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1:神との対話~意味深な言葉を最後に~

今後ともよろしくお願いします。というか前書きって何書けばいいのか解らないから……作者の愚痴でも聞いてく?

とりあえず、書き直す前とはもう別作と言ってもいい程変わったのは許してください、はい。書き直さない方が面白かったとか思わないでください(作者はそう思ってます)。とりあえず、内容が矛盾しないように頑張ります。

私は幼い頃から人を見抜く力に優れていた。

相手の本質を見抜き、信じられる人と信じられない人が分かるのだ。

見抜くとは言っても、声に隠れる感情やら表情なんかで判断しているのか、少し会って喋らないと解らないけど。


そんな観察眼とでも呼べる力でも、幼いながらに異常なのだと理解していた。

人とは違うモノを人は恐れると“知っていた”から、私は誰にもこの力のことを言わなかったし使おうとも思わなかった。

それでも力は勝手に本質を見抜き、欲で簡単に裏切る人を私に教える。

その人の言葉の裏が解っているのに、親しくなるなど私には出来なかった。

使わないようにすることを諦めてからは、解っているのを利用して敵の罠を掻き回したりと積極的に使っていたが。



そういう感覚的なモノが優れていたせいか、朝から皆を裏切るような予感がして落ち着かない。

その予感に従って遺書をスマホに打っていく。そして一通り打ち終えてから仕事に向かった。

今日は週に二回の早番だったので夕方には仕事を終えていた。


電車を待っている中、ふと横にいた妊婦の姿が何故か目に付いた。

愛おしいというように、大きいお腹を撫でている彼女は何処から見ても母親の顔そのもの。


『追伸 もし後を追ってきたらぶん殴るから』


笑いながら遺言にそう付け足す。軽く文章を読み返してから、一つ頷いてスマホを仕舞う。

「彼女はどんなことがあってもお腹の子の味方だ」とまた視界に入った彼女を微笑ましく見ていると、急に気持ち悪そうに口を抑えてふらりと彼女の体が傾く。

倒れた方向には線路が走っていて、通過する予定の電車も目と鼻の先にまで来ていた。



「っ!」



考えるよりも先に体が動いていた。

そして彼女、いやあのお腹の子はこの世界に必要なのだ、と一テンポ遅れて理解する。

彼女の腕を引っ張り、後ろに並んでいた男性に彼女を託す。反動で線路に放り出されるのを、抵抗せずに身を任せた。

無意識でもしっかりと、彼女を抱きとめた男性を確認してホッとする。

守れたという安堵感と、“死”が目の前にいるのに不自然な程に心は凪いでいる。

「死ぬことは嫌だったはずなんだけど」と思いながらも、心は何処までも穏やかだった。


ただ心残りがあるとしたら、お腹の子が“創る”世界を見れないことだ。

どんな未来を創って行くのか、とても興味がある。

だけど私はここまでのようだから、斬新で面白い未来が広がっていることをあの世で願っているよ。


電車のライトが酷く眩しくて、目を閉じた。運転手がブレーキをかけているのだろう甲高い音が耳に残る。

体がバラバラになるような衝撃の後、私の意識は暗闇へと落ちていった。




本当なら、私の命は終わりを迎えるはずだった。

それが運命で必然なのだから。


それでも何の因果か私はここに存在していた。




空を覆い尽くす程に大きい不気味な赤い月が頭上に輝き、間隔をあけて透き通った海から波が訪れる海辺。

波が当たるか当たらないかの微妙な位置に私は立っていた。



「……ここは?」



摩訶不思議な光景に魅せられたのは数秒で、すぐにこの場所が何処なのか頭を捻る。

どう見ても現実だとは思えない月の大きさや色に、頭でも可笑しくなってしまったのかと心配になったのかと心配する。

それでも直前の出来事を思い出すのは容易で、自分が死んだということを受け入れるのも簡単だった。

「死んだはずなのにどうして意識があるのか」、「どうして体があるのか」という疑問が湧いてきた所で不思議な声が空間に響いた。



「歓迎。君の有意義なる死に敬意を」



中性的な透き通った声は、直接脳裏に入り込んでいるように聞こえる。

感謝や申し訳なさ、そして一番強い親愛という感情に内心頭を傾げる。

それでもこの人は責任感がとても強く、“絶対”私をに裏切らない。この人が言っていることは全て信じられる。

見知らぬ場所に来て警戒していた心が落ち着くのを感じる。

よく友人に警戒心がないと言われるが、信用できる相手を警戒するなんて無意味。

だからこの場所が何処であろうと、警戒する必要なんてない。



「初めまして、貴方はどなたか尋ねてもよろしいですか?」

「提示。私は輪廻を司っている“輪廻神”。気楽にリンネちゃんと呼ぶといい。それと敬語は使わなくてもいい」

「了解、リンネちゃん。神という存在に初めて会ったよ。それで、私に用があるんだよね?」



リンネちゃんが嘘を行ってないってことは痛い程わかるので、神の存在を信じて受け入れた。

どうしてか私に一方的に懐かしさを感じているようだけど、その理由を私に知られたくないらしい。

だからそれには触れずに、リンネちゃんの要望を叶える。

神であることに誇りはあるけど、私にはへりくだって欲しくないみたいだから。

そして私に用があることは察しているので聞いてみると、リンネちゃんはすぐに答えてくれた。



「肯定。用事があって君をここに呼んだ。それ故に長時間ここに留まることを視野に入れて、一時的だが肉体を授けた。魂の状態でいる時間が長いと不都合が起こる」



不都合というのが私とリンネちゃんのどちらにとってもなので、感謝の意味を込めて一礼する。

話を促すように首を傾げると、一回咳を挟んでから話だした。



「選択。異世界に行くか、魂を消滅させるか」



リンネちゃんの中では、私に選んで欲しい答えは決まっている。

それなのに選択と言ったのは、押し付けるのではなく私の意志で決めて欲しいから。

でも選択するには、私が持っている情報が少な過ぎる。

リンネちゃんも私の質問には“極力”答えてくれるので、とりあえず情報収集が先決か。



「異世界に行った場合の利点と欠点。それと異世界に入って欲しい理由……先にこれだけは聞きたいな」

「返答。利点は最大限の願いを叶えての新たな人生を。欠点は常識さえ違う世界に行く恐怖を」



欠点でさえも、私が異世界の知識と願えばなくなる。

そこに罪悪感はないから、リンネちゃんが申し訳ないと思っている……いや私が死んだ理由はその次か。



「謝罪。君の死は*********、いや地球にとって有意義だった。だが、それは君以外でも最低限そうだっただろう。それなのに私の独断と偏見で君を生贄とし、世界の安定の為に捧げた」

「でも他の誰でもない、私が死んだ方が世界にとっても都合よく逝けたんでしょ?ならいいよ、謝罪を受け入れる……許すよ。だから私が後悔せずに判断できるように、情報をくれるかな?」



許すと言った瞬間、泣きそうな気配を感じた。

それでもリンネちゃんは私の質問に応えようと言葉を重ねる。

一瞬驚くような感情を読み取った気がしたけど、素知らぬ顔でリンネちゃんの言葉に耳を傾ける。



「応答。生贄となった君には世界の歪みが混じる。一世界全ての歪みは輪廻に入れない程。故に魂の消滅か、それとも異世界に輪廻を介さずに記憶を持ったまま転生して歪みを時間をかけて正すか……その二択しかない。しかし消滅させるにも歪みと同等の力がいり、また新しく魂を生み出すのにも力がいる」

「……なるほど。もし異世界に行くとして、使命とか何もないよね?」



全ては話していないけど、嘘でもないって感じかな。

どうしても知られたくないみたいだから、それ以上は詮索しない。

リンネちゃんは信頼できる……それが解ってればいい。


ここまでの話を聞いて、異世界に転生する方に天秤が傾いている。

私が私として生きられるなら転生してもいい。

でも使命とか面倒くさいことはやりたくないとも思うんだ。



「否定。君が死んだのはこちらの都合。故に異世界に転生した時、使命などあるはずもない。世界の破滅以外のことは黙認する」

「それで、私が行く異世界の情報は?」

「開示。地球とは真逆で、魔法が発達した世界。様々な種族が混在している」



ファンタジーな世界というと、命が凄く軽いという勝手なイメージがある。

異世界に行けば私は必ず、殺す覚悟を問われるだろう。


私に生き物が殺せるかと問われれば……多分殺せる。

本当に“殺意”を持っていることも、和解できないことも、私は解ってしまうから。

殺されるか殺すしかないなら、私は生きたい……生きなければ“いけない”。


さて、辛気臭いことを考えるのはここまで。

私は異世界に転生すると今決めた。そのことをリンネちゃんに伝えないとね。



「リンネちゃん、私は異世界に転生する。だからその世界で私はどんな状態で転生するのか教えてくれる?」

「曖昧。転生を決意してくれて感謝する。君が願う状態で転生させる。だが転生故に胎児からであり、混乱を避ける為に君の記憶は五歳になるまで浮上しない。乗っ取りとかではなく、記憶がないだけなので心配はない」

「んー願い、ね……。私が願うのは性別が女であること、平均より優れた力を持っていること、知識を忘れない脳、不快にならない容姿、かな?」



平均より優れた力が欲しいのは、生き残れる力が欲しいから。

知識を忘れたくないのは、常識さえ違う世界では覚えることが多いと思ったから。

不快にならない容姿が欲しいのは、不細工より平凡か美形の方がいいから。

チート能力は元々持っている観察眼だけで充分。これも人間関係だけで言ったら無双できるし。


リンネちゃんは私の願いを聞くと、ブツブツと日本語ではない言語で何かを呟く。

それは歌っているかのような、耳に心地よい音で段々と眠たくなってくるので困ってしまう。

目を擦ったり頬を抓ったりして耐えていると、急に音が消えた。



「ふぁ……ん、どうだった?」

「歓喜。君の願いは全て叶えられた。想定したよりも容量が大きい。他に願いを言うといい」



音がなくなると同時に眠気もスッと消えていった。

霧が晴れた頭でしっかりとリンネちゃんの言葉を聞く。

心の底から嬉しそうに言うリンネちゃんに、私も嬉しくなった。

それでも他に叶えて貰いたいことが全然思いつかない。



「特にコレといってないんだ。太らない体型とか細々とした願い事ならあるけどね」

「増加。願いを叶えることができるのは今だけ。故に容量いっぱいまで願いを叶えることをオススメする」



笑いながら冗談を言うと、心配しているのだとダイレクトに感じる声が聞こえた。

リンネちゃんを安心させようと願い事を考えるべく頭を捻る。

急に願いを、と言われても、そんなポンポン出てこない。

数分くらい考えて出たのは、とても単純なことだった。



「そうだね。なら私が叶えてもらった願いをリンネちゃんなりに強化して欲しいな」

「了承。容量いっぱいに願いを強化しておく。これが終わった後、君は異世界にいるだろう。何か他に聞きたいことがあれば答える」



異世界で覚醒した時点で私の頭の中にある程度の常識が入ってあるはず。

だからリンネちゃんに直接質問したいことは、もうない。

……まぁ一つリンネちゃんに頼みたいことがある。質問と言えば質問だけど、リンネちゃんにお願いと言うのが正しいかな。



「リンネちゃん」

「問掛。何でも聞いていい。ちゃんと答える」

「来世の私の名付け親になってくれないかな?別に無理とは言わないよ」



長い時が経っても絶対に私の味方だと断言できる、リンネちゃんとの繋がりが欲しいと思った。この会話が幻ではなかった確固たる証明が。

どうして私のことを我が子のように慈しんでくれているのか、知られたくないのなら私は……尋ねないから。

だから遠慮してないで、名付け親になってよ。他の誰でもない“私が”望んでいるんだ。



「狼狽。私が君の名付け親に?君の新たな親に暗示をかけることで付けることは可能。だが、私は君を殺したと言ってもいい」

「ダメかな?」

「承諾。ダメではない。君が望むならば。……セレネティア。月光を意味するその名を君に授けよう」



セレネティア。その名を口の中で転がすと、どんな名前よりも私に合っているような気がした。

笑顔で礼を言うと、照れているのか意味を持たない音が聞こえた。


その反応にクスクスと笑っていると、また眠気を誘う言語が聞こえてくる。さっきとは比べようもない程の眠気に、体に力が全く入らずに倒れ込む。

最後の力を振り絞ってぶつけない様に手を伸ばしてゆっくりと身を倒す。

閉じようとする瞼に逆らわず目を閉じると、急激に眠気が侵食して意識を保つのも難しくなった頃、私は威厳に溢れた声が何故か鮮明に聞き取れた。



「セレネティア、断罪を司るモノよ。……君に最大の加護を、幸多からんことを希う」



真摯に祈るその言葉を聞き取る前に、意識は淡く消えていった。

遠くない未来にその言葉の意味を理解できることを願いながら。

作者の無駄知識ー♪(ここではモブの説明を書こうと思います。因みに説明しても今後出てくることは皆無)

妊婦の女性:科学の申し子と呼ばれることになる人の母親。主人公に命を助けられた。主人公の親に頼み込んでお腹の子に主人公の名前を付ける。

お腹の子:遠くない未来にVR技術を確立する。自分の名前の由来を知っているので、命日には主人公のお墓参りにいく。主人公のような人になりたいと思っている。

後ろに並んでいただけの男性:サラリーマン。戦うサラリーマンとかじゃなくただのサラリーマン。三日程食事が喉を通らなかった。

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