もう少し話すことあると思うけど、学校のことしか話していない
夕方、修三が福岡の田舎の学校の現場で仕事しているとスマホが鳴った。休憩中なので電話にでる。残照が板敷の廊下に射し込んでいる。先程までは吹奏楽部の子供たちがうろうろしていたが、もう人の気配は無い。
修三「はい」
陽介「やあ、ブラパ?(インドネシア語でいくら?の意。この場合スロットでいくら負けたの?)」
「いや、行ってないよ」
「まーただましたなカス野郎!」
「あっはっはっは」
昼間、修三は幾つかメールを送っていた。早く行こうよ♪待ってるぜ!とか、リベンジしようぜ♪とか、今日はお前の日だ!(必殺技)ゲージ使え三本くらい!とか、いつもの適当な煽りのメールだ。そして陽介はコロッと乗ってしまう。
「じゃあ、これから行く?君が行くなら行こうかな」
「珍しくやる気だな。まあ、君が行くなら行くよ」
「明日デートだから行くなら今日の内に行かないと」
「そうか、軍資金稼ぎに行かないとな。まあ、俺まだ現場だから無理だけど」
「またか!嘘つき少年ケンだな」
「はっはっは、ケンだよ♪ところで」
「むきー!」
「ところで」
「ぬおおおおお!カス野郎!」
「あっはっはっは、頼む聞いてくれ」
「ふうっ、ふうっ、(息が荒い)何を?」
「今日は田舎の中学校の現場なんだけど、廊下になかなか良いフレーズの貼り紙があるんだよ」
「ふうん?」
「友達に『死ね』とか『消えろ』とか言うのはやめましょう、とね」
「あっはっはっはっはっは!」
「だっはっはっは、つまり俺達は中学生以下ってことさ」
「はは、君がな」
「ふ、たまに罵りあいはやめようっていうけど続かんもんねえ」
「主に君がカスだからだな」
「てへ♪明日のデートどこ行くの?」
「まだ決めてないな」
「なら、ゴミいちゃん物語の劇場版見に行こうぜ」
「駄目だよ」
「何故!?(潜水艦の艦長天才少女)」
「はっはっは、カスが」
「じゃあ、またイタリアンなメシ喰いに行くか」
「もうパスタの食べ方は要らないから」
「残念だな、優雅な食べ方できたら彼女もイチコロなのに」
「イチコロで終わりだな」
「じゃあ、イタリアカツ丼なんてどう?」
「はっはっは、また嘘臭いな」
「え、知らないの?豚カツってイタリア料理なんだよ」
「本当に?」
「本当に」
「嘘だったら金くれる?」
「ああ、いいよ。豚カツの元祖のイタリア風はね、日本のとは違ってオリーブオイルを使うんだよ」
「ふうん、」
「もう、風味が違うからね、香ばしくて、向こうではリゾットと食べるらしいよ。で、その食べ方なんだけど」
「俺、まったく期待してないんだけど」
「まあ聞け。君もきっと真似したくなる・・・『クァフ、クァフ、バク!ブシュワアッ!おっとっと、ガツガツガツガツ、ジュパジュパジュルルルルルル、ゴックンプリーズ♪』」
「あっはっはっはっはっは、野獣のようだとしか言いようがないよ」
「ちなみに全部嘘だから」
「こーのカス野郎が!悪即斬!」
「ウリイイイイイ!(ザコ吸血鬼)さ、仕事に戻るかな」
校舎内の冷えた空気が涼しくて良い。