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6:父様に慰められた~シリアスになりきれないのは何故!?~

とりあえず、難産だった今回の話。こう、なんだかなー。もっとシリアスになってもいいような気がするけど、まぁ無理だよね。シリアスなんて嫌いだ(笑)

食後の一服に紅茶を飲んでいる父様を横目に、椅子を降りて収納袋を手に取る。

それを片手にまた椅子によじ登って、父様と向かい合った。

いつも通り穏やかな笑顔を貼り付けているが、急に真面目な顔をした私を不安そうに見ていた。


私の立場とか予定とかは今は一旦置いとくとして、それよりも先に収納袋に入っていた服について言っておきたい。

別に父様がロリコンでもショタコンでも幻滅はしない。

私のことをちゃんと自分の娘だと思ってくれているのは解っているからね。


ただそれを私に押し付けるのは如何なものかと思う。

ショートパンツが嫌いなんじゃない、ドレスが嫌なんじゃない。

それを五歳児に与えることに物申したいのだ。

いや、ロリコンなら寧ろその歳に着させたいんだろうけどさ。



「父様の趣味にどうこう言うつもりはないけど」



そう言いながらドレスやポンチョ、ゴスロリ風に軍服みたいな服一式を取り出す。

取り出す度に父様の口元がヒク付き、誰かに怒っているようだ。

それに「父様が用意した物じゃないみたいだ」と確信する。



「私はまだ五才だよ?父様が着て欲しいなら着るけど、こういうのよりもっと皆が着ているような服がいい」

「あの野郎、セレネになんてものを与えてるんだ!まだセレネにはこんな服は早いよ!!」



言葉の裏には頼んだ者への信頼が見え隠れしているので、精神面でお姉さんぶっている私としては挨拶しておかないと気が済まない。

簡単に裏切る人物なら父様がどんなに傷付こうとも、縁を切ってもらう。

まぁ父様が信頼してるんだから、悪い人じゃないんだろうけどね。


一人で決断していると、父様が申し訳なさそうに見てきた。

昨日よりも大分本心を出せていることにホッとする。

一人で考える時間を作ったのが良かったんだろう。


前世で父様と同じタイプの友人も、次の日から雛のように私にべったりになったのを思い出す。

それに釣られるかのように他の友人の顔も浮かんだ。

あの子達、元気にしてるかな?社会人になって、他に大事なものが出来たから私の後を追っては来ないだろうけど。

てか追ってきてたら遺言通りに全力で殴るけど。



「ごめんね。僕の幼馴染に五歳くらいの子供に必要な物を買って来てと命令してたんだけど……ちょっとお話する必要があったみたいだよ」



お話という説教ですね、わかります。ついつい心の中でツッコミを入れる。

口と表情には一切出さなかったので、私の内心を知らずに父様は眉を下げる。

怒ってないと言えば安堵したように笑った。


そんなことよりも、その父様の幼馴染という人物に会いたい。

ってこんな服を買ってきたから父様から許可が出るには、父様のお話というなの説教が済んでからじゃないと無理かな。



「父様、これから私がどうなるのか聞いていい?」



服を収納袋に入れてから、頭を傾げながら質問する。

父様の娘になることは聞いたけど、父様の実家との関係や教会のこと。決めないといけないことがいっぱいある。

それに父様もなんで治癒属性に適正がある私が捨てられるのか、疑問に思っているだろう。

昨日はお互い話する余裕がなかったから、もし父様が話し合いの場を設けるなら今しかない。


急に話の内容が変わって一瞬固まった父様に、笑ってしまう。

確かに普通の五歳児なら、ここまで気が回らない。

でも私は普通の五歳児じゃないから仕方ないじゃないか。

中身は社会の波に揉まれ……いやそんなに揉まれてないかも。



「……そう、だね。今日は無理言って休みにしてもらったから、午前中に教会に行く予定だよ。だから神官衣に着替えてもらおうと思ってたんだけど……セレネは敏い子だね」

「私の扱いに関しても父様に全面的に任せるから、父様の都合がいいように扱ってくれて構わないよ」



そう言うと、絶句したように父様は固まった。

怒りと混乱と全面的に信頼してくれているという事実に、笑えばいいのか怒ればいいのか解らなくなっている。

でも私はどんなことを言われようとも、悪いようには扱わないと信じているので撤回はしない。

父様も私のことを可愛い守るべき娘だと思っているし、私の人権がなくなるようなことは絶対ないから。

父様が怒っているのは私に警戒心が一切ないことにだ。


拾ってくれた恩があろうとも、そう簡単には信用してはいけない……特に希少属性持ちは。

何故ならやろうと思えば、保護者という立場を利用して金を巻き上げることもできるから。


私というか希少属性持ちは基本的に“金の生る木”だ。

治癒属性持ちなら重症の病人や怪我人でも忽ちに治る。

時空属性持ちなら【転移】で商売でもすればいい。

その他の希少属性持ちだって、他に誰も真似できないから需要がなくなることはない。

謂わば希少属性はオンリーワンなんだ。


だから希少属性持ちは無邪気な子供ではいられない。

親ですらも疑って、自らを守ってくれる人を厳選しなければ騙されて終わり。

そして生みの親ですら信用できない世界に産まれながらにいる希少属性持ちは、やはり何らかの精神的な異常が出てくる。

それは父様みたいに本心を出すのを怖がったり、外の世界との繋がりを切って自分の中に閉じ篭ってしまったり、敵と味方しかこの世にはいなくなったり色々と。

……私も表に出てないだけで、何処か異常なのだとは思う。それを自覚する時がいつか来るのだろうか?



「セレネ、信じてくれるのは泣きそうな程嬉しいよ。でも希少属性持ちが簡単にそんなことを言ってはいけないんだ。薄汚い奴らに隙を見せることになるから、絶対にね」

「うん、ちゃんと解ってる。でも父様はそんなことをしないでしょ?」



硬直から返って来た父様が私に忠告する。

険しい顔を作りながらも心配そうに見ている父様に、こちらも真面目な顔をして反論する。

父様だから任せられるのだと言うと、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした。

そうなるのも解らないこともないと思う。

私は捨てられて、人間不信になっていてもしょうがない環境にいた。

そんな中で拾ってくれたからといって、一日しか接してない人間をそう簡単に信じられないはずだ。

本質を見抜ける力がなければ、父様を信じられたかどうか……。

最悪一人でも生きていける力があるから、養子になる件を断っていた可能性が高いかも。



「そりゃやらないけどね。でもそんなにすぐに信用しないこと。いつまでも僕が保護者として守れるか解らないから、自衛することを覚えてくれないかい?」



その言葉に苦笑する。

前世の友人もよく自衛してくれ、危機感を持てと言っていた。

私ほど、危機感を持って自衛している人はいないと思うんだけどな。

だって裏切りそうな人には近づかないし、言葉の裏にはすぐ気づいくし。

そんなことを言えるはずもないので、大人しく言葉には頷いておく。

多分一ヶ月も経てば、私に危機感を持てとか自衛しろとかは諦めて言わなくなる。前世でもそうだったし。



「そんなことよりも父様。私に聞きたいことがあるでしょ?例えばなんで希少属性持ちが捨てられたのか、とか」



私からそういう話題を出したことに酷く驚いている様子の父様に、話を変えることに成功したと内心にやりと笑った。

あのまま危機感だのなんだの話しても、私の生き方は変えられない。

約三十年もの間変わらなかったんだから、筋金入りだよ。



「……それは是非とも聞きたいよ。でもセレネが言いたくなかったら言わなくてもいいんだ。捨てられたことが過去の思い出になってからで構わないよ」



そう言って話を終わらそうとする父様に、首を振って拒否を示す。

父様が黙ったのを確認してから、私は口を開いた。



「生みの親は私の髪色を見るなり、侍女に預けたと聞いている。闇属性ではなければ、我が子ではないと言ってね。二歳までは一人娘だったから、一日に一回【浄化】をかけてくれる侍女が来てご飯もその時にもらっていたんだ。でも黒髪黒目の弟が産まれてから私は用無しになったけど、属性適性が安定する五歳までは部屋の前に残飯だったけど置いてもらえてた。だから生みの親は私の髪色をちゃんと見たこともないだろうし、侍女にしたって私の顔を見ようともしなかった。だから私が治癒属性持ちだと気付かなかったんだ」



テーブルの上に置かれていた、父様の手に力が入るのが見て分かる。

怒りや悲しみで溢れている父様は、ポーカーフェイスが作れなくなったのか俯いた。

でも私は希少属性持ちだったから、無関心だったのは逆に良かったと思ってる。

捨てられる時も魔道具の人形を使って、私を眠らせて猛毒を飲ませてたから、髪色や瞳の色が解るはずもない。

気づかれてたら、捨てずにもっと活用していただろうしね。



「私が捨てられたのは幸運だったよ。あの生みの親に気づかれてたら、もっと酷いことになってた」

「……確かに、そうだね。セレネがそんな奴らに利用されなくて良かったよ」



笑おうとして失敗している父様は、棒読みで笑いながらそう言った。

言っていることは本心だが、それ以上に怒っている。

これであの話には続きがあると言ったら、どうなるんだろう?多分殺気立つんじゃないかな。

続きというのは、猛毒を飲まされた理由でもある。

つまり私という餌に猛毒を仕込んで、捨てられた場所にいた竜に食べさせて毒殺しようとしてた訳だ。

それが生みの親にとって私の唯一の利用価値だった。



「ほら、そんなに手を握り締めちゃったら傷が付いちゃうよ」



行儀が悪いと思ったが、これ以上父様が傷つくのを見たくない。

握り締めている手を両手で包み込んでから、治癒属性の魔力を纏う。

それに気づいたのか俯いていた顔を上げた。無表情の父様の頬を摘んで引っ張る。



「はは、変な顔」



笑っている私に安心したのか、情けない顔で父様は笑った。

悲劇のヒロインを気取る気は全くないし、育児放棄されていただけで暴力を受けた訳ではない。

でも父様が自分のことのように、怒ってくれることは嬉しいと思うんだ。



「……よく頑張ったね、セレネ」

「うん……うん」



父様のその言葉は泣きたくなる程、身に染みてきた。

この五年間ずっと一人で頑張ってきた。

一日に一回しか届かない食事を早々に諦めて、森で魔物を狩って食べたこともあった。

誰も言葉や文字を教えてくれないから、影に潜って屋敷の人たちの会話を盗み聞きしたり、弟が絵本を読んでもらってるのを一緒に見たりしたこともあった。

それに魔法も書庫に勝手に入って独学で学んだし、弱みを握る為に色々な書類を拝借したりもした。

客観的に言うと結構大変に聞こえるけど、そこは影魔法があったから楽にできた。

そう楽に出来すぎて、生みの親を何回“不慮の事故”を起こして暗殺しようとしたことか。


……あれ?なんか全然悲観的になれないのは気のせい?

これじゃあ、親の目がないからって好き勝手に行動する子供みたいじゃないか。まぁ外れてないけどさ。

だって記憶はないとは言っても精神年齢は大人だったんだよ?

庇護対象だったらギュウギュウに縛られて詰まらなかったかも。

そう考えるとあんな最低な親でも私にとっては“都合のいい”親だった。

作者の無駄知識ー♪

ロリコン・ショタコン幼馴染は今後出てくるかも知れないこともない。まぁ出てくるかも?作者の気が変わらなければね!って感じです。というか出てくるだろうなー。作者が誰よりもロリコン(yesロリ、noタッチ)を出したいと思ってるからだ。因みに作者はアバター作ったらゴスロリ風にします。何故なら自分が似合わない服装だからね。

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