散りゆく花弁は幸福
これは作者が「楽園に来たのに全然幸福度が上がってない!」と嘆く少女のイメージを最大限儚くしてどこか不思議な雰囲気を楽しむために作った作品です。
雰囲気だけでは生きていけないわ!というお方はお読みになるのは控えた方がよろしいかと思います。
果てのない花畑。いつも君はそこにいる。色とりどりの花が咲き乱れているのに、その場所はいつも色彩に欠けていた。その中で一人ぽつりといる君は寂しそうで、決まって同じ言葉を投げかける。
「どうしたの?」
振り向く君の顔はいつも遠すぎてよく見えない。それがもどかしく、君に近づきたいのに足が動かない。
「何故か悲しいの。」
君は不思議そうに答える。悲しいことが本当にわからない君の声はまるで幼子のようだ。花を撫でる君はどこからどうみても大人なのに、側に行ってあやしてあげたくなる。
「ここは楽園。楽園にいる私は幸福なはずなのに。悲しいの。」
誰かの叫び声が聞こえる。
「楽園は夢の場所。」
耳鳴りのように続くその悲鳴は君の声を呑み込んでいく。
「また、間違えたのかな。」
風にさらわれた花弁たちが視界を埋め尽くす。
間違えた君は彼方へと消えていく。ここは彼女の居場所。僕がいるべきはここではないのだから。
「もう一度、最初から。」
遠くの君は僕がいなくなったことには気づかなかった。