのしあわせ部屋です。


 そこにお母さんが、おかしとお茶をもって、こたつに入ってきました。


 こたつの真ん中で温まっていたネコは、仕方なく端によけてあげます。


 こたつを作ってくれたから、今回だけは許してあげます。


 端でも温かくって、しあわせです。


 少しするとお母さんが、足を伸ばしてきました。


 その足がネコを発見したようです。


 足はネコを追い出そうとします。


 そこまでされては、ネコもだまっていません。


 再び戦いが始まりました。


 ネコパンチです。


 一発、二発。


 あれ、全然効いていないようです。


 なんと、お母さんは厚手のズボンをはいています。


 これでは、ネコパンチも効きません。


 でも、そんなことで、このしあわせのお部屋は渡せません。


 ガブリ


 パンチがだめなら、かみつきです。


 一瞬ビクリとした足が、本気を出してきました。


 大きく動いて、ネコをこたつの外に追い出しました。


 フッ ニャニャーゴ


 ネコは転がされて、寒いこたつの外です。


 お母さんは、何事もなかったように、テレビを見ながらお菓子です。


 ニャーゴ


 不満たっぷりに一声鳴くと、お母さんはチラリとネコを見ました。


 でも、すぐにテレビの方を見ます。


 お母さん、悪い人です。


 それでもネコは、こたつの角にすき間を見つけました。


 ここからなら、そっと入れそうです。


 でも、お母さんは一枚上手でした。


 パッと足を動かして、こたつの布団を押さえたのです。


 これでは、どうやっても入れません。


 ネコ、完敗です。


 ニャーン


 ネコはお母さんに擦り寄って、甘えた声で鳴きました。


 するとお母さんが、こたつと自分の間にすき間を作ってくれました。


 ネコは、するっとそこに入って、丸くなります。


 ここなら、こたつの中じゃなくても、あったかです。


 お母さんはネコの頭をなでてくれました。


 お母さん、やっぱりいい人です。


 勝負は、引き分けでした。



 ネコとお母さんの戦いは、明日もあります。

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