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第4話

前回のあらすじ

いたいけな魔物を惨殺して肉を剥ぎ取り、その後やってきた女騎士を動けなくシて全身をぺろぺろした鬼畜な主人公であった

「むうう……おかしいな。もうすぐ街道に出てもいい頃合いなのに」


 あの女騎士を舐め倒した後、川に沿って歩いて森を出て。それから平原を2日ほどずっと歩き続けているのだが、なかなか街道には出られなくて困っている。地図ではとっくの昔に街道を通りすぎているのに、未だにそれらしき道には出会っていない。

 食料と水はまだしばらく持つが、起伏の多い道とも言えない平原をひたすら行くのは少し疲れる。一人旅には慣れているから心細いというのはないが、自分の見ている地図が合っているのかどうかはかなり重大な問題。もしも地図が間違ってたなら、次の街へ到着できるのはまだしばらく先になる。


「フゴオオオオオオ!」


 そしてまたやってくる魔物。左手で触れる。止める。そしてそのまま放置しておさらばする。それを繰り返すこと十何回。街道は見つからないが、ド派手な炎が上がるのは見えた。魔物の群れと戦っている。そして後ろからは停止が解けて怒り狂った魔物たちが土煙を上げながら走ってきている。

 また停止をかけてもいいが、それを向こうの連中が気づくとマズイ。魔物と人間を同時に相手するのはいくら加速しても難しいし。

 そうだ、こいつらもあそこでドンパチやってる連中の所へ連れて行こう。このモンスターたちを返り討ちにできる位の実力者なら、モンスターに追われて困っていた哀れな旅人を演じて街へ連れて行ってもらう。ここらの魔物がちょっと増えたくらいで殺されるような弱いやつなら、死んだ後に遺品を漁って街で売りさばく。

 ああ、でも可愛い子が居たら時魔法使いだとバレないよううまいことやって、いいところを見せて、あわよくばその後……うむ。その方向で。


 足を止めずにひたすら前へ。少しだけ加速した状態で目の前の連中に向かって前進する。


「燃えろ! 近寄るな!!」


 かわいい女の子が居ればと思ったが、かわいいと言えるような子は居なかった。十点満点でいうと六点くらいの少女が一人と、それを守る傷だらけの鎧を着た男が二人。男たちは少女を守るようにして立ち、剣と盾を振り回して狼の姿をした魔物を斬り殺したりいなしたりしているが……手数が足りずに押されている。周りに魔物の死骸が転がっているが、それでも少しずつ彼らの傷は増えている。このまま放っておけば死ぬだろう。まあ、よくある冒険者の最後と言ったところか。


「ハッ、そこのお前! 加勢してくれ!!」


 男の一人が俺のことに気づいたようで、大きな声で声をかけられる。


「加勢、ねえ……」


 手早く片付けなければ、後ろから追ってきてる大型の魔物たちが束になって襲ってくる。

 まあ、旅に予定外はつきもの。旅は道連れ世に情けなし、と誰かも言っていた。女の顔は合格点には少し足りないが、まあ仕方ない。まだ二日前の女騎士の蕩けた顔が瞼の裏に浮かんでるし、あれに比べれば並大抵の女は霞んで見える。普段なら八、いや七点くらいの顔なのかも。そう思えば恩を売っておくのも悪くない。

 走る勢いを落とさずに鉈を抜いて、男に襲いかかる魔物の横っ面に叩き付ける。鉈の重みと半端な切れ味を活かすための、速度が乗った一撃。凶悪な牙を持った上下の顎をたたき落とし、ひとまず一匹は絶命させたることができた。

 残りは十。俺のことを追ってきている魔物がさらに三。合計十三。


「助かる!」

「後のも手伝えよ」


 あと一息で獲物を仕留められるというところで乱入されたことと、群れの仲間を殺されたことに怒ったのか、残る十匹の注意が一斉に自分に向く。そこへ魔物の血で赤く染まった剣が視界を過り、一匹の胴を貫く。

 体勢を立て直せばまともに相手をできる程度の実力はあるらしい。


「後のってなんだ!?」 

「後になればわかる」


 鉈を右手に。左から飛びかかってくる魔物の口に短刀を振り、大きく開かれた顎をそのまま上下二つに切り離す。これで残り七匹。返り血が顔にかかるが、気にしている場合じゃない。魔法を使わずに戦うなら、一瞬たりとも気を抜いてはいけない。 


「負けてられん!」


 視界の外で肉が潰れる音と、焼ける音の二つの音が聞こえる。また二つ減ったか。これで残り五匹。と、思っていたら残りは尻尾を巻いて逃げはじめた。


「……逃げた?」

「やった、撃退したぞ!」

「一息……つける」

「休むな。立て。次が来る」


 こちらに走ってくるのは、遠目に見ても巨大とわかる大イノシシ。それが親子三匹。ひょっとするとさっきの魔物はアレを恐れて逃げたのかもしれない。


「げ、あれって……」

「討伐対象だな……でかいとは聞いてたけど」

「実物はあんなにでかいなんて」


 あまりの大きさに顔をひきつらせる一行だが、どうやらあのイノシシは近くの街で討伐対象に設定されていたらしい。道理であんなにでかくて凶暴なわけだ。


「あなたどうやってあれから逃げたのよ」

「麻痺毒を塗った投げナイフで動きを止めて、逃げた」


 動きを止めた、というところだけは真実だが、あとはデタラメ。


「……致死毒は使わなかったの?」

「仕留め損ねたら怖いだろ」


 と、こんな感じで言い訳するのがいつもの展開。大体はこれで納得してくれる。納得してくれなきゃ永遠に口を閉じさせるだけだ。


「動いてるあいつらに斬りかかるのは自殺行為だしな。魔法でこんがり丸焼きにすりゃなんとかなるんだが。お嬢ちゃんはまだ魔法使えるか?」

「さっきので使いきったわよ! なんてもの連れてきてくれたのこの馬鹿!」

「助けてもらっておいて馬鹿とは。ずいぶん厚かましいな」


 ぶっ殺してやろうか、と思った瞬間には左腕が動いて、短剣を少女の首に叩きつけようとしていた。しかし、それは間に割って入った刃毀れした剣に弾かれた。

 危うく無用な殺生をするところだった。危険を感じたり、相手に殺意を持つと考えるより早く手が動くのは直すべき癖だな。


「すまん! 頼むから許してやってくれ! お前も明らかに腕の立つ相手に喧嘩を売るんじゃない!」

「ご、ごめんなさい……戦った後でちょっと興奮してて……」


 興奮してて、か。その言葉にちょっとだけ興奮する。溜まってるのかな、俺。


「で、アレどうするんだ」


 残る一人が聞いてくるが、俺に聞かれてもどうしようもない。魔法も人が見ている前じゃ使えないし。いや困った困った。かといって他の連中の装備じゃ、あの大イノシシを相手するのは難しいだろうし。


「案はいくつか。誰かがあのイノシシの餌になって、その間に残りが逃げるか。みんなで力を合わせてあのイノシシを討伐するか。誰かが囮になってくれるなら、一匹ずつ脚を叩き斬ってもやれるんだが」


 連中の最大の武器であり、最大の弱点でもある脚さえ切ってやれば、立ち上がれずにあとはどうにでも料理できる。問題は魔法を使わずに切断できるかどうか。魔法を使わないとなると、職業の恩恵も受けられないし。布の服じゃいくら自分の耐久力が高くても意味が無いし。


「あんたが食べられるって選択肢は?」

「俺? お前ら皆殺しにすれば一人で逃げられるんだが……」


 そうなると、女の子にいいところを見せるという目的が達成できないし、直接人間を手に掛けると指名手配されて旅をする上で大きな障害になる可能性がある。魔物に襲われてるところを見殺しにしても何の罪にも問われないのに、面倒なことだ。


「手伝ってくれるのなら、ありがたく手伝ってもらおう。俺達の目的もあいつだ。手伝ってもらえるなら報酬は多めに分ける」

「金には別に困ってないんだがな……ま、もらえるならありがたくもらっとこうか」


 金はいくらあっても困るものじゃないが、そればかりに執着して命を落とす冒険者も居る。大金を持ち歩けば良心を持たない冒険者に襲われて殺されて奪われる危険もある。その大金で良い武器や防具を買っても、売れば金になるということでまた襲われる危険がある。

 まあ、時魔法使いは金がなくても『首』が金になるから普通に歩いていても襲われる危険は常に付きまとうんだが。


 そんな事をのんびり考えている内に、イノシシ三頭はもうすぐ近くにまで迫っていた。焦ることもなく鉈を構える。


「来たわよ! 早くどうにかして頂戴!」

「あいあい。お前らは左右のをひきつけろ。真ん中は俺が殺る。足並みを揃えてくれよ、でなきゃ死ぬからな」


 三方向からの同時突撃を食らったらよけきれずに轢き殺されるが、一方向からならまだ見て避けられる。だから一人が一頭ずつ注意を引きつけて、一匹ずつ始末する。そうすればこいつらは全員生きて街へ戻れるかもしれない。

 まあ、狼型の魔物の中でも最低クラスのウォーウルフに苦戦するくらいだし生きて戻れない可能性も高いけど。


「行くぞ!」


 俺が正面に、残りの二人が左右に別れて走って行く。そして予定通り、イノシシがそれぞれに一番近い目標に向かって走りだす。地面を蹴る猛々しい足音、同種の小さな個体と比べてもずっと迫力がある。

 しかし、迫力だけなら地竜の方がずっと凄みがあるので怖いということはない。落ち着いてタイミングを見計らう。一呼吸、二呼吸。

 そこで横に転がって避けて、足に鉈を叩きつける。振った速度はそれほどじゃないが、向こうの突っ込んでくるスピードが凄まじいのでいい感じに刃が入った。が、骨まで真っ二つにとはいかなかった。やはり丸太のように太い足を切るためには、もっと強く振るか、滅茶苦茶な切れ味の武器を持ってくるしか無いだろう


「フギィイイイ!」


 足を斬られる痛みはさすがの魔物でもキツイらしい。見事に叫びながらすっ転んでくれた。立ち上がられる前に急いで駆け寄って、切って血が吹き出ているところに全力で鉈を振り下ろす。

 肉を切るような、潰すような。なんとも言えない手応えが鉈から伝わる。


「ブゴォ! ブギュウウウイイィィ!!」


 悲鳴を上げてもおかまいなし。骨を断つまで振り上げて振り下ろし、振り上げて振り下ろし、振り上げて振り下ろし。

 五回目でようやく骨を叩き折ることができた。これでなんとか一匹目は無力化できたが、やはり魔物の骨は固い。次の街についたらもう少しいい鉈を買おう。今の奴と同じ位の重量で、切れ味がいいものを。


「さて。他の連中は」

「おい助けろ、助けてくれええ!!」


 一人は跳ね飛ばされて踏みつけられて、鎧が少しずつ変形し始めている。もう一人はどこへ行ったのか。と思ったら、牙が鎧ごと身体を貫通して、宙ぶらりんになっていた。ありゃ即死だろうな。

 死人は放っておいて、生きている方を助けよう。ばれない程度に加速を使って、一気にイノシシの近くまで突っ込んで、名も知らぬ男を踏みつぶそうとするイノシシの足に叩きつける。今度は一発で綺麗に叩き切れた。


「生きてるか?」

「……」


 鎧が蹄の形に深く凹んでいる。口から血も出てるし、こいつはもう動けんな……さて、残るは一頭。それも一番大きな個体。鼻先の牙に死体をぶら下げた個体。逃げるか逃げないか。


「……ブルルルルル」


 怖くはないが、面倒くさい。家族の内の二匹を無力化されたんだし、逃げてくれてもいいじゃないかと思う。だからこそ引けれないというのもあるか。


「おいで」


 手招き。そして突っ込んでくる大イノシシ。最初の一匹目と同じように、避けて足を叩き切って、終わり。タイミングさえ合えばこんなもの。この程度の魔物で苦戦するようじゃ、生き残っても遅かれ早かれ死んでたに違いない。


「さて、お嬢さん……て、あれ」


 振り返ったが、居ない。さては俺達が戦ってる間に逃げたか、薄情なやつだ。しかしまあいい。近くに人が居なければ魔法も使えるし。

 さっき踏みつけられていた男の鎧をひっぺがし、胸に手を当てて心臓の鼓動がまだあるかどうかを確認。顔の上で手を振ってみるが、反応はなし。辛うじて生きているが、意識はないと。なら蘇生もできるか。


「道案内が居ないと困るから~っと」


 左手の手袋を外すと、腕に刻んだ刻印が光り始めた。その手で胸の傷に触れると時間が巻き戻され、陥没していた胸が踏まれる前まで時間が戻り、口から出ていた血も口の中へと戻っていく。血の気の失せていた顔にも生気が戻って、元の健康的な顔つきに戻った。

 あまり戻しすぎると怪しまれるので、そのくらいで手を離して手袋をはめ直す。


「おい起きろ」

「ん、うう……ッ!?」


 頬を軽く叩くと、少し唸った後に飛び起きた。相変わらず時間魔法は広い範囲に応用が効く。治療に攻撃に防御に食料保存に。自分で使っておいてなんだが、なんでもありだ。


「ここは、さっきの平原……だよな」

「せっかく治してやったのに礼の一言もなしか」

「あ、ああ。すまん、ありがとう……そうだ相棒は!?」

「ああ、死んでるよ。さすがにありゃ助けられん」


 イノシシの牙に刺さりっぱなしの死体を見せてやると、黙ってしまった。


「もう一人は」

「俺達を置いてどっかへ逃げたよ。薄情なやつだ」

「……畜生! あいつが、あいつが外に出たいなんて言うから!!」


 どうもよくわからんが深い事情があるようで。まあ、俺の知ったことじゃないけど。鉈の刃を拭いて、刃こぼれを確認。魔物の硬い骨に思い切り叩きつけたからか、結構ひどい刃こぼれを起こしている。


「お前らにはお前らの事情があるんだろうが……俺にゃ関係ない。街へ案内してくれるか」

「……ああ、うん。そうだな。あんたは命の恩人だしな、頼みは聞くよ」


 よし。これで予定していた形とは大分違うが、望みは叶った。このまま道を案内してもらって、街に連れて行ってもらおう。

 

撃退スコア

女騎士1

地竜1

狼型の魔物 2

ドスファ◯ゴ 3


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