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3月13日は3話更新しています。ご注意ください。


「本日はお買い物に出かけます!」


 これから日課になるであろう、気まぐれ草の水遣りを子供たち4人と楽しく終わらせて、朝食を終えた後に、この場にいる全員に向かって告げる。


 ちなみに今日の朝食は親方ことバッカスさんも一緒だ。

 お世話になっているお礼にエイシアさんの手料理を食べさせてあげるという配慮をしたわけさ。


 そこは常識人の親方だけあって、食器の片付けは親方が引き受けてくれたが、私の便利魔法でお湯を出したおかげであっという間に終わった。


 片づけを終えた時に「確かに一家に1台、クロムウェルの旦那が欲しくなりますね」と呟いたので、私の2つ名が『一家に1台』になる日も遠くないだろう。


「お兄ちゃん、何を買うの?」


「だから、お兄様は私のお兄様です!」


 最年少のメイの発言に、さすがの妹の発言は大人げない。

 表立って争っている訳ではないが、メイには悪意がなく、メイの姉役のナズリーンと妹のマーガレットが対立している構図のようだ。


 その対立も微笑ましい範囲なのか、エイシアさんも母もニコニコと見つめているだけで、特に口は出さない。

 私も子供のケンカに口を挟むのは趣味じゃない。決して、子供でも女のケンカに口を挟むのが怖いわけじゃないからな!


「買うのは、みんなの服です」


「およふく買ってくれるの?」


「あぁ、そうだよ。それに働いて貰ったお金で欲しい物があれば買うと良いよ。これからは時々、買い物に連れて行ってあげるからね」


 この私の言葉に反応を示したのは、意外にもまだ私に懐いていない最後の女の子だった。

 明らかに、ちらちらとこちらを見て、そわそわ仕出した。


 見ている分には楽しいが、護衛の人たちや出かけた先のお店の都合もあるので、楽しんでいる時間はない。


 護衛は、オルフォース公爵家が用意してくれている。私1人で出歩いても、誰も止めたりしないだろうが、護衛の人たちが苦労するだけなので、予定は事前に相談している。

 今回も、ちゃんと予定通りの行動で、エイシアさんも含めて大人たちは全員予定を知っていた。


 子供たち向けのサプライズという訳だ。


「今日は馬車に乗って全員でお出かけします!」


 荷馬車の荷物が片付いたので、子供たちを含めて全員乗せても問題ない。

 留守番については、周りに大工の方々がいるし、一応衛兵の詰所もすぐ目の前にある。だから全員で出かけても、こちらも問題ない。全て計画通りだ。


 まだ私に心を許していない最後の女の子がそわそわした事で、釣られて反抗期の男の子もそわそわする。

 見ていて微笑ましいほどに、男の子が誰を好きなのかが良く分かる。


 ただ、しっかりとアピールをしないと、どこかの孤児院の前の衛兵さんたちみたいになっちゃうぞ?





 幌を張った荷馬車なので、朝早くから移動をしても、そこまで寒くなかった。まあ、子供たちがはしゃいだ熱気のおかげかもしれない。

 ついでに、御者は大工の人だ。

 

 私が御者をしようとしたら、全員に止められたので仕方がなく、子供たちの相手をしている。

 旅の相棒(うま)たちとの交流もしたかったのにな………。帰ったら少しブラッシングでもしてやろう。


「で、でけぇー」


 本日のお買い物場所である、とある公爵家御用達のお店に到着して、つい男の子が言葉を溢した。

 気持ちは良く分かる。私が見てもデカイわ!って思う。


「クロムウェル様と皆様、本日は起こし頂いて、ありがとうございます」


 親方の誘導で、店に入ると店の支配人らしい方と従業員総出でお出迎えしてくれる。

 ………絶対に孤児院の人たちが買う服を売っているようなお店じゃない。


「クロムウェルの旦那。言いたい事は分かります。大丈夫です」


 何が大丈夫なのか分からないが、とりあえず信用している親方の事を信じる事にする。


「開店前の時間に無理を言ってしまい、申し訳ありません」


「いえいえ、オルフォース公爵夫人の大事なお客様と申し付かっておりますので、お気遣いは不要でございます」


 ここは夫人が管理しているお店なのか………。

 最初にこの街に来た時のキーマン商会とは雲泥の差だ。この店の差がそのまま公爵と夫人の差なのだろう。


 お礼を言ったところで、従業員が案内をしてくれる。

 どうやら、このお店は、使用人やオルフォース公爵家が関わる人たちの為に、幅広い層の商品を取り扱っているようだ。

 まあ、孤児院の子供がお買い物出来るレベルの商品はなかったがな………。お小遣いを増やすか………。


「金額の事については、ご心配の必要はございません」


 私のまた悪い癖が出たのか、考えている事が読まれてしまい、そっと支配人に耳打ちされる。

 奥様やお嬢様のような方だったら、イチコロの魅惑ボイスだった。なるほど、商売とは理屈だけでは上手く行かないわけか。


「では、子供たちも退屈しないうちに、従業員に商品の案内をさせましょう」


 支配人の声を皮切りに、固まっているエイシアさんや子供たちが、従業員の手によって攫われていく。

 なかなかに良い手際だ。


 そんな中でマイペースを崩さないのはマリーだけであった。担当になった従業員の方も苦戦しているようだ。


「クロムウェル様が関わりなられている美容薬が一点だけオークションに出品出来まして、その売り上げのおかげで、この店の全ての品をお渡ししても1割程度の金額にしかなりません。ご安心してお買い物下さい」


 うむ。つまりは、お礼に何でも上げるよって事か。どれだけ気まぐれ草って価値が高いんだよ!

 やっぱり女性の美容に対する意識は甘く見てはいけない………。

 

「ちなみにお買い上げ頂いたのは共和国の方かな?」


「………さようでございます」


 なるほど、オークションもサクラを使って、出せる金額限界まで引き出して絞りとったのだろうと予測も付く。

 公国と共和国の争いは経済戦争になりそうだな。


「公爵夫人には、感謝致しますとお伝え下さい」


「かしこまりました」


 随分と儲けたみたいだから、私も遠慮する必要はなさそうだ。

 そして、前に金に糸目はつけない、いくらでも使っても構わないと言われていた事が、大げさな表現ではなく現実だと悟った訳で、公爵夫人には逆らいませんよ。と伝えて貰う事にした。


「それでは、私は奥様のご案内をさせて頂こうと思います」


 裏向きの用件が終わったので、支配人は苦戦している店員のフォローに回る事にしたようだ。

 マリーは強敵だから、是非とも頑張って貰いたいものだ。


「クロムウェル様のご案内は、(わたくし)が勤めさせて頂きます」


 支配人に代わって声をかけてきた相手を見て、驚いた。

 なぜなら髪がピンク髪だったからだ。冗談で言った事なのに、本当に存在しているとはピンク髪。ファンタジーって恐ろしい!


「ご要望頂いております薬草類は、外に用意してございます」


 そう言って、案内をしてくれるピンク髪の店員は、明らかに色仕掛けを含んだ動作をいちいち主張してくる。

 あれだ。ひと言で言えば、あざといだ。


「お兄ちゃん! 私も薬草が見たい!」


 そう言って、名乗り出たのは最年少のメイだった。この子は本当に花が好きなのだと分かる。


 メイがついて来ると、必然的に姉役のナズリーンも付いて来る。ナズリーンは本当にしっかりとお姉さんをしているようだ。我が妹よ。お前も見習え。


「私もご一緒させてください」


 さらに、こちらの様子を見ていたエイシアさんも同行を求めてくる。さらに必然的に、エイシアさん大好きのシルキーと、エイシアさんに惚れた親方も同行して、結局大人数で見させてもらう事になった。


 ピンク髪の従業員に案内されて、庭に出ると、温室のようなガラス張りの一室であった。

 なるほど、凄くお金が掛かっている事が分かった。


 案内してくれたピンク髪の従業員は、1つずつ、目的の薬草について説明をしてくれる。

 その際にさりげないボディータッチがあるが、私は気にしない。


 どちらかというと、シルキーがその都度、割り込んできてくれるのが嬉しく思える。

 それに、エイシアさんの視線も痛いので、色々な事を頑張って気付かない振りをしている。


 まあ、なんだ。そんなに心配しなくても大丈夫だよ?


 

 この人はお仕事(・・・)をしているだけだからね?



-後書き-


今日1日で3話更新とかしていますが、基本この作品は不定期更新です。

3000文字を超えた段階でキリが良いところで、早く更新するようにしています。

突然数日空く事もあるので、あまり期待しないで下さい。

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