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5:プレゼントは嬉しい~貰っても絶対使わない物だとしても~

今回は服回です★

ぶっちゃけ今後、服の名前なんて出てこないから覚えなくて結構ですけどね。作者も覚えてないし(ボソッ)。ま、まぁこういう感じの服を持っていると覚えてくれたら嬉しいです。因みに普通の服を着させる予定は皆無ですが、何か?ゴスロリダイスキデス。

目覚める時の感覚は自らが水泡になったようだと思う。

水底からゆっくりと登っていく。

ゆらゆらと揺蕩いながらも、決して戻ることのない浮遊の時。

やがて水面に浮かんだ泡は弾ける。



「……ぁ」



真っ暗の闇の中で数回瞬きをしながら、慣れない人の体温に硬直していた体の力を抜く。

私を抱き込むように寝ている父様の穏やかな寝息に、段々と昨日のことを思い出す。そう言えば捨てられて拾われたんだ、と。

まだ太陽が姿を現してない時間帯に起きたせいで、心臓の音すら聞こえてきそうな程王都は静寂に包まれていた。

もう一度寝ようと瞼を閉じるが、去っていった眠気は一向に戻ってくる気配はない。

父様を起こさないように抜け出そうにも、腕がガッチリ巻き付いるので無理だ。

少しでも動くと起きそうな程眠りが浅い父様に動くことを諦めて、朝が来るまで考え事でもして時間を潰す。



何か思考できるものと考えると、すぐに出るのは父様に何処まで話したらいいかどうかだった。

信用できるとは解っているが、私の力は“世界征服”が容易くできるくらい強い。

ぶっちゃけ私が行動を起こさなくても、一つの魔法を発動させて、待っていれば勝手にできてしまう。

私は影を支配するのに一切魔力は使わない。そして影魔法の中で、生物の影が私の従順な下僕となる精神系魔法の【操り人形】がある。

【操り人形】で動き出した影はその元となった生物の強さを引き継ぐ。

だからその魔法を維持し世界征服しろと命じとけば、勝手に征服してくれるという訳だ。

まぁここまで話しといてなんだけど、別に世界征服なんて面倒くさいことしたくない。

ただ他の人間はそう言っても、疑って私を排除しに来るだろう。


回避法は一応思いついている。見た目を利用して、影属性の適正が一番高い或いは適性を持っていることを隠す方法だ。

よくある小説のように、どの属性をどの程度の適性があるか解る道具がないからできることでもある。

属性は本人が自己申告しないと、髪や瞳の色でしか判断できない。

私の中で治癒属性の適正が私の中で一番低くても、平均よりは高いだろう。

影属性の適性が人外に両足を踏み込んだ程に高いから、低く見えるだけだ。


ただし適性がない属性に関しては、どんなに才能に溢れていても火付けや飲み水程度しか使えない。

しかも誰もが基本属性の一つは適性を持っているから、私が持っている影・闇・治癒属性のうち闇属性は隠すことはできないだろう。



……って、話が結構逸れた。父様に何処まで話すかだったね。

「敵を騙すなら味方から」とも言うし、父様にも立場があるから何も言わない方がいいと思うんだ。

打ち明けるのはもっと父様の信頼を勝ち取ってからでも遅くない、はず。

まだ父様と会って一日しか経ってない。私は見抜けるから心から信用しているし信頼もしてるが、父様は違う。

守るべき存在から信頼できる存在になるには、一年くらい時間が必要だろう。



それから取り留めのないことを考えては破棄していく。

薄らと太陽の光が窓から差し込んでくる。

この世界の人は太陽が沈むと寝るし登ると起きるので、もう父様を起こしてもいいと考えて拘束から体を抜け出そうと動く。



「ぅ……セレネ?」

「おはよう、父様」



寝起きはいいのか、すぐに焦点があった目に笑いかける。

父様も私に挨拶を返してから、窓を見て起き上がる。

昨日のうちに心との折り合いがついたのか、穏やかな表情で笑いかけてくる。

父様が起き上がった時に私も自由になったので、起き上がってベッドから降りる。

着替えようとしている父様に一言言ってから、顔を洗いに洗面台に向かう。


洗面台は脱衣所にあり、壁一面に鏡が貼り付けてある。

昨日置いてくれたらしい台を運んで乗る。

丁度いい高さで背伸びすることも屈むこともなく、魔道具に魔力を流して顔を洗った。

そして仕上げとばかりに【清浄】を口の中にかけて、顔をタオルで拭く。

台を元の場所に戻して出ようとすると、入れ違いで父様が入ってきたので場所を譲った。

父様はパジャマみたいな格好から、昨日と同じような服に変わっていた。

同じ服なのかな?と思ったのは心の中にしまっておく。



「あ、そうだ。昨日言ってた荷物、届いたから中確認しといてくれる?机の上に置いといたから。一応台とか子供用椅子とかセレネでは運べない物は出しといたけど」

「ありがとう、父様!」



子供用椅子は素直に嬉しい。だってリビングにある椅子は一人で座れないから、毎回父様に抱き抱えてもらわないといけない所だった。

影を使えば乗れるんだけど、影属性の適性が凄く高いことを隠すと決めた日に破るのはどうかと思う。

まぁ破る時は罪悪感なく破るんだけどね。


プレゼントなんて前世も含めると十数年ぶりなので、ワクワクしながらリビングに行く。

ダイニングテーブルがある奥側には、私でも手が届くような高さの机とソファが置かれていた。

昨日にはなかったような気もするが、気にしたら負けだ……金持ちって怖いね。

その机の上には父様が言っていた通り、大きな袋が置いてある。

その袋には紙が貼ってあって、そこには箇条書きに袋の中にある物が書いてある。

袋を床に置いて紙に書いている名前を思い浮かべながら、袋の中に手を入れる。


この袋は収納袋と言って、謂わばゲームのアイテムボックスと同じ機能を持っている。

取り出したい名前を思い浮かべれば取り出せる。

ただし、中に入れた物を忘れると一旦全部出さないといけないので、こうして紙に書いて張り付けないと後悔することになる。


知識では知っていても使ったのは初めてなので、緊張しながら収納袋をまさぐる。

指先に当たった物を取り出すと、それは服だった。

ミスティーナと書いてあったので、紅茶か何かと思ってたよ。

服はフリルが重なっている真ん中が左右に分かれているピンクのドレスの上に、上半身が白いレースが被さっている。

一緒に出てきたネックレスには十字架の薄いピンクの宝石が輝いて、靴はバレリーナが履いているような紐を足首に括りつける構造になっている。



「ド、ドレス?」



五歳児に何を着せようとしてるんだ、父様は。

収納袋に入れて見なかったことにしてから次を出す。

ノーブルローズか……ローズというと薔薇の香水とかかな?誰が使うんだろう。

そしてそれが取り出された時、両手を地面について絶望した。また服が出てきたのだ。


今度は胸元が開いている落ち着いた赤いドレスで、足首当たりまである。

裾はヒラヒラとしていて、腰にはリボンが括りつけてある。

全体的に緩い感じの服で、寝間着として着れそうである。

着れそうってだけで、着たいかと言われると首を横に振るけどね。


口元がヒクつくのを止められない。父様は五歳児に何がしたいんだ。

もしかして貴族ってこんなのを着ているのか?これが貴族界での常識なのか?

……つ、次だ、次。父様に任されたからには最後までやるしかない。終わるまで燃え尽きるなよ、私。



「次はミレーレ?……また服かな」



取り出すと、今度は動きやすそうな服が出てくる。

裾全体にもふもふとした物がついている淡い青のワンピースで、丈は膝上まである。

腰から広がるタイプなので、動きやすそうだ。

一緒に出てきた靴はこれまたもふもふとした膝までのブーツみたいな物で、落ちないように縛る所にはボンボンがついている。


その次はラビリンスラビットと書いてあったので取り出す。

ポンチョみたいなひらひらとした白い服にはフードが付いてある。

一緒に出てきたズボンは茶色いショートパンツ。

靴は膝上まであるブーツでこれも真っ白だ。



「これが、無難かな?」



収納袋に入れずに横に置く。とりあえず着れそうな服があって良かった。

服だと思える名前は後三個なので、気合を入れ直す。

次はゴス=カーミラで、これまた服だと推測する。てかゴスってゴスロリのことかな?気が滅入りそうなのを抑えて取り出す。


白いブラウスに首元には大きな赤いリボンが付いており、腰を縛るコルセットのような物がスカートと一体化している。

スカートは一番上には黒い布をその下に赤い布そのまた下に白いレースを使っており、ふんわりと膨らんでいる。

靴はゴスロリチックな黒に赤いリボンがついている物で、今まで見てきた中では一番履きやすそうである。



「これも、保留で」



また入れずに横に置き、一息つく。

次はフランチェスカか。取り出してみると、紺色の軍服のような服が出てきた。

今までで一番好きなデザインかもしれない。まぁ何故かズボンはまたショートパンツなんだけど……父様の趣味かな?

一瞬ゾッとする想像をした所で忘れる為に最後の服を取り出す。

メサイアフロックという名前らしく、見たことないので服で決まりだろう。

取り出した時、ホッとした。

教会の神官が来ているような服で、全体が白で所々に淡い青が散りばめられている。



「あー」



その神官衣に納得する。

治癒属性の適正が出た子は、貴族でも平民でも教会が後ろ盾になる。

でないと、治癒属性を巡って戦争が起こるからだ。なりそうとかではなく、確実に起こる。


確かに傷や病気を治すという回復系魔法は他の属性でもある。

だが、それは一つの魔法に一人しか治せなく、結構な魔力を取られる。

それが治癒属性なら一つの魔法で全体を一気に治せるし、攻撃系魔法が一切ない代わりに少しの魔力でも発動できる。

だから国は保護という名の監禁をしようと行動する。その時に盾になってくれるのが、教会という唯一の宗教だ。


宗教はそれしかなく、正式な名前がない。

名前がないのは不便なので、利便上教会というのが呼び名となっている。

ギルドと同じように、国に縛られない教会が治癒属性持ちの後ろ盾になることで戦争を防いでいるのだ。

ただし国と国との戦争以外で多数の死傷者が出た時には他国でも駆けつけ、治癒属性の回復系魔法を行使しなければならない。

それが後ろ盾になる条件でもある。

まぁ治癒属性、これは希少属性持ち全てに言えるのだが、本人が国に仕えたいと思うのなら、仕えることは可能だ。

その時は教会からその国が後ろ盾となる。


因みに蛇足だが、時空属性持ちは各国に幾つかの【転移】が付与された魔道具を献上しなければならない。

氷属性持ちは砂漠にある国の王族にしか適正が出ないので、特に問題はない。

影属性も同様で捨てた家の一族しか適性は出ないみたいだ。というか、世間では影属性って何?新しい希少属性?という反応が返ってくる。



とりあえず、神官衣を着ることにして、他に出した服はまた収納袋に入れておく。

父様がどう予定を立てているか解らないが、今日にでも教会に行って顔合わせしなければいけないだろう。

神官衣を着るのは謂わば治癒属性持ちの制服みたいなものだ。と言っても教会が後ろ盾になっている時のみだけど。

紙に書いてあった他の物はジュースや生活用品なので、特に言うことはない。

冷やさないといけない物は冷蔵庫に入れて行く。

近くにあったペンを持って、出した物の名前を消す。

見事に服しか名前が残ってなかった。


収納袋を机にまた置いて、神官衣を持って寝室に向かう。

父様がキッチンに入っていく所をさっき見たからだ。

寝室に入って素早く神官衣を着て、姿見で確認してからリビングに戻る。

いい匂いが漂う空間に、そういえば昨日何も食べてないことを思い出した。

キュルキュルとなるお腹を抑えながら、子供用椅子によじ登る。



「朝飯できたよ」



その言葉と共にお盆を持った父様がキッチンから出てくる。

私の姿を見た父様は驚いた後、似合ってると褒めてくれた。

目の前に出された目玉焼きとベーコンが乗ったトーストにゴクリと喉がなる。

久しぶりに見る、自分で調理してない料理に感動するよりも食欲が勝る。



「ふふ、どうぞ」



微笑ましいものを見る目で見られながら、早速食べる。

父様に服のことを尋ねるのは食べ終わってからだ。

ほら食事中に聞くのはマナーが悪いしね。

作者の無駄知識ー♪

セレネちゃんの力はマジ人外、化け物と呼べる程の強さです。影を支配するのに魔力を使わないということが非常識。まぁ色々と伏線というなの何かを張ってますが、回収はしますよ?回収は。ただし意外な事実とかではないと思う。この小説は深読みしない読み物となっております、はい。

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