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3:弟が二人できた~ただし精神面だけ~

この話を書く時、赤い人をどういう性格にするか迷った。まぁ基本的にオカン不良をモチーフにはしてみました。そう見て読めばちょっとは面白いのかな?作者にはよくわからんとです。

嬉しそうに可愛いと連呼されながら、暫く父様に抱きつかれているとそのまま抱っこされた。

急に高くなった視線に驚いてビクッと体が震える。

それに気づいた父様は慌てて慣れない手付きで背中を撫でてくれた。



「ご、ごめんね。次からは声を掛けるよ」

「大丈夫です」



私がそう返事を返した後、背中を撫でていた手が止まった。

急に沈んでいく雰囲気に表情を見ようと父様を見ると、妙に怖い笑みを浮かべていた。


本当に難儀な性格をしているとまた思ってしまう。

何処からどう見ても何かに怒っているように見えるのに、何一つ怒ってなくて悲しいと思っている。

見抜ける力がなかったら誤解してたよ、きっと。


私が何も言わないのを怖がられたと後悔している父様にどうしたものかと思って、呼びかける。

「大丈夫だから、ゆくっりでいいから」と伝えるように頬を撫でる。

くしゃりと微かに歪んだ顔は、後悔と悲しみと恐怖でぐちゃぐちゃだった。泣けばいいのにと目の下を撫でると瞳が揺れる。

顔を見せないようにギュッと抱き込まれて、ポツポツと父様は話しだした。



「セレネは僕の娘になったのに、敬語を使われて……嫌だった。敬語は絶対禁止だからね。でも父様呼びは気に入ったからそのままで。文句は受け付けない」



脅すように言われた父様の本心に笑いがこみ上げてくる。

本当になんでそんなに本心を顔や口に出すのが怖いんだろう。

見抜けると言っても心が読める訳じゃないから、原因なんかは言ってくれないと解らない。

私はただ本質が見抜けるだけなんだから。



「それで返事は?」

「了解、父様」



笑われたと思って拗ねている父様が子供に見える。

ほら私って前世を含めれば年齢が三十路くらいだから、父様と言いながらも弟のように感じるのかも。

身体面に見ると子供なのが私で大人なのが父様なんだけどね。


暫く頭を撫でていると父様は体を少し離して、私の顔を覗き込んでくる。

何かに吹っ切れたような、晴れやかな顔をした父様は、笑顔で小さく礼を言った。



「……じゃあ、これから王都に【転移】するよ」

「うん」



頷くとバラバラにならない為か、父様の魔力に包まれる。

トンっと爪先を鳴らすと、足先にさっきと同じ銀色の魔法陣が現れた。

それが輝いたかと思った瞬間、私は違う場所にいた。

まるでテレビのチャンネルを回した時のように、一瞬の暗闇の後に森から大きな門の前まで転移していた。

門前は中の活気がここまで伝わって来ているようで、どこか楽しげな雰囲気を醸し出している。



「セレネの通行許可書を貰いに行こうね」

「うん」



通行許可書って言うのは門の前にいる兵士の詰問に答えて貰える物で、都市などに入る時にはこれがないと入れない。と言ってもギルドカードや市民権利票などを見せれば素通りできるのだが。

頷くとこれから行く所に楽しみなことでもあるのか、楽しそうな父様に抱き抱えながら門番の元へと向かった。

父様が五人の門番の中から選んだのは、一際目立っていた狼をモチーフにしている赤い全身鎧を着込んだ兵士だった。

見た目の派手さと魔力を放っている鎧、そして周りのこの人に対する感情にこの門の責任者と察する。

門番には一人、ある程度の貴族を黙らせれるだけの権力を持つ兵士が配属されているらしいから。


なんでこんなことを知っているかと言えば、影を通して見たり聞いたりしたからだ。

殆ど産れの国以外の情報はあえて集めないようにしていたから、もしかしたら間違っている情報もあると思う。

闇ギルドの存在とか奴隷市場の場所とか城内部の面白い“噂話”とか王族の弱みとか色々入手しているけど、違う国のことだし使う機会なんてあまりないんじゃないかな。



「やぁアニス」

「あ?ロイじゃねぇか!」



鎧の中で篭った地獄から響いたような低く重い声が返って来た。

不意打ちで聞けば身構えてしまう程、危機感を持たせる声に“似た者同士”という言葉が浮かぶ。

アニスと呼ばれた兵士は「鈍感」とい言葉がそのまま当てはまる。

鈍感だから父様とは友人関係なのに、アニスさんは全く気づいていない。

父様も直接言えばいいのに、拗ねて意地を張っている。


くすくすと笑っていると、父様は不思議そうに首を傾げて、アニスさんは音の発生源である私を見た。

気づかれたのでペコッと会釈する。



「お、おい。誘拐は犯罪だぞ?ここに自主しに来たのか?」

「酷いな、冤罪だよ。この子はセレネティア。大事な大事な僕の娘だよ」

「娘?……はぁ解った。ちょっとおこっち来い」



そう言って顎で門にある建物を示す。

父様は完璧な笑顔で頷くと、その動作を見て勝手に歩き出したアニスさんの後をついていく。

門に並んでいる人たちを捌いている他の兵士に声をかけてから、私たちは建物の中に入っていく。


書斎のような落ち着いた部屋に私たちは迎い入れられた。

壁には本棚がついていて、そこには大量のファイルが入っている。

奥には仕事をする為のディスクがあり、その手前には応接セットのテーブルとソファが置いてある。

そしてディスクの上には書類の山と、直径十センチ程度の水晶玉が沈黙を保っていた。



「おらっ座れ」

「扱いが乱暴だよ。言われなくても座るけどね」



背中を向けながら声をかけてくるアニスさんに、文句をいってソファに座る父様。

アニスさんのこういう気楽な所が気に入ってるはずなのに、それを表に出さない父様に苦笑が漏れる

。楽しいという感情を隠している父様をじーっと見ていると、頬を微かに染めてそっぽを向いた。

可愛い反応に笑っていると、拗ねた子供のように顔を肩に埋められる。

極自然に父様の膝の上に乗せられていた私は、父様にもたれ掛かるように体重を預ける。

お腹に回された腕を落ち着かせるようにリズムよく叩く。



「てめぇらは付き合いたてのバカップルか!っての。お前ガキそんな好きじゃなかっただろうが」

「セレネは特別だよ。娘を愛でて何が悪い」

「場所を考えろ、場所を」



一枚の紙とペンを持ってきたアニスさんのツッコミに、父様は本心を含ませた言葉で反論する。

息が合った会話に、どうしてアニスさんが父様に友人扱いされていることに気がつかないのか頭を傾げなから眺める。

アニスさんはそんな私の視線に気づかずに、盛大な溜息を吐くとソファに雑に座った。



『炎狼、返還』



魔力が篭った声でアニスさんがそう言うと、鎧が光となって消えた。

その代わりに刈り上げられた真っ赤な髪が目を惹く、野性的な男性が座っていた。

睨まれていると勘違いしそうな程に鋭い赤眼には父様が写り込んでいて、どんなことがあっても問いただすと言っている。

それを見て父様はバッと私の目を塞いだ。



「アニス、君は顔が怖いんだからこっち向かないでくれる?セレネが怯えるでしょ?怖いんだから」

「二回も言うんじゃね!言われなくても解ってる」



私が怖がらないかという心配とアニスさんが怖がった私を見て傷つくかもという懸念を、からかっているという態度で隠す。

確かにアニスさんの顔で低く重い声で呼ばれたら、気弱な大人くらいなら腰を抜かせそう。


でも私にとって容姿とかは二の次。

だって怖い顔してても、本当はどう思ってるのか解るから。

だからそれよりも信じれるかどうかが最重要で、その次にどんな感情を持っているかだ。

例え信じられるとしても、嫉妬や憎しみなどのドロドロしいモノをずっと持っている人の傍には極力居たくない。

だって嫉妬や憎しみの中には、欲がこれでもかという程入っているから。

別に生きる上で欲は大事だとは思うが、それが多すぎれば胸焼けしてしまう。


大丈夫だと、手を外して欲しくてぺしぺしと叩いていると、渋々とではあるが外してくれた。

私から視線を外して真横を向いているアニスさんが視界に入る。



「初めまして、アニスさん。私はセレネティアと言います。今日で五才になりました」

「……お前は、俺が怖くねぇのか?」

「アニスさんは、何の理由もなしに人を襲いますか?」

「んなことする訳ねぇだろ!」

「なら、怖くありません」



信じられないものを見るように、私を見るアニスさんに微笑む。

その様子にアニスさんに会った人たちは皆、怖がる者ばかりなのだと気がついてしまった。

諦め癖が付いてしまっているアニスさんに、勿体無いと思う。

初対面では精神が強い人じゃないと怖がるだろうが、触れ合ううちに世話焼きで優しい人物だと気がつくだろう。

それなのにアニスさんの方が怖がられるからと言って近づかないから、極一部にしか良さが伝わってない。

むっと眉間に皺が寄りそうになるのを我慢する。今はアニスさんに怖くないと教えることが先だろう。



「ほ、本当に怖くねぇのか?」



アニスさんの目を見てしっかりと頷くと本当に怖くないのが解ったのか、呆然とした顔で見つめてきた。

ポロリと涙が流れたと思えば、男泣きしだす。

安堵と嬉しさに埋められている表情を見るのは嫌ではなく、ただ黙ってアニスさんが落ち着くのを待った。

自分のことのように嬉しく思っている父様を見ると、その気持ちを偽ろうとして逆に絶対零度の暗黒微笑を顔に貼り付けていた。

「良かったね」と小声で言うと、ゆるりと瞳を揺らして微かに頷いた。


本当にこの二人は手が掛かる弟みたいだ。

二人のいい所をもっと色々な人に知って欲しいと思うし、誤解されたままなのは嫌だとも思う。

父様に関しては長期戦覚悟で挑んでいるけど、アニスさんは私がアニスさんを怖がってない人にそれとなく会わせれば考えなんてすぐに変わるだろう。



「ぐずぐず……んん”、急に泣いて悪かった。自己紹介を返してねぇな。俺はアニス=ヘパイストスつうんだ。王都で憲兵長をしている。基本、ここにいるから時々顔を見せに来い」

「はい、勿論」

「それとセレネティアだっけ?ロイの奴がセレネって呼んでるし、セレネでいいか?」



頷くと嬉しそうに笑った。

ふにゃりとした笑みは何処か幼く見え、強面がただの男前になっていた。

なるほど、笑ったら印象が変わるタイプか。

これはすれ違いを正すのはそれ程難しくなさそうだ。というか隠れファンとかいそう。

落ち着いたのを見計らったのか、父様の方もいつもの意味深な笑みを貼り付けてから、アニスさんをからかうこともなく話に入ってきた。



「セレネ、アニスには敬語なんて使わなくてもいいからね」

「おう、そうだぞ」

「わかった」



私がタメ口になったのを確認してから、アニスさんは一回満面の笑みで笑うとサラサラと紙に何かを書いていく。

書く所まで書いたのか、一旦手を止めて真剣な顔で視線を父様に向けた。



「で、娘ってどういうことだ?お前結婚してねぇだろが」

「結婚なんてしてないに決まってるでしょ。何言ってるんだい?」



「馬鹿だな」と聞こえてきそうな声にアニスさんは気がつかない。

それもそうだと納得したように頷いているだけだった。これには苦笑しか浮かばない。

でもこれくらい鈍感じゃないと、父様とは付き合えないとも思う。

私に対してはマシになってきているが、その他には本心を知られないようにと冗談やからかいで隠す。

だから普通の感性の人だと、父様にとって気に入った人になればなる程冗談を言ってばかりだと思って離れていくだろう。その中に本心があるとは知らずに。



「セレネと出会ったのは王都から丸一日程でたどり着ける森の中。呼び名は……〈幻想の森〉」

「幻想の、森……。確か森を進んでいたはずなのにいつの間にか入口に戻っているっていうあの森か?」

「そう、そこ。【転移】なんかで森の中に飛ばされると、出れなくなるから危険なんだよね」

「あぁ国でもそのことを忠告していたはずだがな」



属性それぞれに一瞬で遠くに移動出来る移動系魔法がある。

一番使い勝手がいいのが時空属性で、その次に影属性や闇属性がくる。

他の属性はあるにはあるのだが、使い難く移動した場所が安全じゃないことがあるので廃れてしまった。

火属性ならマグマの中に、土属性なら地面の中にいるっていうことが多々あるからだ。


まぁ現象を文字(魔法陣)化させ物に付与させた魔道具があるので、金さえあれば誰でも時空属性の【転移】や闇属性の【闇移】を使うことができるのだが。

因みにこれは魔法ではなく、魔術と呼ばれている。

詠唱や音に魔力を載せることで発動するのが魔法で、文字や模様に魔力を流すことで発動するのが魔術である。


アニスさんは私が捨てられたことに気がついたのか、眉を寄せて如何にも不機嫌だと言わんばかりの表情を浮かべた。

父様もアニスさんの気持ちが解るのか、うんうんと頷いていた。



「周りに親らしき人影がなかったから、養子にしてみた」

「はぁ!?馬鹿か、オメェは!!ペットを拾うのとは違うんだぞ?」

「アニスは僕をなんだと思ってるんだい?そんなこと解ってるよ、アニスじゃないんだし。セレネだから養子にしたんだ。他の子供だったら……多分アニスか教会に押し付けてた」

「まぁさっきの様子を見てたから信じるが……ロイが気に入るなんて珍しいな」



熱を計るように父様の額に手を当てて、不思議そうに頭を傾げる。

父様はパシッと音を出してアニスさんの手を除けた後、「何か文句でもあるの?」と黒い笑みをアニスさんに向けた。

アニスさんは払われた手を擦りながら浮かせた腰を下ろし、「友人だと思ってんのはオレだけなのか」と不貞腐れてるが……違うんだ。

思ったよりもアニスさんが父様のことを理解していたから照れているだけ。


それに父様は親しくない人に一瞬でも触らせたりしないし、言い合いをしている時も楽しそうな雰囲気を出すこともない。

教えてあげようかと思ったけど、父様ににっこりと笑われた。……とりあえず今は沈黙しとくかな。



「セレネはあんな馬鹿にはならないでね」

「当たり前」

「ひでぇな、おい!」



吠えてきたアニスさんに父様と顔を合わせて笑い合う。

ゲンナリとした顔で、紙に何かを最後まで書いていく。

そしてペンを置くと吐き捨てるように言った。



「書き終わったぞ」

「そう……あり…………いや、セレネ」



ありがとうと言いかけて止めた父様の首に手を回すと、私を抱えて立ち上がった。

アニスさんはそれを横目で見てから、さっきまで書いていた紙の上に手を置いて何かを呟いた。

途端に薄い赤色の魔法陣が紙を覆った。そして瞬きをしないうちに、紙が手のひらサイズの赤いカードに変わった。


ふーん、変形と固定の魔術を弄って紙に付与してるのか。

本来は誰でも持っている無属性で展開できる物を、他の属性の介入を許すことで偽造を防いでいるのか。



「ほらよ」

「アニスさん、ありがとう」

「……ありがとう」



アニスさんはカードを父様に渡すと、父様は胸ポケットに入れた。

私が笑顔でお礼を言うと、父様も少し迷った後に礼を言った。

それに驚いた顔をしたアニスさんだが、嬉しそうに笑った。

恥ずかしくなったのか、黙って部屋から出ていく父様を止めずにアニスさんに手を振る。

父様がいない時に会ったら、しっかりと父様のことをよろしく頼むと言っておこう。



「ロイのこと頼む!」



フェードアウトしていくアニスさんの声に笑いながら、私は父様に連れられて王都に入った。

作者の無駄知識ー♪

……特にないなー。あまり言い過ぎるとネタばらしになっちゃうし。とりあえず、人族を人間って打ちそうになる癖を直したい。何回、“あ”ってなって書き直したことか……種族が色々いるってメンドくさい(・ω・`*)ネー。

それにしても、これセレネちゃん視点だからロイやアニスがガキぽいけど、客観的に見れば……普通にロイは優しそうな笑顔を浮かべてセレネちゃんを抱っこしているだけだ。仲のいい親子ですねーで終わる。特に面白くもない。

そしてセレネちゃんの前世の年齢が今明らかに!多分高校生くらいで死んで転生したらもっとガキぽいんだと思おうんだ。でももういい大人だからなー精神面だけ。

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