015
あかん。熱が本格的に上がってきた。何となく最近フラグがあったんで嫌な予感がしていた………。
次話の更新は少し間が空くかもしれません………。
オルフォース公爵との話し合いを行なったあの日………。
ロックが母の目の前でくしゃみをして、マリーの恨みを買ったあの夜の次の日には、私は新たな居住地となる予定の孤児院へと案内された。
「ロック。今朝のマリーの機嫌が悪い理由は本当に分からないのかい?」
「はい。昨日の晩は私を気遣ってくれたような事を言ってくれたのに、朝起きたら挨拶もしてくれないんですよ。坊ちゃん」
孤児院へ案内をしてくれる事になったのは、旅の間に世話役をしてくれていた侍女のレオノーラで、共に馬車に揺られて世間話をしている。
共通で話題に出来そうな事は、ロックの事だったので、ロックに悩みがないか聞いてみたら、今後の生活よりもマリーの事だったという訳だ。
今朝のマリーの態度にいち早く気付いた私は、今日の孤児院の同行にロックを指名した。
仮にマリーを指名した場合は、下手したら私まで巻き添えにされかねないからだ。
そして、同席しているレオノーラは、私とロックの会話を聞いて、既に口元に手を当てて視線を逸らしている。
「ロックは、マリーがお母様を一番大事に思っているのは分かるよね?」
「もちろんです。奥様のお許しを頂かなくては、マリーに気持ちを伝える事は出来ません」
いや、そういう意味ではないんだが………。
「私は他人の恋路に口を挟むような野暮な事はしたくないけど、マリーの事を諦めたら?」
ロックとマリーを含めて、昨日のうちに旅は終わりで、この街にしばらく根を下ろす事をちゃんと私は告げた。
そして、旅が終わったら告白をすると妹と約束をしていたにも関わらず、昨日はなんだかんだで、告白をはぐらかして、最悪な事に母の目の前でくしゃみをする失態を犯したのだ。
今朝のマリーの様子は病原菌を見るような目つきだったので、望みは完全に断たれただろうと判断している。元々確率はゼロに等しかったのだ。最初から結末は変わらん。
「坊ちゃん。男が好きな女の為に死んでも守り通さないといけない意地というのがあるのですよ」
いや、ロック。お前が守らなければいけないのは、妹とした告白という名の約束だったはずだ。
全くどこまでヘタレでチキンなんだよ。さすがの私も、もうフォローしないぞ?
私とロックの会話を傍で聞いているだけに、同席しているレオノーラさんも色々と限界に近いようだ。なんか、ぷるぷると肩を震わせているしね。
「この区画は人通りが少ないんですね」
無駄な決意をしているロックを放置する事を決めて、馬車の窓から外を眺めると、明らかに国の首都というには人通りの少ない場所へと移り変わっていた。
「はい。元々この区画は貧民が多く住んでいる区画になります。共和国へ移住した者もここ10年で増えたと祖父も申しておりました」
「それと、戦争の噂があったからかな?」
「ご想像のとおりです。私たちの国が次に戦争に巻き込まれると考えた者たちも他の国へと避難していきました」
私がレオノーラに話しかけると、彼女の目にはうっすらと涙が溜まっていたが、私に対する返事の声色には、動揺などの感情は見られない。
まあ、視線の先もロックを見られないだが………。
「首都を取り囲む外壁に近づくに連れて、生活の便が悪くなるので、人通りはさらに減ります。クロム様のお住まいになる予定の孤児院の周りは既に数名しか住んでおられない状態でした」
昨日の話し合いをした時点で確認したという訳か。
そんな状況なら誰かが近づけば、すぐに分かる。秘密保持の為に、その数人さえ移動して貰えれば良いのだから、安全を得る為には悪い条件ではないようだ。
「それでも、うちの田舎よりは人がいるんじゃないですか?」
確かに。
私とレオノーラの会話に入れなかったロックの一言が、懐かしい故郷を思い出させてくれる。
うん。人の姿が見えるだけ、十分都会だ。
そんな風に納得した私に対しても、レオノーラは視線を逸らしてしまった。
少し気まずくなった馬車の中で、当たり障りのない会話をしてやり過ごしていると、御者からまもなく到着する事を告げられる。
窓の外を見るとすっかりとひと気のないゴーストタウンのような光景が広がっていた。
「親方ァ! 今日は道具を持ってくるだけで仕事をしなくて良いんですかい!!」
「うるせぇ! 今大事なお客が来ているんだ!! 黙ってしばらく住む家を決めたら、食い物でも買いに行きやがれ!!」
孤児院に到着した私たちを出迎えてくれたのは、孤児院の子供たちではなく、むさ苦しいおっさんの集団だった。
「クロムウェル様。うちの者がお騒がせしてすみませんでした。私は彼らを束ねているバッカスと申します」
おっさんの中でも一際おっさんであった人物から挨拶をされる。
「クロム様。彼は、オルフォース家が抱えている大工仕事を専門に請け負う商会の代表になります」
事前に何も説明がなかっただけに、レオノーラが補足で説明をしてくれる。
バッカスと名乗って親方と呼ばれていた彼は、どうやら現場派の人間であるらしい。うん。大工の棟梁。完璧な親方だ。
「オルフォース公爵よりくれぐれも失礼のないように、申し付かっております。部下が何か失礼を致しましたら、対処いたしますので、そちらもご容赦お願いします」
第1印象としては素直な人と言ったところだろう。商会の代表と言っても、現場の者特有の真っ直ぐで腹芸の出来ないタイプに思える。
「こちらこそ、突然、このような場所で仕事をさせてる事になって申し訳ありません」
「いえ、最近は仕事が減ってきたので、こちらはありがたい限りですよ」
仕事が減ってきたのは、この都市の住民が減ってきたせいなのか、公爵家同士の足の引っ張り合いのせいなのかは分からないが、事実のようで親方のやる気は満ち溢れている。
そして、その時、比較的良好な挨拶を交わした親方の後ろにある孤児院の窓から、ふと子供の姿が見えた。
「あぁ。クロムウェル様のお住まいはあちらの孤児院ではございません。明日から、相応しいお屋敷を建てさせて頂きます」
私の視線の先が孤児院へと向かった事に気付いて、親方がそう告げる。
だが、親方さんや、それは勘違いだ。
「レオノーラさん。孤児院とその周辺での作業について、私はどこまで口を出して構わないのでしょうか?」
「公爵様より金銭がいくら掛かっても良いので、クロム様の希望に沿うようにするよう申し付かっております」
この返事で確信した。色々と誤解がある事に。
「では、レオノーラさん。バッカスさん。孤児院の中で、一度お話出来ますでしょうか?」
私の望みは慎ましやかなスローライフであって、豪華な生活を望んでいる訳ではない。
っていうか、こんな一角に屋敷なんて建てたら、何かしていると公言するようなものだ。ただでさえ、こんな人がいない場所で作業なんてしたら目立つに決まっている。
気まぐれ草の秘密を守る気がないようにしか、私には思えない。………………いや、金と権力で握り潰す方向で動いているんだろう。
「………………あちらは、クロム様とのお話をするには、掃除が済んでおりません」
「構わないよ。出来れば、現在の孤児院の責任者にも話を聞きたいので同席してくれるように、お願いする事は出来ますか?」
私の提案にレオノーラは、孤児院へ私を入れたくないのだと態度で示したが、私はそれを拒否する。
なぜならば、このまま任せれば、悪代官とか屑領主のようになってしまうからだ。
「ラピスラズリお嬢様が、実際にこの孤児院に対して何もしていないのは、見れば分かるよ。その事が分かっている上で、お願いしているんだけど?」
すぐに返事をしないレオノーラに、こちらが引かないという意思表示をする為、再度声を掛ける。
「………かしこまりました。ただ、最低限はお茶の用意等がございますので、少しだけお時間を頂いても宜しいでしょうか?」
本当に、あの中を私が見る予定はなかったようで、私に対して勘違いされている事も分かった。
「もちろん構わないよ」
「ありがとうございます。バッカス。少し人手を借ります」
さすがはマックスさんの孫娘だけあって、手早く用意の指示を出していく。
そういえば、マックスさんの孫娘が篭絡要員とかの話があったんだったっけ。
…………ロックのおかげで、一時的には好感度が上がってたけど、我侭を言ったせいで望みが薄くなっちゃったかな?
-後書き-
たまにはまた私的な事を書きたいと思います。
知人や家族には反対されてる?内容になるのですが、
”紅茶には何をいれる?”
について語りたいと思います。
一般的にはミルクやレモン、アップルやブランデーなどなど、結構入れると美味しいものが多いと思います。
しかし! 私のお勧めはコカコーラです!
しかもゼロシュガー&ゼロカロリーの奴!!
これを読んだ方の「ないわ」の声が聞こえてくるようですが、好きなものは好きで良いじゃないですか!
あかん。こんな事を書くなんて、本当に熱が上がってきたようだ(๑•﹏•)




