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019

これまでの政治や貴族や国お話は、今後に登場するキャラの伏線です。ここから少しスローライフっぽくなるように頑張ります。


 祖国が滅亡して、移住してきた国でも国同士の争いの火種が燻っている事が分かり、絶賛絶望中の私クロムウェルが、愛憎劇渦巻くオルフォース公爵家からお送りしております。


 目の前には、私が転生してから今までに見た事のない程の絶世の美女であるオルフォース公爵夫人がおります。遠くから眺めるだけなら眼福そのものでございます。

 現在、そんな公爵夫人にインタビュー中であります。


 色々と知っちゃっている私をどうしたいの? と………。


 結果としては、孤児院および無人区画については、全権を委任された。

 資金についても、金に糸目はつけないと言わんばかりの額を提示された。


 話に聞くとそのお金は公爵のお小遣いらしい。

 庶民と貴族との金銭感覚の差に辟易したが、「これで夫も貢物が出来なくなるでしょう」とのお言葉で全てを察した。本当にこの美人な公爵夫人が居て浮気する理由が分からん。


「息子がクロムウェル様へ危害を加えようとした件、申し訳ございませんでした」


 公爵夫人との話し合いが終わり、ビクビクと怯えた侍女に帰宅の案内を受けてお屋敷の玄関まで来た時に、マックスさんがお見送りに来てくれた。


 まあ、危害を加えようとしていた詳細は聞いていないから何とも言えないが、私は孤児院を守りたかっただけなので、その事は追求はしなかった。


「お忙しいと思いますが、質問をしても宜しいでしょうか?」


「はい。クロムウェル様の件に関しては最優先で対応するように指示を頂いております」


 公爵夫人に言われたように破格の待遇だ。

  

「レオノーラさんは、どうなるのですか?」


 執事長であった父の指示を聞いたレオノーラには、そこまで罪はないように思える。

 だから、マックスさんと共に姿を現さなかった事に少し心配になった。


「私から直接(あるじ)の意向を伝えておりましたが、それを破りましたので、領地へ送り婚姻を結ばせる事に致しました」


 なるほど、知っていた上で、自分の父親の方の(めい)に従ったのか。

 という事は、最初から私はレオノーラのお眼鏡に適わなかったという訳か………。期待していた自分が恥ずかしい。


 レオノーラは公爵の落胤であれば、それは領内における政略結婚向きだろう。

 彼女の気持ちが誰に向いているかは分からなかったが、せめて少しでも幸せになることを祈ろう。まあ、誰と婚姻を結ぶかは予想が付いているが………。幸せまでかは分からん。


「それと当家との連絡でございますが、近いうちに相応しい人物を紹介させて頂きます」


「その件は公爵夫人から伺っております。オルフォース公爵家と連絡がとりたい場合はバッカスさんに頼むようにとも」


 私が連絡を方法を把握している事を確認できて、マックスさんが大きく頷いて、私をここまで案内した侍女を睨みつける。


「現在、我が家の内情は混乱しておりまして、満足なおもてなしを出来ず、申し訳ございませんでした」


 元執事長が背任行為を働いたのだ。さぞかし、お屋敷内での掃除も必要なのだろう。

 案内をしてくれた侍女も、私の立ち位置を知って怯えているという事は何かやましい気持ちがあったのだろう。


 だが、ビクビクと怯えられて案内されたら私も傷つく。今の私は傷心中なのだ。


「もう1つ伺っても宜しいですか?」


 マックスさんに睨まれた侍女が不憫だったので、話を逸らす。


「なんなりと………」


「公妃殿下と公爵夫人の関係をお聞きしても大丈夫でしょうか?」


 公爵夫人に直接聞く事は出来なかったが、私が馬鹿公子のざまぁ計画を残念公爵とマックスさんに話をして2日も経っていない。

 それなのにも関わらず、公妃にまで話が行っているのは、どう考えても早すぎる。


「問題ございません。特別秘密という事もございません」


 どうやら、私が知らないだけで、普通の事のようだ。


「御二方は姉妹でございます」


 うん。普通に知ってても可笑しくない話だ。私もまだまだこの国の事を学ぶ必要があるようだ。

 という事で、公爵夫人が公爵より権力を持っている理由も分かった。これで残る謎は1つだね。


「という事は、公爵夫人は元グレンスコット公爵のご令嬢という事ですか?」


「さようでございます」


 グレンスコット公爵家は、公国の筆頭公爵の家だ。その家から公妃を出した事で磐石の地位を築いている。


 つまりは、公爵夫人は、公国の女性の頂点に立つ公妃を姉に持ち、さらに公国の筆頭公爵を兄に持つ。そして、残念公爵より頭の切れる人物という訳か。

 そりゃ、オルフォース公爵家内の序列が決まるわけだ。


 ついでだから最後の謎も解いておこう。


「現グレンスコット公爵閣下は、オルフォース公爵夫人を溺愛してたりしないですよね?」


 私は案内役の侍女に聞こえないような小声でマックスさんへと問いかける。


「公妃殿下に対しても、奥様に対しても溺愛と呼ぶには少々行き過ぎた愛情をお持ちのご様子です」


 本当にどのような事でも答えてくれるようだ。だが私の破格の待遇振りに感心するよりも重要な事がある。


 アウトォォォォォ!!!!!!!!


 行き過ぎた愛情がシスコンの領域であったとしても、そりゃ残念公爵の立場はツライわ! 浮気した理由も分かるわ!!

 この国は色々とヤバイ。ヤバ過ぎる。


 丁度、スリーアウトのチェンジになったので、教えてくれたお礼をマックスさんに告げて早々に屋敷を後にする。


 私はもう2度とこの魔窟に足を踏み入れたくない。ただその思いだけが強く心に刻まれるのであった………。





 オルフォース公爵家という貴族の魔窟から無事に脱出が出来た私は、その足ですぐに孤児院へと向かった。

 早く作ろう私の安息の地を………。


「このような汚い場所へ何度も足を運んで頂き、申し訳ございません」


 私としては、馬鹿デカイお屋敷よりもずっと安心できる。小市民万歳!!


「そんな事はございません。そうでなければ、これからこちらに住もうと思いませんので」


 私の言葉に出迎えてくれた孤児院の責任者であるエイシアさんが驚く。


「ご安心ください。私の家族も共にこちらに移り住むだけです。エイシアさんも子供たちも追い出したり致しません」


 続けて出た言葉に対して、エイシアさんは安心の表情を見せる。


「どうか私と私の家族が共に暮らすお許しを頂けませんか?」


 立場が上の者がこのような言い方をしたとしても、断れる者はいない。

 だからと言って、黙って従えというつもりもない。


 真っ直ぐ誠心誠意、相手の瞳を見つめてお願いする。私の心が相手に届くと願って………。


「分かりました。よろしくお願い致します」


「こちらこそ、よろしくお願い致します」


 半分諦めの表情であったが、エイシアさんには何とか受け入れられたと考えよう。

 信頼を築くのは、ここからでも良いはずだ。


 エイシアさんとの話し合いに同席していた親方のバッカスさんも、安心している様子だった。


 その後はお約束どおりの展開だ。

 エイシアさんのほっそりとした体型だったので、食事に関しても最低限しか取れていない事が分かる。

 身体を壊したという事だが、基本的に栄養失調による不調が主な原因だろう。

 

「親方。まずは食料の調達を頼む事は出来ますか?」


「クロムウェルの旦那ならそういうと思って、多めに買いに行くように伝えてあります」


 この人も、人を束ねる立場であるだけあって話が通じるようだ。

 にやりと笑って答えた親方に、私もにやりと笑って返す。私が堅苦しい事が嫌いなのも理解してくれていたようだ。


「それと孤児院の修理に必要そうなものは仕入れに時間が掛かりそうだ」


 そう言って、バッカスさんはどこに何が修理に必要なのか細かく話をしてくれる。

 その修理が必要な箇所の1つに、孤児院の入り口の扉があった。


「あの扉の修理ですが、代わりの扉を用意する必要はありませんよ? 建物の解体をしているのでしたら、木の廃材があれば用意して貰えますか?」


 幸いな事に前世の記憶にある知識がこの世界でも役に立つ分野だった。

 田舎では専門的な大工と呼べる人は少なく、また仕事もない。そんな状況だったので、領内で必要な家の修理は私が請け負っていた。


「こんな木材だけで、曲がった扉が修理できるのですかい?」


 扉に隙間があったのは、扉に使われている木材の反りや、湿気などによる変質が原因だ。

 貧民区画の孤児院だけあって、扉は薄く、とても軽かった。


 木材の反りに関しては、魔法を使った。一家に一台の便利魔法使いの異名をとりたいと思っている。一家に一台乾燥機「クロムウェル」君。


「さすがは元貴族ですね。こんな魔法が使えるんですから」


 と、親方が納得していた。この世界には魔法がある。そして、魔法は武力になる。そうすると必然的に魔力が強いものが貴族に集まるようになる。貴族の家に魔力の強い者を血縁として迎えていけば、自然と貴族たちの魔力は高くなるという訳だ。


 次に、真っ直ぐでなくなってしまった扉を直線に戻す為に、薄い切り込みを入れて、そこに廃材を楔のように打ち込む。

 その作業をする、打ち込む箇所が増える度に、段々と木が真っ直ぐに戻るという訳だ。


 これは経験が必要な知識だ。前世の私は何かそういう専門的な仕事をしていたのだろう。


 打ち込んだ廃材の余った部分は綺麗に切り取って、平らにすれば完成だ。所要時間は僅か。修理費用も廃材だけだから実質タダ。これぞフリーライフの第一歩だ。


「こんな方法があるんですね。正直驚きました」


 作業を不安そうに見守っていたエイシアさんと興味津々だった親方からお褒めの言葉を頂く。


「とりあえずは、こんな風に孤児院は修理していきたいと思います。最低限の修理が終わりましたら、こちらに移り住みたいと思います」


 私の言葉に、段々と信頼を築いているのが分かる程に、エイシアさんの表情が和らいでいくのが分かる。


 だが、私のスローライフの欲求は満たしていないよ? 次はエイシアさん! あなたに決めた!!



 っとその前に、ロックの引導でも渡しにいこうかな?


-後書き-


感想をくれた方の中で、「ロック」という単語の数で彼がどんどん不幸にしていきました。

それも、次回で最後の不幸が彼を襲います?( ˘•ω•˘ )


出来るだけ、皆様の同情を集めるような終わりにしたいと思います。


あ、終わるのはロックだけだからね! 物語自体は続くよ٩(•౪• ٩)

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