表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/15

8:時が止まった親子~馬鹿の人格破壊には父様も参加した~

なーんか書き方がすっげー変わったような(;一_一)

はは、気のせいだよ気のせい……(書けなくて現実逃避で三人称の小説を書いたからかな?)




あ、電話だー(棒読み)

さらば |彡サッ




(改)サブタイトル間違ってた9じゃなくて8でした。

あと、流れがわかんないと言われたので、つけ加えました。

前の話とは違う日だと思ってください。

教会に行った日から一週間の時が経ったこの日、ギルドに嵐が訪れた。

嵐の中心は噛み付いてくる馬鹿に複雑な表情で馬鹿を見ている右肩から先がない片腕の男、そしてそれを膝を組み蔑んだ目で見下ろす私。



「なんで、なんで!父さんの右腕を治してくれない!?」



珍しく静かなギルド内に馬鹿の叫び声が響いた。

一触即発の空気を出す私たちを固唾を飲んで見守っていた周囲は馬鹿の言葉に苛立ちを含んだ視線を向ける。



「何度言ったら気が済むのかな。等価交換、私が治療した報酬に貴方は何を払うって聞いてるの」

「治癒属性持ちなんだから簡単にできるだろ!なんで報酬を払わないといけない!!」



報酬を払わないが腕は治してくれと言い張る馬鹿に、ギルドに入ってきたばかりで状況が飲み込めてなかった数人がギョッとした顔で馬鹿を凝視した。


仕事にはそれ相応の対価を。それが乱暴な者が多い冒険者が唯一持っている信念と呼べるべきモノであり、新人が入ってくれば必ず先輩が言い聞かせる言葉だ。

逆に何かを頼む時も自身がこれだと思う報酬を提示するのが礼儀であり、無償で頼むのはただのゴロツキと変わらない。

なので馬鹿の言い分は冒険者に喧嘩を売っていると見なされるし、馬鹿自身も冒険者ではなくゴロツキと一緒だと位置づけられた。


私を庇って声を上げようとしたリンフェさんを手で止めると、不満そうに口を尖らす。



「仕事にはそれ相応の対価を。貴方は教えられてないとでも?」

「父さんから教えられてるに決まってるだろ!でもお前は冒険者じゃない!」

「冒険者か冒険者じゃないかは関係ないよ。貴方は相手が冒険者でなければ何をしても許されると思ってるの?」

「そんなことは言ってない!ゴロツキと同じような行動する訳ないだろ!?」



矛盾だらけの言葉に頭がぐらぐらするのを感じる。

都合の良いことを信じて、そうなるようにその口から吐き出す。

馬鹿は隙を見せればすぐに他の冒険者たちから“教育”を受けるだろう。

今のまま信念を捻じ曲げるような性格をしていては、冒険者全体の質が疑われるから。

呆れながらも思い通りになったことに内心ニヤリとしながら、表面上は不快そうに顔を顰める。


馬鹿には悪いが、最初の躾が肝心なんだ。

騒ぎが大きくなればなる程、私に無償で治癒してくれと言う人も少なくなる。

まぁ少し考えれば私が交渉次第では治療してくれると気付く者も出てくるだろうから、毎回こんな不毛なやり取りをせずに済む。

例え結果的に若い芽を摘んだとしても、私に突っかかってきた馬鹿が悪い。



「早く治せって言ってるだろ!」

「どうして見ず知らずの人に、無償で回復してあげないといけない」

「お前はヒドでなしか!?力を持っているのに、どうして使わないんだ!!」



これ以上伸ばしたら父様が出てきてしまうし、終了の合図を鳴らそうか。

存分に踊ってくれた馬鹿にお礼も兼ねて、片腕の男との交渉の席にはついてあげるつもりだ。

とは言っても治すか治さないかは交渉次第、私が納得する報酬を提示出来るかどうかだが。



「……なら貴方は無償で襲われている村を助けるんだね」

「なんでそんな話になってるんだよ!?そんなこと言ってないだろ!!」

「貴方が私に求めているのはそれと同じだと解らないの?」



遠回しに馬鹿?と言えば激情して私に掴みかかってくるのを、闇属性束縛系魔法【闇縄】でミノムシにしてしまう。

抜け出そうとして暴れている馬鹿を放っておいて、片腕の男ににこりと微笑む。



「優柔不断過ぎます」



表情と不一致過ぎる言葉に一瞬驚いた顔をするも、バツが悪そうに頬を書いてから頭を下げた。

それに馬鹿がまた私に噛み付こうとしたが、片腕の男に叱られてショックを受けて呆然とする。

最愛の妻の忘れ形見として甘やかしてくれた父親が自分を叱ったというのは、父親を尊敬している馬鹿にとって何よりの薬になったに違いない。



「すまん。息子が君に失礼なことを言った。オレが甘やかし続けたせいだ」

「はぁ、貴方が謝ることではないです。“これ”はもう成人してるようですし」



確かに馬鹿が脳内お花畑な性格になったのは、父親が正さなかったことも一理あるだろう。

だが九割近くはこの馬鹿の本来の性格だし、もう成人してるであろう馬鹿の責任を未だに親が取るのは可笑しな話だ。


何故なら五歳から十五歳までの子供は学園に通う義務がある。

学園ができた理由は暴走でもすればどんな少ない魔力量でも家一つは吹き飛ばすことや、簡単な魔法で人の命を奪えることを危惧してだった。

なので初めは魔力制御や魔法を使う上での論理観しか教えていなかったが、今では読み書きや常識は勿論のことあらゆる学問を浅く広く教えている。

そして成人とされている十五歳になれば、自分の言動の責任は自分で取らなければならない。

学園でそれが出来る程度の知識は教えられているのだから。


例え親がいない孤児でさえ、教会が保護して学園に通わせる。この馬鹿だけが学校に行ってないなんてことは有り得ないのだ。

だから片腕の男が謝ることは一切ない。周囲も同感なのか、うんうんと頷いていた。



「……それは」



片腕の男は何かに驚いたように目を見開くと、思いつめたように俯いた。

息子が可愛いと思うのならば、絶対的味方の“自分”という存在から引き離せばいい。

そうすればどれだけ自分が親に頼り甘えていたのか、痛感するだろう。

馬鹿の性格ではすぐに闇に飲み込まれて死んでしまいそうなので心配するのは百歩譲って理解できるが、成人している男にここまで過保護になるのはとても気持ち悪い。


だがもう迷っている時間はない。

馬鹿は冒険者としては生きていけない瀬戸際まで来てしまった。

本人たちの意思に関係なく、周りの冒険者が馬鹿と片腕の男を引き離すだろう。

今のまま依存し続ければ二人共前に進もうとしないし、成長するものもしない。


強制的にでも変わらなければいけない所まで来ているんだ。

私がこれ以上言葉を重ねるのも阿呆らしく感じるくらい、どうしようもできない所まで追い詰められてる。



「それで、貴方はその腕を治して欲しいのですか?」

「え?」



急に話が変わったことで、きょとんとしてる男に軽く頭を傾げる。

やっと飲み込めたのか、ギュッと本来なら右腕がある場所で手を握り締める男はここではない何処かを見る目を閉じた。


私はただ答えを出すのをじっと待った。

それは周囲も同じで馬鹿をささっと拉致していき、性格を一度木っ端微塵まで砕いてから作り直そうとしながらも、チラチラと片腕の男を見ていた。

余程考えに没頭しているのか、馬鹿の叫び声にも反応を示さない。



「……頼む、腕を治してくれ」



土下座しそうな勢いで頭を下げる片腕の男に何も言わずに見つめた。

私は報酬次第でやると何回も馬鹿に言っていた。

改めて言わなくとも治療して欲しければ、何を提示しなければならないか解って貰わなければ困る。



「BーF依頼を十、いや二十個受けることを契約の神コントラクトゥス様に誓おう」



BーF依頼……謂わば危険度はBランクなのに、報酬がFランクの平均と同額という誰もやりたがらない依頼だ。

それを二十個やると報酬で提示したことに、つい声を上げて笑った。


治癒属性持ちに治療してもらうのに相応の“金額はつけられない”。

唯一無二なモノに適正価値をつけられないのと同じである。

しかも需要があるモノならば余計につけられないだろう。

それを冒険者でしかできないことで、周囲もそれならばと納得できる報酬を言ったのだ。



「えぇ、解りました。彼の右腕を治すことを、契約の神コントラクトゥス様に誓います」



私が伸ばした手に男は唯一動かせる左手を伸ばす。

握手をするように手と手が繋がれると、バチリと静電気が走った。

手の甲には一と言う数字が浮かび上がっており、片腕の男の手の甲にも二十と言う数字が浮かび上がっていた。


今のは神への契約宣言であり、もし破ろうとすれば指に黒い茨が巻きつく。

手の甲に出ているのは回数で、私は一回だけ男の右腕を治せば消えることを意味する。

片腕の男はBーF依頼を受ける度にカウントダウンされていき、ゼロになれば契約終了となる。



「それでは早速治しましょうか」



椅子から飛び降り、男にしゃがんでもらい右肩に手を添える。

私の魔力が蛇のように、本来右腕があるだろう空間に巻きつく。

その魔力を媒介に骨、筋肉、神経など腕を作っている組織をイメージして、新しい魔法を作っていく。



「すぅ……【神々の慈悲を象る軌跡】」



私が呟いた瞬間、その魔法は世界に認知され効果を発揮する。

右肩から勢いよく骨が生えてから、それに巻き付くように肉付けされていく。

それにコーティングされた皮膚は焼けて小麦色になった肌とは違い、真っ新の白い色だった。

右腕だけ色が違うので可笑しくなったが、こればっかりは私にもどうすることもできない。


ぴくりと指先が動き、それから恐る恐る曲げたり伸ばしたり動かす。

それからガクリと崩れ落ち、床に縋り付くように体を震わせる男から小さな嗚咽の声が聞こえた。



「ーーーっ……ーーー」



左手で肩を抱きながら堰を切ったように泣きながら何かを呟く男にただ何も言わずに寄り添う。

子供時代に戻ってしまったかのような男の頭を撫でていた手に、震える男の手がゆっくりと乗った。



「ありがとうっ……本当にありがとう!」



痛いくらいに力を込められて痛む手を無視して、ただ何も言わずに苦笑した。

感謝の言葉を口に出されても困ってしまう。

私は右腕を治す男はBーF依頼を二十回こなす、というwinーwinの関係なんだから。

父様の養女だと知らなければ私に得がないように見えるが、実際はそうでもない。


危険度と報酬が釣り合っていない依頼の殆どが受注されずに処理される。

ギルド側もランクの昇格試験に当てたり、ギルド員に処理させたりと対処はしている。

だが冒険者が誰も見向きもしない為、溜まる一方なのだ。

それを処理してくれるということはギルドは助かるし父様も喜ぶしで、金よりもそっちの方が私には得がある。



「ぐず……急にすまなかった。契約はきちんと果たす」

「えぇ、そうして下さい」



ぐいぐいと涙を拭いてから男は、心がぼっきりと折れている馬鹿を見つけて踏み出しそうになった足を戻した。



「もう囲い守ってあげられる時期は終わってたんだな。情けないことに君に成人していると言われるまで、全く気付かなかった」



くしゃりと前髪を掻き混ぜながら言う男の顔には、後悔と自嘲が浮かんでいた。

副産物の荒療治だったが止まっていた親子の時計の針がゆっくりと、しかし確実に動き出した。

作者の無駄知識ー♪

『契約の神コントラクトゥス様に誓って』:この世界では口約束以上書類契約未満の時に使用する。書類契約は破れば、失明したり死んだりと洒落にならないモノである。なので基本的に取引などを書類に書く時は“契約の神”にではなく、他の神に誓うのが主流である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ